Home > YRS Media-Info >

≡≡ Yui Racing School presents ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
 
           Go − Circuit No.207 (07/18/05発行)
 
---------------------------------------------------- Taste of USA ----
●クルマを走らせるのは楽しい。速く走らせるのはもっと楽しい。●しかしク
ルマ安全に速く走らせることが難しいのも事実。走らせ方を理解していないと
楽しくもないし危険でさえある。●クルマをもっともっと楽しむために「クル
マさんとの正しいお付き合いの仕方」を学びませんか。●ユイレーシングスク
ールからの提案です。●公道では安全運転を。サーキットではそれなりに。
======================================================================
| 1)YRSオーバルレース第2戦終了
| 2) 参加申し込み受付中
| 3)観戦の勧め  YRSエンデューロ&スプリント第5戦
| 4)クルマを動かすということ

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
| 1)YRSオーバルレース第2戦終了
 
  「大丈夫だ。雨は降らないな。降ったらせっかくのオーバルレースが中止に
なる可能性があるからな。」今にも降り出しそうな雲行きを仰ぎながらも、風
が乾いているのを感じた雄太はひとりつぶやく。
  パドックを見渡せば同じロードスタークラスで走る仲間がトランクから荷物
をおろしている。声をかける前にとりあえず自分の出走準備を済ませことにす
る。「もっとサーキット来る時は荷物を少なくしなきゃなぁ。」と独り言を言
いながら、それでも慣れた手つきで積んできた折り畳み椅子、空気入れ、エア
ゲージ、ジャッキ、スペアタイヤとワックスやウエスなどを入れてある箱を下
ろす。「さぁてと。ゼッケンかな。」通年カーナンバーを申請した雄太は、あ
れこれ迷ったあげく丸文字体で印刷した124番をボンネットと運転席側のド
アに貼り付ける。最後にタイヤをさわり、しっかりと冷めているのを確認して
空気圧を調整する。「イン側は冷間で2.2。アウト側は発熱を考えて2.0。
予選は短いから温まらないけど、すぐにヒートレースが始まると調整する時間
がなくなるからこれでいこう。」
  前日に洗車しワックスをかけた愛車から離れ受付けに向かう。午前中のオ
ーバルスクールが行われている。いつものように、トムさんはマイク片手に参
加者に叫びつづけている。『ステアリングを切り始める位置が奥過ぎる。もっ
と手前から。』『ステアリングを切り出す時に過重が前に残りすぎ。』
  しばらく参加者へのアドバイスを聞いていると、すっかりYRSの顔になっ
た大和田さんと目が合う。『こんにちは。誓約書持ってきていたら出して下さ
い。』前もって誓約書を印刷する手間がかかるが、書き込んでおきさえすれば
受付けで時間をとられずに済むのがいい。「はいこれ。よろしくお願いします。
今日は何台ですか?」『追加があったので全部で10台です。』
  やることを全て終え、数人で話し込んでいるロードスター仲間の輪に加わる。
「おてやわらかに。」
『んなこと言ってまたまた。』
『今日はなんのタイヤ?』
「前のと同じです。グリップを上げるよりもこの前トムさんが言っていたキャ
スターアクションに頼らないステアリングの戻しを練習したくて。しばらくは
このままいきます。」
『天気持つといいね。』
『今日は来てないけど、○○さ
ん車高調オーバーホールしたらしいよ。』
「じゃぁもっと速くなるんじゃない
ですか。」
  同じ車に乗っている仲間との会話は絶えない。何を話していても根底にはロ
ードスターという共通項がある。話題がそこから大きく外れることはないし話
題がつきることもない。いぜんとして周回を続けているオーバルスクールの参
加者の車から、時折ギャッというタイヤの悲鳴が聞こえる。そこに居合わせた
全員がほぼ同時に顔を見合わせながら心のなかで苦笑する。「昔はみんなああ
だったんだよな」『昔はひどかったもんな』そんな会話が聞こえてきそうだ。
  突然のアナウンス。『オーバルレースのドラミやりま〜す。』予定より早い。
足早にYRSスタッフの周りに近づくと点呼をとっている。『何人が来ていま
せんが、予定していたオーバルレースを前倒しでやります。午後遅く雨の可能
性があるのでオーバルスクールの最後のセッションを後回しにしてオーバルレ
ースをファイナルまで消化するためです。今回は2クラスとも参加10台なの
で各ヒートは5台ずつ。ヒートの週回数を増やしセミファイナルは行わずファ
イナルとなります。』『ヒートレースは8周、10周、12周でファイナルが
18周です。今日も事故のないよう十分注意して走行して下さい。それでは楽
しいレースを。』
  「ヒートの周回数が変わるのか。リズムを崩しそうだな。まぁ、とにかく予
選でいいとこにつけるのが先だ。」自分に確認するようにつぶやく。オープン
クラスの予選と全ヒートレースが終わってからロードスタークラスの予選。雄
太はしばし観客としてオープンクラスの走りを見ることに決める。

  「トムさんがオーバルレースを始めますって言ったのが去年の初め。最初は
こんなところで本当にレースができるのかと思ったっけなぁ。いくらコース幅
が6車線あるったって並走して周回するなんて無理だと思ったもんなぁ。まぁ
結果的にはやってみて良かったんだけど。横にいる車を意識することに慣れる
ことができたし、おかげでコース1000のヘアピンやインフィールドの左に
並んで入っていっても不安がなくなったもんなぁ。」

  たった2周計測の予選が始まる。オープンクラスはいろいろな車が走る。速
いのはターボ4WDだが絶対的に有利ではない。今回はオートマチックのステ
ーションワゴンも走る。やはり決めてはコーナリングスピードをいかに高く保
つかだ。
  パドックからスタートして4分の3周するとグリーンフラッグが振られる。
次のターン4で計測開始だ。それから2周。それだけ。
  インプレッサに乗っている△△さんがスタートする。ノーズをもたげながら
グリーンフラッグをかいくぐりわずかに速度を落としたかのように見えた次の
瞬間。その高い速度のままコーナリングが始まる。それでもフロントは逃げな
い。グッと沈んだ右フロントの落ち込みは舵角が増えてもそれ以上大きくはな
らない。車が円運動に移る。「きれいだな。」リアがしっかりロールしている
のが歪んだ右後タイヤのサイドウォールから見て取れる。「四駆をあそこまで
うまく曲げるのだから△△さんはうまいよなぁ。」外側2輪から定常的なスキー
ル音を発しながら高い速度でコーナーを抜けるインプレッサ。ストレートに踊
り出るやいなやボハーッというターボ独特の音をガードレールに響かせながら
サイドかま首をもたげる。大和田さんがパソコンの画面をにらんでいる。ふた
たび眼前をスキール音が通過し、大和田さんがペンを走らす。画面に表示され
た千分の一秒までのタイムを控える。14秒002。60mのストレートを駆
け下ったインプレッサは同じように速度を落とすこともなく向こうのターンを
回っている。ボハーッ。パッスン。チェッカーが振られている。最後のターン。
リアが蓄えられたエネルギーに負けそうになるのか身踊りするようにうごめく。
ギリギリのコントロール。光電管の間をスキールが横切る。タイムは。思わず
パソコンの画面を覗き込む。そこには13秒998の表示が。「う〜んっ。」
肩の力が抜ける。人ごとなのにこわばって他人の走りを見つめていた自分に気
づく。

  「そう。これだよ。これ。」「絶対的な速さじゃない。そのコースをどれだ
け速く走れるかが大事なんだ。どんな状態になっても車を制御できたら・・・。」
頭の中で取り留めのないことを考えている自分がいる。今しがた目にした速さ
を理論的に捉えたいのがが捉えられない。的があたっているようで外れている
ような気もする。すでにオープンクラスのヒートレースが始まっているのに頭
の中はまだ落ち着かない。いつものことだ。秩序があるようで混沌とした意識
があって、頭のどこかで《お前はどう走るんだよ》と問い掛けているのに答え
を出せないのもいつものことだ。

  『ロードスタークラスの方。用意して下さい。予選の出走順は問いません』
  答えが出ないままにシートをスライドさせドライビングポジションを合わせ
る。シートベルトをしステアリングホイールに手を伸ばす。いつの間にか呼吸
が浅くなっているのに気づく。「またか。」自然とでるため息。ついでに下っ
腹に力をいれて大きく息を吸い込みゆっくりと吐く。何度も繰り返す。ほんの
少しずつだが自分の身体が自分のものでないように思えてくる。なぜか眠くな
るような感覚。「来た。これだ。もっと来い。」身体中の力みが順番に消えて
いく。腹式呼吸を繰り返す。時間をかけて息を吐き出す。頭の中はほぼ白紙。

  ターン2を立ち上がり60m先のターン3を見やる。視界の右隅に白と黒の
市松模様の旗が振られているのを感じながら床も抜けんとばかりに右足に力を
こめる。ガードレールの向こうでこちらを向いているたくさんの顔が見える気
がする。パドックの右端に停まっている車は白いセダンのような気がする。コ
ーナーの始まりを示す背の高いパイロンが近づいているはずなのだが視界の中
で正確に捉えることができない。自分が何をしているのか明確な意識は、ない。
  右足のつま先をあるところまで大胆に戻し、そしてそこにしか意識が必要で
ないくらいに慎重に、スルッとスロットルペダルから離す。いつも通りゆっく
りとブレーキペダルにつま先を移し、足の裏でペダルを探る。クンッ。可能な
限りわずかな力でペダルをはたく。間をおいてそっと左手を引く。スッ。「い
いぞ。リアが動いた!」路面からの重さを感じながらゆっくりとステアリング
ホイールを引き続ける。ステアリングホイールがわずかだが瞬間的に軽くなる
ことでフロントが外に逃げるのがわかる。ほんの一瞬だけ引く手から力を抜く。
フロントに重さが戻る。「大丈夫。いける。」不安はない。リアの滑りがほん
のわずかフロントのそれを上回りロードスターの長いノーズが目線の先を忠実
に追いかける。ゆっくりとスロットルに戻したつま先に神経を集中させる。ノ
ースの動きが直線的にならないところまでスロットルペダルを踏み込む。バケ
ットシートに包まれた腰に強烈な横Gが襲いかかる。

                      * * 以下次号に続く * *

※この文章はフィクションです。

・2005年YRSオーバルレース第2戦結果
http://www.avoc.com/4circuit/4result_race/2005/20050709-yo-results.shtml
・2005年YRSオーバルレースシリーズポイントスタンディング
http://www.avoc.com/4circuit/4result_race/2005/2005-yo-point-standings.shtml

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
| 2)参加申し込み受付中

     〓〓〓〓  以下のプログラムへの参加申し込みを受付中です 〓〓〓〓 
----------------------------------------------------------------------
|            ☆ YRS卒業生の参加をお待ちしています ☆

■ 7月30日(土)YRSエンデューロ、スプリント第5戦筑波
  今年最後の筑波サーキットコース1000でのエンデューロ&スプリントで
す。どちらのレースもYRS卒業生を対象にドライビングスクールの一環とし
て開催しますから安全に対して共通の意識で臨むことができます。一度でもY
RSのいずれかのスクールを受講された方は、競争という環境で走ってみて下
さい。ご自分の運転に対する意識が明確になります。また、今の速さに満足し
ていない方、次のステップに進みたい方の参加をお待ちしています。

・YRSエンデューロシリーズ規則書
http://www.avoc.com/2school/2yrs/yte_guide.htm
・YRSスプリントシリーズ規則書
http://www.avoc.com/2school/2yrs/yts_guide.htm
・YRS第5戦エントリリスト
http://www.avoc.com/2school/2yrs/yrs_entry.htm
・YRS年間カーナンバー
http://www.avoc.com/2school/2yrs/carnumber.htm

----------------------------------------------------------------------
|                 ★ どなたでも参加できます ★

■ 8月2日(火)YRSオーバルスクール浅間台
  今年3回目のYRSオーバルスクール浅間台です。YRSが日本に持ち込ん
だオーバルコーストレーニング。その効果はオーバルスクール卒業生が多方面
で活躍していることでも証明されています。どなたでも参加できますのでご自
分の走り方を分析してみたい方はぜひ参加して下さい。コーナリングの手続き
がわからない方も一日でやるべきことが理解できます。
  受講者に好評だったイーブンスロットルでのコーナリングからカリキュラム
は始まります。サーキットを走ったことのない方、サーキットを走る予定のな
い方にも有効なクルマを正確に操るための練習です。

・YRSオーバルスクール浅間台開催案内
http://www.avoc.com/2school/2yos/yosa_guide.htm
・YRSオーバル浅間台ラップタイム一覧参考
http://www.avoc.com/4circuit/4circuit_record/oval_yosa/frame_yosa.htm

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
| 3)観戦の勧め  YRSエンデューロ&スプリント第5戦

  7月30日(土)。筑波サーキットコース1000でYRSエンデューロ&
スプリント第5戦が行われます。2001年から始めた卒業生のためのスク
ールレースですが、手軽に参加できるグラスルーツモータースポーツとしては
かなりのレベルに達することが出来ました。
  そのレースを多くの方に見ていただこうと観戦される方への特典を用意しま
した。観戦を希望される方は次の規約をお読みの上で当日来場して下さい。

特典:申し込まれた方は、スプリントレース終了後にYRSスタッフあるいは
エンデューロ、スプリント参加者の車両に搭乗しコース1000をセミレーシ
ングスピードで体験することができます。

申込方法:後日掲載するスケジュールに従って当日受付けで申し込んで下さい。
事前の申し込みは必要ではありません。申込時に誓約書に署名をしていただき
ます。未成年者の場合は保護者の同伴が必要となります。観戦希望者はご自身
のクルマを必ずパドック中央の柵の南側に停めてから受付けにおいで下さい。

抽選:受付け時に数字の入った札をお渡しします。受付け終了後に抽選を行い
計20名の方に体験走行をしていただきます。もちろん料金は無料です。

その他:ヘルメットはYRSが用意します。体験走行を希望される方は長袖長
ズボンを用意してきて下さい。それ以外の服装ではコース1000で走行する
ことができません。

  みなさまのお越しをお待ちしています。

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
| 4)クルマを動かすということ

  クルマの運転を楽しみ続けるというのは、白い円を鉛筆で黒く塗りつぶして
いくこと作業に似ている。
  白い円がある。明度10の一点のかげりもない白だ。この円全体を明度1の
黒に塗りつぶすことが運転を楽しむことそのものだとする。初めてクルマを動
かした時はまさに真っ白な円。それを鉛筆を使って塗りつぶしていく。実に遠
大な作業だ。

  円の中には運転を通じて実に様々なものが蓄えられていく。
  初めてステアリングホイールを握った日。それこそ不安とクラッチのつなぎ
方に集中した神経にまいってしまった自分で円の大半が占められていたはずだ。
少しずつ経験を積むことによりクルマを蛇行させないで直進させるコツが加わ
り、同乗者に不快な感じを与えないスムースな操作が円の中に入る。やがて町
中の速度では破綻を来たさずに走れるようになり、高速道路を使って短時間で
の移動が可能になる。全て円の中に蓄えられ始めた多くの要素が有機的に機能
して達成することができる。
  最初は不安とクルマを動かすための操作でいっぱいいっぱいだった円に新た
な要素が加わる。人間の感情だ。見栄。欲。願望に優越感。それでも交通の流
れという社会に守られて感情が剥き出しになって危険を招くことは多くはない。
円の中に感情が育成されるのと並行して理性も発達するからだ。安全意識。遵
法意識。他人への思いやり、謙虚さ。ある曲面では感情が理性に勝ってしまう
場面があっても、蓄積された操作に対する自信が抑止力になって円そのものを
ぶち壊すことを避けることができる。クルマを技術的に理解する力が備われば、
道具であるクルマをより効率的に使うことができる。少し円も大きくなる。
  ぎこちなかった操作が熟成され、感情のバランスを取ってくれる社会性が発
達し、クルマそのものへの理解力が深まり円は円として丸く存在し続ける。同
時にその人の運転はますますその人のものになっていく。

  地上を移動する乗り物として唯一自由に動き回ることのできるクルマ。運転
に費やされる、あるいは運転のことを考える時間の増加とともに円は大きくな
り続ける。が、誰もが同じ大きさの円を持っているわけではない。
  移動の快適さから見れば、高級セダンを所有することのできる人の円は軽ト
ラックに乗っている人のそれより大きい。速度を物差しにして見れば、ロード
スターに乗っている人より乗る機会が少なくともフェラーリを手に入れること
のできる人の円のほうが間違いなく大きい。そうであるには違いないが、不満
があるからといって円をやり取りすることはできない。円はあくまでもその人
固有のものだ。そしてその人自身が自分の円を明度10の白から薄い灰色へ、
そしてより黒に近い灰色へと塗りつぶしていかなければならない。快適さ、速
さ、自信、上手さ、見栄、軽率、不安。諸々のことを含んだ上で、運転のあり
方が個人の資質に帰属するゆえんだ。それゆえに、クルマ社会には数多くの異
なる大きさの円が存在する。それが正常な状態だ。

  意識するしないに関わらず、誰もが自分の円を鉛筆で塗りつぶす作業を続け
る。時に自分の円が大きくなり、逆に小さくなることもあるだろう。しかし人
は運転を通じて円を塗りつぶしていく。しかし、塗りつぶす作業には大きく分
けて二つの方法がある。
  ひとつは円全体を少しずつ少しずつ明度の低い灰色に塗っていく方法。もひ
とつはある要素が含まれる扇形の部分だけを濃い灰色に塗ってしまう方法。一
般に後者のほうが受け入れやすい。なぜならばクルマに価値を見出す時に最も
簡単なのが嗜好に訴えることだからだ。誰しも好きなことに苦労はいとはない。
そして円が破綻しない限りはそれも間違いではない。人それぞれだ。

  時間をかけて円全体をむらなく塗りつぶしていく。確かに時間はかかる。気
の遠くなるような話かもしれない。しかも、本人が選んだのであればまだしも、
そうせざるを得ない状況でコツコツ塗りつぶしていくのには大きな忍耐がいる。
が、ある時人と比べて自分の円が小さく、かつ白に近い灰色だったとしても悲
観することはない。それが間違いなくその人の円だからだ。自分の考えで、自
分の出来る範囲で、なによりも快適に塗り続けていける方法なのだから。
  逆に、勢いにまかせて他の部分はそのままにして【速さ】や【レースで勝つ
】という360度ぐるりと見渡せば取るに足りない角度の扇形だけを一挙に明
度3の濃い灰色に塗り上げることも物理的には可能だろう。しかし円を黒く塗
りつぶす作業が運転を楽しむことであるならば、いずれは塗り残した部分を塗
らなくてはならない。塗り残した部分にある大切なことに気づかず運転そのも
のを放棄してしまう例だってないわけではない。円をもってして運転の基本形
とするならば扇形だけではバランスがとれていないことになる。
  もちろんボクが選んだのは少しずつでいいから全体をまんべんなく塗りつぶ
していく方法だ。円の大きさは知らない。他人のそれと比較しても意味のない
ことだ。そうせざるを得ない状況があったのは事実だが、自分にとって大切な
のは円を円として保持していく努力にあると昔から決めている。だから人の円
の大きさは気にならない。だから、ひとつの例をあげるのならば、サーキット
を走ればまだまだ速くなる。しかもスピンやコースアウトなどの破綻を避けて
の話だ。だからクルマで事故を起こしては絶対にだめだと決めている。事故を
起こさない方法があるのを知っているからだ。

  40年前。初めてステアリングホイールを握った日。クルマの運転に自分の
能力が確実に拡大されるのを感じた。その日。運転が上手くなりたいと強烈に
思った。どうすれば運転が上手くなる。考え抜いた結論が、クルマがバランス
を崩すのをいやがるように、自分自身もバランス崩すことなく運転をし続ける
ことだった。そのために円を地道に塗りつぶしていくことを選んだ。
  ユイレーシングスクールは速さなんてどうでもいいと思っているわけではな
い。クルマの改造を頭から否定しているのでもない。受講してくれる人の円の
大きさよりも色の濃さ、塗られ方に目が向く。そして参加者それぞれの円が円
であり続けられるように、ただそのお手伝いをするためにユイレーシングスク
ールは存在する。

  黒に塗りつぶすことが命題であって、仮に円の中を全て明度1の黒で塗りつ
ぶせたとする。明度の最も低い、真っ黒だ。塗りつぶしの作業はそこで終わる。
しかし、そこに到達することが困難なのはわかりきったことであるし、さらに、
世の中には理想の黒という明度0の黒が存在する環境もある。つまりはその気
であってもかけねなしの真っ黒に塗りつぶすことは不可能なのだ。
  だからクルマの運転の楽しみを結果に求めるのには無理があるということだ。
まんべんにでもいい。扇形でもいい。時間がかかってもいい。人と比較するの
も無意味だ。とにかく塗り続けることだ。運転に飽きなければクルマの運転は
もっと楽しくなる。クルマへの興味が薄れたら円全体を眺めまわせばいい。速
さに行き詰まったら塗りこむ場所を替えてみるのも手だ。運転を楽しむことに
限りがあるわけではない。

         ユイレーシングスクール チーフインストラクター    トム ヨシダ
  
                      * * この項終わり * *

********************************************************** 奥付け ****
  □ メールマガジン " Go − Circuits " 
  □ 有限会社ユイレーシングスクール発行
  □ 編集/ 文責:トム ヨシダ
  □ オリジナルサイト:http://www.avoc.com/
  □ Copyright Yui Racing School Co.,Ltd.
  □ Copyright 1986-2005 AVOC CORPORATION
        本メールマガジン、オリジナルサイトの全部、または一部を複製
        もしくは引用されたい方は、事前に発行人までご連絡ください。
  
 宛先:発行人  publisher:mail@avoc.com
----------------------------------------------------------------------
下記のメールマガジン配信サービスをご利用の方はそれぞれのサイトで購読中
止・配信先変更の手続きを行って下さい。(YRSから直接購読されていない
場合の手続きはできませんのでご了承下さい。)
  ◇ まぐまぐ: http://mag2.com
  ◇ メルマ:http://www.melma.com/
  ◇ Eマガジン:http://www.emaga.com/
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡ Presented by Yui Racing School≡