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理屈が分からなければ想像力は働かない

タイヤのグリップを有効に使う。言葉を変えればグリップの限界を超えないで速く走るためには摩擦円の概念が有効だ。とにかくクルマの動きはタイヤのグリップ抜きには語れないのだから。

クルマが直進状態かイーブンスロットルでのコーナリングをしている以外は常にタイヤに複雑な応力が働いている。応力に応じてタイヤはグリップを発生させるのだから、グリップの総和を見極めるためにはスロットル(あるいはブレーキ)とステアリングの分力として考えるとわかりやすい。

下の左の図は右コーナーの立ち上がり。クルマは性能の限界で加速を始めている。ワイン色の矢印がクルマの慣性の方向だとすれば、今タイヤには直進方向と旋回方向に等しいグリップが生じている。すなわち加速にもコーナリングにもタイヤ本来のグリップの29%ほどしか使えないことを示している。

もし君が欲にかられてそれ以上の加速やコーナリングをタイヤに期待して操作すれば、タイヤのグリップの限界を超えクルマは間違いなくバランスを崩すというわけだ。

さて真円の摩擦円はわかりやすい。タイヤのグリップを考える時には真円でかまわない。しかし厳密にいうとタイヤの特性上摩擦円は真円ではない。上の右の図のように卵型だ。しかも下にいくほどすぼまっている。図から急ブレーキをかければかけるほどコーナリングに振れるグリップが少なくなるのがわかる。ブレーキロックしてしまえばステアリングが応答しなくなる経験をした人もいるはずだ。

この卵型の特性がサーキットを速く走る時に罠をかける。それは加速の時だ。かなりのグリップをコーナリングに使っていてもそれほど加速に使えるグリップが損なわれないという事実だ。だから調子にのってスロットルを開ける傾向が強い。しかし、「ひょっとするとタイヤのグリップの総和を超えてしまってタイヤが滑り出してしまっているかも知れない」ということに気付く人はすくない。

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