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≡≡ Yui Racing School presents ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
 
           Go − Circuit No.212 (12/7/05発行)
 
---------------------------------------------------- Taste of USA ----
●クルマを走らせるのは楽しい。速く走らせるのはもっと楽しい。●しかしク
ルマを安全に速く走らせることが難しいのも事実。走らせ方を理解していない
と楽しくもないし危険でさえある。●クルマをもっともっと楽しむために「ク
ルマさんとの正しいお付き合いの仕方」を学びませんか。●ユイレーシングス
クールからの提案です。●公道では安全運転を。サーキットではそれなりに。
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| 1)YRSオーバルレース最終戦				 トム ヨシダ
| 2) 参加申し込み受付中
| 3)YRSからのお知らせ  YRSメダル日付プレートについて
| 4)グラスルーツモータースポーツ                        トム ヨシダ

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| 1)YRSオーバルレース最終戦				 トム ヨシダ
  YRSオーバルレースも2年目。全5戦で争われた今年の最終戦が11月2
6日に行われ、オープンクラス、ロードスタークラスともチャンピオンが決定
した。

  オープンクラスは14台が参加。予選では初参加の和久井ポルシェが14秒
480で1位。以下予選順に3グループに分けられた参加者は8周のヒート1
を予選順、9周のヒート2をインバート、10周のヒート3をヒート1のフィ
ニッシュ順で争った。ヒート1の1位はそれぞれ和久井ポルシェ、緑川インプ
レッサ、新妻RX−7.ヒート2の1位は新妻RX−7、久保インテグラ、谷
S200.ヒート3の1位は和久井ポルシェ、緑川インプレッサ、新妻RX−
7が占めた。ヒート3の結果を元にファイナルヒート出走組みとコンソレーシ
ョンレース出走組みに分けられ、それぞれが20周で争う。ファイナルヒート
を制したのは和久井ポルシェ。コンソレーションレースを制したのは谷S20
00だった。
  第4戦まで全戦に参加している綱島S2000と黒滝エリーゼがチャンピオ
ンを争っていたが今回は綱島S2000が不参加。結局、手堅く走りファイナ
ルヒートで7位に入った黒滝エリーゼが2005年オープンクラスチャンピオ
ンに輝いた。

  ロードスタークラスは11台が出走。予選はオーバルレース初参加の越後選
手が14秒652で1位。以下予選順に2グループに分けられ3回のヒートレ
ースを争う。1位でフィニッシュしたのはヒート1が越後選手と清水選手、ヒ
ート2が福永選手と松本選手、ヒート3が高野選手と清水選手だった。ヒート
3のフィニッシュ順に全参加者が20周のファイナルヒートを争った結果、僅
差で高野選手がYRSオーバルレース初優勝。以下越後選手、下平選手の順だ
った。
  延べ60名が参加した今年のロードスタークラス。全戦に参加したのは松本
選手、深澤選手、上原選手、鈴木選手だったが、1位3回、2位1回、11位
1回でフィニッシュした松本選手が2005年ロードスタークラスチャンピオ
ンを獲得した。

  尚、来年2月18日(土)に行われる2006年YRSオーバルレース第1
戦では、ロードスタークラス2004年チャンピオンの小原選手と2005年
チャンピオンの松本選手のランオフが行われる。

・2005YRSオーバルレース最終ポイントスタンディングス
http://www.avoc.com/4circuit/4result_race/2005/2005-yo-point-standings.shtml
・2005YRSオーバルレース最終戦結果
http://www.avoc.com/4circuit/4result_race/2005/20051126-yo-results.shtml

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| 2)参加申し込み受付中

     〓〓〓〓  以下のプログラムへの参加申し込みを受付中です 〓〓〓〓
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|                     ★ どなたでも参加できます ★

■ 12月14日(水)YRSドライビングレッスンFSW
  YRSオーバルスクールを受講された方がクルマの挙動がよくわかるように
なったと言います。実際オーバルコースで反復練習するうちに理想的な操作と
実際の操作のギャップが確実に狭まっていきます。YRSドライビングレッス
ンでは午前中にブレーキングによる過重移動、午後にオーバルコースを使った
トランジッションの練習をすることでクルマの運転に必要な基本操作を一日で
理解できるカリキュラムになっています。
  免許を取られたばかりの方の参加も大歓迎です。「クルマってこんなに安定
して動くんだ!」と驚きたい方はぜひ参加して下さい。

・YRSドライビングレッスンFSW開催案内
http://www.avoc.com/2school/2ydw/ydwf_guide.htm

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|             ★ YRS卒業生で登録済みの方が参加できます ★

■ 12月16日(金)YRS筑波ドライビングスクール  コース2000
  少しばかり高速のコーナーのある筑波サーキットコース2000でドライビ
ングスクールを開校します。今回はコース2000を初めて走る方にも事前に
イメージができるように、座学でプロジェクターを使ったビデオ上映を行う他、
コーナー毎の注意点を具体的にわかり易く説明します。
  YRSのドライビングスクールやエンジンドライビングレッスンでコース1
000やFSWを走ったことのある方、オーバルスクールでトランジッション
の重要性を体験された方、4速に入るコースを体験してみませんか?参加する
にはYRS登録(無料)です。

・YRS筑波サーキット2Kドライビングスクール開催案内
http://www.avoc.com/2school/2tds/tds2k_guide.htm

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| 3)YRSからのお知らせ  YRSメダル日付プレートについて

  不手際により2005年にYRSコンペティッションでYRSオリジナルメ
ダルを授与された方の中で、メダルの裏に開催日のプレートを貼らないままお
渡ししているケースがあります。遅くなりましたが準備ができましたのでお心
当たりの方はメダルの裏面を確認の上メールで連絡をお願いします。該当する
コンペティッションは以下のとおりです。

・1月22日		YRSスプリント
・7月30日		YRSスプリント
・9月3日		YRSオーバルレース
・10月1日		YRSスプリント
・10月22日	YRSオーバルレース

・プレート申請先
mail@avoc.com
※郵便番号、住所、氏名、レース名、開催日をお書きの上で申請して下さい。

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| 4)グラスルーツモータースポーツ                  トム ヨシダ

◎  権利の行使と義務の履行。そして誇りと。

  SCCAのレースで念願のレース出場を果たして2年。その頃になるとパド
ックにいても自分が日本人だという意識は全く無くなっていた。ドライバーも
オフィシャルも昔からの知り合いのように「ハイ、トム!」とか「ワッツゴイ
ンオン?」と声をかけてくれた。
  いささかずうずうしいアメリカ人は、秋から春はおむすび、夏は冷麦が定番
だった奥さん特性の昼食をあさりにきた。外国人は海苔が苦手だなんて聞いた
ことがあったが、そんな素振りは見せずに梅干いりのおむすびをほうばっては
顔をしかめながら「グー!」なんてサムアップ。ひとしきり冷麦を食べたあと
に付け汁を全部飲み干し「グー!」。いつごろからか、強奪される分を見越し
て奥さんが量を増やしてくれた。
  ピットクルーを一人でこなす奥さんは同類の奥さん方と仲良しになり、黙々
とレースの準備をするボクに比べて英語力が上がったように思えたものだ。

  スコールがきてコースが水浸しになったレース。レインタイヤを持っている
者は履き替え、持ってないものはタイヤサービスで調達していた。ひとりタイ
ヤサービスのトレーラーに積んであったグルービングアイアンを借りてスリッ
クに溝を掘った。レインタイヤを用意する費用がなかっただけで勝算があった
わけではない。そうせざるを得なかったのだが誰もそうは思わない。なにしろ
みんなのあこがれであるクルーキャブと45フィートトレーラーでサーキット
に来るのだから。なんとかしなければと腹をくくったものだ。
  前後のスタビをリンクから外しタイラップで固定する。タイヤ温度が上がら
ないことを見越して少し内圧をあげる。あとは自分を信じるだけだ。水はけの
悪いストレートでは1台前にいると全く視界がきかない。1コーナー手前のの
ぼり勾配にさしかかったのを感じてブレーキングを開始する。とにかくこれ以
上は無理というぐらい神経を研ぎ澄ます。些細な動き、どんな音も見逃さない
覚悟で走る。予選を終えてピットに戻りながらオフィシャルがサムアップした
り大きくてを振っている。スリックで走ったことに対する賛辞かと思った。結
果的にはそうではなかった。上のクラスのマシンも抑えてトップタイム。それ
を無線で聞いて知っていたのだ。トレーラーに戻ると数人のドライバー。「ど
うやって走るんだ?何をやったんだ?」聞かれたのは一人ではない。そんなこ
ともあった。
  めったにスピンやコースアウトをしないアメリカ人だが、たまにはそんなシ
ーンに出会う。SCCAのオフィシャルは全員が手弁当のボランティア。しか
しその統制はプロレースのそれと同じ。プロに徹し物見遊山的なところは皆無。
なにしろSCCAのオフィシャルがCARTやアメリカンルマンシリーズのオ
フィシャルを務めるのだから。ある日一人のコースワーカーがトレーラーにや
ってきて言う。「イエローフラッグを出した時に必ず手を挙げて応えてくれる
のはトムだけだよ。お礼を言うよ。」「そんなことはないさ。こっちこそいつ
も感謝しているよ。」そんな会話もあった。
  こんなこともあった。アメリカではローリングラップの時にコーナーワーカ
ーだけでなくスターターまでもがサムアップで激励してくれる。チェッカーを
受ければ受けたで全員がサムアップで称えてくれる。勝っても勝てなくてもそ
れは同じ。ある日のレースで息詰まる競り合いをやってトップでフィニッシュ
した後の1コーナーで、いつもはサムアップに対して手をふ挙げて応えるのに
なぜかお辞儀をしてしまった。それからというもの、ボクに対してだけコーナ
ーワーカーはサムアップの替わりに深深とお辞儀をしてくれるようになった。

  とにかくレースが楽しくてい方がなかった。コース上では丁丁発止とやりあ
うのに、パドックに戻るととたんにホームパーティでも開いているような雰囲
気になる。手が足りないと自分のことを置いておいても助けてくれる。なのに
コースに出ればおいそれとは抜かせてくれない。そんな落差が楽しかった。心
地よかった。ドライバーだけでなくピットクルーも奥さん連中もオフィシャル
も。立場や考え方こそ違ってもみんな同じものを目指していた。
  
  そんな楽しいレースだが、楽しくあるためには努力も必要だった。

  ある日の南カリフォルニアリージョナルレース。場所はウィロースプリング
スレースウエイ。エントリーリストの同じクラスにアルファロメオの文字を見
つけた。誰だろ。初めて見るドライバー名。
  気にはなっていたがレースの準備に追われ、そのクルマとドライバーを見た
のはプリグリッドだった。いつものように前のグループがコースインするのを
待ち真っ先にゲートにクルマを並べる。あとは前のグループが走り終わるまで
じっとコクピットに座り続けるのがいつものことだった。と、眉毛の濃い若者
がドアのそばにたっていた。ひと目で彼がアルファロメオのドライバーだとわ
かった。エントリリストの名前がイタリア系のそれだったからだ。外に出ると
「アーユートム?」と聞いてきた。挨拶に来てくれたようだ。聞けば練習はか
なりしたがその日が初レースだという。早口でどこどこのコーナーが難しいと
いうようなことを言って戻っていった。「テイクイトイージー」と見送った。
  いつもの通りプラクティスも予選も4周で切りあげたからコース上では彼の
走りを見なかった。ピットからストレートを走るアルファロメオを目で追うが、
案の定速い。スペックブック(SCCAの車両規則書)で確認したら、なんと
なんとツインカムエンジンを搭載しているのに最低重量がスターレットより軽
くなっていた。
  SCCAのルールではどんな車種でも公認されればレースに参加できる代わ
りに、性能差を押さえるために車種ごとに車両規定が異なる。スターレットも
最初に公認された時には2,080ポンドの最低重量だった。当時のライバル
である110サニーが1,760ポンドなのにだ。この時は米国トヨタにSC
CAのコンペティッションコミッティーと交渉してもらい、レースデビューま
でに同じ重量で走ることが許された。実際に走っていない車両はポテンシャル
が確認しづらいので最初は規制を強める方向にあるようだった。
  ところがアルファロメオの場合は最低重量の項に1,680ポンドとあった
のだ。何かの間違いではないかと思ったが、そうではなかった。販売台数が少
なくまさかSCCAのレースに参加してくるとは思っていなかったのだが、規
則上はGT5クラスで最も有利な規定の1,300ccツインカムエンジンを
載せたアルファロメオと走ることになった。説明すると奥さんは「おかしいわ
よ!」って叫んでいたけど、問題は他のところにあった。

  1回の予選でトップタイムを得たのは予定通り。30分2回の予選をいっぱ
いいっぱい走ったディノ・クレセンティーニが2位。その差は1秒ちょっと。
どこかでロスしてるのだろう。
  スタート。スタートはクローズドレシオのトランスミッションを載せたスタ
ーレットが有利。1速にふつうの2速が入っているようなものだから3速〜5
速のつながりは快感。
  ローリングスタートに慣れていないのか1コーナー手前でリアビューミラ
ーを見てもアルファロメオの姿は確認できない。他のクルマのかげになってい
るのか。とにかく丁寧に1周目を回る。ストレートに出て後方を確認するとア
ルファロメオが近づきつつあるような気がする。2周目、3周目。だんだんと
その大きさは増し、ついにはリアビューミラー越しにもディノの太く濃い眉毛
が見て取れる距離になる。
  緩やかなのぼりの1コーナー。減速加速度を読み間違えると速度が落ちすぎ
る。縁石もなくアウト側のコース端も見えない1コーナーを立ち上がる。ディ
ノが離れている。「突っ込みすぎだ。コーナーが慣れてないのか?」
  4速にシフトアップ。ラビットイヤーと呼ばれる3速踏みっぱなしの長い右
コーナーを目指す。アウト側いっぱい。4速吹けきる速度から軽いブレーキン
グで3速に落としかなりのカントのついたコーナーに飛び込む以外、ラビット
イヤーを速く走る方法はない。ラインは1本だ。だからディノがイン側を走っ
ていたことは意識していたが、まさかそのラインから入ってくるとは想像もし
なかった。それがあろうことか、3速に落としてターンインを始めた瞬間リア
に衝撃を感じる。甘かった。相手に期待しすぎた。カントを下るようにターン
インしていたスターレットのリアが大きく流れる。初めての体験。クルマを落
ち着かせねば。カント。登り勾配。3速全開。どれだけカウンターステアを当
てたらいいのかわからない。とにかく踏みっぱなしでステアリングホイールを
回す。リアのロールを感じる。流れが止まる。ミラーを見ればディノがふらつ
いている。
  なんとかいつものラインに戻しラビットイヤーを抜ける。4速に入れコース
で唯一2速を使うヘアピンを目指す。ディノとは距離がある。「いずれは来る
だろうな。」
  いやな相手だがレースは始まっている。相手を拒否することはできないし、
レースを放棄するつもりもない。自分のレースをするだけだ。
  何周しただろう。縦のブラインドコーナーのターン6を抜けて着地(!)し
てミラーを見るとディノが現れるところ。これから先はターン9まで踏みっぱ
なし。4速。5速。シフトアップしながらミラーでディノの位置を確認する。
やはり近づいてくる度合が速い。同時に、言葉は悪いが思わず『バカヤロ』と
相手をののしる。なんとディノはターン7でクルマをアウトに振らずにまっす
ぐにターン8のインについてきている。ここでもインから抜けると思っている
に違いない。『駄目だ、駄目だ!』心の中で叫ぶ。
  抜かれるのがいやで叫んだわけではない。理由なくののしったわけではない。
ターン8をインについたまま全開で回れるはずがないからだ。ディノのライン
だと間違いなくターン8の頂点で道幅が足りなくなる。彼は5速全開のスピ
ードだとどれほどクルマが流れるものなのか自覚していない。このままでは彼
は段差のあるエスケープゾーンに出て行くしかない。ディノにとって危険であ
るばかりか、もしその先にスターレットがコーナリングをしていたらただでは
すまない。巻き添えを食うのもごめんだ。他人の事故も見たくない。
  いつもより少しスロットルを抜きながらいつもより少し手前からいつもより
イン寄りのラインを目指す。同じ速度ならばインに入っても併走できる余裕を
残してだ。その直後。瞬間的な大きなスキール音。5速のままコーナリングし
ながらミラーを見ればまだ白煙が漂っている。ディノがタイヤをロックさせた
のだ。さすがのディノも5速全開で接触したら大変という意識はあったらしい。
  なぜ力任せに追い越すことができると信じるのか。なぜ相手が冷静でなけれ
ば対処できないような状況なのに相手を信じて仕掛けることができるのか。そ
んなヤツとレースをしなければならないのか。怒りよりも安堵よりも虚無感が
身体を駆け抜ける。
  だから、再びディノがミラーに大写しになった時それ以上時間と空間を共有
することは止めた。

  クラス2位でチェッカーを受けコースを回る。コーナーワーカーは2台の走
りが気にいってくれたのかサムアップの他に拍手もしてくれる。コース上で何
があったのか気がついていないのかも知れない。
  パドックに戻りことの顛末を奥さんに報告する。眉間にしわを寄せながら
「やっぱりね。」赤色の塗装がこびりつきひん曲がったリアバンパーをみなが
らつぶやく。
  「プロテストするよ。いろいろ考えたけどやっておいたほうがいいと思うん
だ。ディノが失格になって繰り上がっても嬉しくはないだろうけど、これはや
っぱり違うよ。」「そう。で、いくらかかるの?」「150ドル。」
  当時エントリーフィーは65ドルだった。主催者に抗議するには抗議文を提
出し保証金を払わなければならない。抗議が通れば保証金は返還される。抗議
が通らなければその抗議が不当なものであったとして保証金は没収される。
  確かに抗議が通る保証はどこにもない。当てられたから勝てなかった。だか
らディノを失格にしろ、という抗議が通るはずもない。相手だって当てたくて
当たったわけではないかも知れない。レースではディノの走り方も間違いでは
ない声もないとは言えない。抗議が通って1位に繰り上がったとしても起きて
しまったことは元には戻らない。順位のためにレースをやっているわけではな
い。楽しくないレースだったのだから楽しくないままに終わることもできる。
  しかしレースがしたくてアメリカまで来て、難儀の連続だったけどここまで
やって来て、ようやくみんなの仲間に入れてもらえた。それは自分ひとりの力
ではできなかったことだ。クルマを使って楽しいことがしたいという社会に受
け入れてもらうことができたからだ。ならば、何を言われようが自分だけが経
験したことを公にして、起きたことがみんなの望むところなのか問うことこそ、
仲間に入れてもらった者の義務だと思った。だから抗議文にも、順位に関して
は頓着しない、思慮に欠ける行為に対して見解を聞きたいと但し書きをつけた。
  
  事務局に抗議を提出する。審査委員会による裁定が出るのはコーナーワーカ
ーが開放される全レース終了後だという。他のクラスのレースが続く中、同じ
レースを走ったドライバーが呼ばれている。審査委員会が話を聞くためだろう。
正しいと思って抗議を出したのに、なぜか落ち着かない。いつもは立ち寄って
話し掛けてくる人もなんとなくよそよそしい。同じクラスのドライバーが「ト
ム、抗議したんだって?」と聞いてきても裁定がでるまで仔細を話すべきでは
なく、ただただ自分が揶揄されているかのように思えてしまう。
  事務所の軒下に座り裁定が出るのを待つ。全レースが終わりコースワーカ
ーが審査員室に出入りしている。それからも長い時間が経った。なんで抗議な
んか出すんだ、時間の浪費じゃないかと言わんばかりの視線を感じる。どう裁
定が下るかわからない。一瞬の内にコース上で起きることをコースワーカーが
正確に認識しているとも限らない。しかし自分のボトムラインは無事にレース
が終わったことを喜ぶべきで、その喜びが続く努力をすることだ。

  そこかしこに停まっていたトレーラーもほとんどが家路につき閑散としたパ
ドック。そこへチーフスチュワードが現れる。立ち上がる。一瞬の間を置いて、
「ユー ウォン。ヒヤーズユアチェック。」肩の力が抜ける。やっとの思いで
ありがとうと言う。すると「ノー  ノー。トム。サンクユウ。」こちらの目を
覗き込むチーフスチュワードの思いがけない言葉。その瞬間。本当の意味での
グラスルーツモータースポーツがわかったような気がした。
  トレーラーに戻りながら考える。そこに集まる全ての人が、ひょっとしたら
心からそうしたくいてしているのではないかも知れないが、だけどルールに則
り楽しい遊び場を維持することに努力する。自分に対するのと同等に自分が属
する社会を大切にする。この日、レースを通じて自分が探していたことを見つ
けられたような気がした。
    
・ウィロースプリングスレースウエイ公式サイト 
http://www.willowspringsraceway.com/home/home.asp

********************************************************** 奥付け ****
  □ メールマガジン " Go − Circuits " 
  □ 有限会社ユイレーシングスクール発行
  □ 編集/ 文責:トム ヨシダ
  □ オリジナルサイト:http://www.avoc.com/
  □ Copyright Yui Racing School Co.,Ltd.
  □ Copyright 1986-2005 AVOC CORPORATION
        本メールマガジン、オリジナルサイトの全部、または一部を複製
        もしくは引用されたい方は、事前に発行人までご連絡ください。
  
 宛先:発行人  publisher:mail@avoc.com
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