ウイロースプリングスレースウエイ ( 第4話 )
アメリカのロードコースには日本にはないような勾配が見られる。
と言っても、日本で走ったことがあるのは筑波サーキット、富士スピードウエイ、オートポリス、鈴鹿サーキット、中山サーキット、谷田部だけなので、上り下りがあるという菅生、西仙台についてはわからない。
が、勾配がコーナーについていた場合。これはもう日本では全く見られないはずだ。なにしろ、アメリカのコースはFIAやACNの認可を取るつもりがないのだから、コーナー自体が「図に描いたような」曲線ではない。突然曲率が変わり、それがまた変わることなどよくある話。
4コーナーを立ち上がるとクルマの荷重は前に移動する。右にステアしながら加速するのだが、簡単には前荷重が抜けない。生半可なスロットルオンでは追いつかないほど。荷重が前にあるということはリアが軽いわけで、加速に躊躇しているとますます荷重が前に移動し、いとも簡単にテールが出る。
右回りの下りを3速全開で駆け下りれば、右コーナーのGが消えないうちに5コーナーのアプローチ。5コーナーは左周りの短いコーナーだが、全くカントがついていない。走りながら見ると「逆バンク」がついているようだ。
だから。延々と続く最終コーナーまでの初速になる5コーナーは大切ではあるが難しい。
右コーナーを早めに離れれば5コーナーに対して直線的にブレーキングできるが、それでは5コーナーのアウトからは入れない。
右コーナーをなめ続け、最後の最後でブレーキングすれば5コーナーに対してアウトから進入できるが、かなりのGを受けたままのフルブレーキングを強いられる。
とにかく、アメリカのコースを走ると「速く走るためにはトレードオフが必要」なことがよくわかる。
#日本のコーナーは極めて理路整然とした曲率ばかかりだから、それほど細かい調整は必要ない。しかし、結果としてこの「単純さ」が「オンオフ的な走り」が蔓延する遠因になっている可能性は捨て切れない。
で、どのラインを通れば5コーナーの立ち上がりが速いか、ラインと速さの因果関係を数値化したわけではないからわからない。
5コーナーの要点は、ただただできるだけ早く左のGを消すこととできるだけ早いタイミングでスロットルを開けはじめること。この2点だけ。ラインで悩むより、どこを走ってもこの2点を達成できるよう瞬間的に対応するほうが気が楽だ。もちろん、通加速度が低下してしまっては元も子もないが。
5コーナーにアンダースピードで入っては話しにならないが、オーバースピードで入ってはもっと悲惨。なにしろ「逆バンク」。ターンインの地点は下っているから意識してトレールブレーキングを使わなくても前荷重。アンダーステアが顔を見せることはない。まずフロントが逃げることはない。
だからと言って、いい気になってオーバースピードで進入すると、クリッピングポイントでもまだわずかに下りの5コーナー。4輪とも「ドバーッ」と外に流れ出す。レースになるとコースアウトが多いのもこのコーナー。
その上、一度スライドを始めたタイヤのグリップは車速が落ちるまで回復しない。結局ステアリングで修正できたとしても、その時点で失速してしまっているのはあきらかだ。
まぁ無事に5コーナーを抜けたとしよう。3速にアップ。アウトまではらまず3分の2程度に抑えて立ち上がれば、次の6コーナーのインにうまく入れる。
そのゆるい右回りの6コーナー。3速全開で抜けようとするとクリッピングポイントで、リミテッドスリップデフの入った後輪が空転する! ンッ!?♪
第5話に続く
|