明日のために - 鈴鹿サーキットレーシングコース編 その2 | |
サーキットを走る時、それが走り慣れたサーキットであろうと初めてのサーキットであろうと、何を意識して走りますか? ・どうすれば速いラップタイムをたたきだせるか、ですか? ・コースレイアウトや高低差からどこでクルマのバランスを崩しやすいか確認する、ですか? ・とにかく頑張ればなんとかなる、ですか? サーキットを走るとなれば誰しも速く走りたいと考えるものですが、速く走るためのアプローチは様々です。また運転技術に比例する速さも人それぞれですし、安全マージンのとり方も人によって異なります。そう、速さは、全くもって、その人固有のものです。 一方、モータースポーツは世界で最も不公平なスポーツです。それがアマチュアのレースであろうとF1GPであろうと、競争自体が不公平な条件で行われています。お金をかけ現代技術をもってすれば間違いなく速いクルマを手に入れることができます。出費をいとわずサーキット走行を重ねれば、ドライビングポテンシャルが高くない人でもそこそこ走れるようになるでしょう。 ですからスポーツドライビングを含めたモータースポーツに他人と競争する意味はありません。 レーシングドライバーですらクルマの性能以上には走れないのですから、まず優先すべきはクルマの性能を余すところなく発揮させることができる状況を自ら作り出すことです。 他人と競争する前に、自分が精一杯クルマが動きやすい状況を作り出しているかを自身に問いながら走るべきなのです。 サーキットもYRSオーバルも突然1周の長さが変わることなどありません。ラップタイムは1周の平均速度の裏返しですから、速く走るためには速く走れるところはより速く、かつ速度の落ちる可能性のある区間はその通過速度を底上げするしかラップタイムを短縮する術はありません。 直線での加速と最高速はクルマの性能で決まります。純粋なコーナリング速度の限界もクルマによって異なりますし決まっています。果たして1周の間、絶えずクルマの性能を発揮できているかと言えば、それは無理な相談です。ですから、その瞬間瞬間にクルマが性能を発揮しているかを自問しながら、それに向かって飽きることなく努力しているかがその人の速さになります。 速さはあくまでも結果です。クルマをキチンと走らせることができたかどうかの目安に過ぎません。漠然とした速さを追い求めるのは、いささか危険です。 |
しかしながら、モータースポーツは一方で万人に対して公平なスポーツでもあるのです。 速さを競うのはあくまでもクルマであって人間ではないのですから、身体能力が劣る人でもクルマの性能を発揮させる方法さえ身につければクルマを速く走らせることが可能になります。 他の身体能力が『うまさ』の基本になるスポーツでは、一流の選手になるために途方もない努力と練習が必要です。時が移りスポーツのレベルが向上すれば・・・。スポーツを続けている限りライバルを上回る努力がひつようになります。 しかしモータースポーツでの速さは個人的なものなのですから、クルマを動かす術さえ理解すれば、無意識にサーキットを速い速度で1周することができれば、その人は昂揚感を感じることができるはずです。 そして、一度覚えたクルマを動かすコツは生涯忘れないでしょうし、クルマを乗り換えても通用します。 さて、日本のモータースポーツの聖地である鈴鹿サーキットを走ります。あなたは何を意識して走りますか? 最後にこれだけは覚えておいて下さい。 サーキットを走るとなると緊張する方がいます。でもそれは逆です。緊張すれば筋肉は固まり視野が狭くなり、クルマの動きを知り、クルマに性能を発揮しやすい状況を作るという大前提から離れていきます。 集中してと言うと、頑張ってしまう人がいます。これも違います。集中するということは雑念を捨てて(ヨコシマなことを考えるのをやめて)無心になることです。リラックスすれば身体が自然に動くはずです。頑張ってしまう人は、自分に自信がないからです。 サーキットでその時の実力以上の速さで走った人はいません。 あなたの実力はクルマがよくわかっています。 速く走るために何かをトライする時は、クルマとよく相談して、何かあった時の対応方法を前もって用意してから少しずつ、です。 みなさんが鈴鹿サーキット国際レーシングコースで行うYRSドライビングスクールを大いに楽しまれることを願っています。 |