≡≡ Yui Racing School presents ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
Go − Circuit No.9 (11/03/99)
------------------------------------- from California, USA ------
●クルマを走らせるのは楽しい。速く走らせるのはもっと楽しい。●しかし安
全に速く走らせることが難しいのも事実。走らせ方を理解していないと楽しく
もないし危険でさえある。●クルマをもっともっと楽しむために「クルマさん
との正しいお付き合いの仕方」を学びませんか。●当サイトからの提案です。
<<標語>> 公道では安全運転、サーキットではそれなりに。
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□□□■□□□ 質問と □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□ その回答 □□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□◇□□□□□□□□□□ 特集 □□□□□□□□□□□
≪ No.9の目次 ≫
●読者からの質問とその回答
◎トム ヨシダからのメッセージ
○あとがき
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●読者からの質問と回答
▽質問 − 4WDでの走行方法
私はGC8F−Ltdに乗っています。ホームコースはツインリンク茂木です。
小さいコーナーではうまくスライドさせて行ける感覚はつかんだのですが、茂
木の大きめのコーナーに苦戦しています。進入では話題のブレーキの引きずり
でうまく旋回効率が上げられるのは実際の動作でも解るようになったのですが、
立ちあがり加速時に4WDの為かフロントが逃げてしまい思うように立ちあが
れません。どうしたらうまく立ちあがれるでしょうか?やぱり機械式LSDな
ど必須なのでしょうか? 《匿名さん》
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質問を受け取った後に、
>> 私はGC8F RA-Ltdに乗っています。
> モデル名はなんですか?
98年F型インプレッサWRX-RA Limitedです。
>> 立ちあがり加速時に4WDの為かフロントが逃げてしまい思うように立ちあが
れません。
> フロントが逃げるということは、「アンダーステアが出てフロントがアウト
にはらんでいってしまう」という状況なのでしょうか。確認させて下さい。
加速に移ってからの状態ですのでプッシングアンダーと言うのかもしれません
。「プッシングアンダーステアがでてフロントがアウトにはらんでいってしま
う」って感じです。
というやり取りがありました。
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最初にお断りしておきます。匿名さんの言われる「ブレーキの引きずりでうま
く旋回効率が上げる」テクニック(英語ではTrail Braking:ト
レールブレーキングと呼びます)は、二輪駆動車が中低速コーナーにアプロー
チでのみ有効な「コツ」です。
トレールブレーキングを使うことにより「クルマの荷重移動をスムースに行う
」ことができるからです。クルマの移動量が大きく姿勢変化に敏感になる高速
コーナーでは通用しないばかりか、危険でもあるので注意して下さい。ただし
全輪で駆動する4WDの場合は「その程度によって」有功です。
さて、質問は大き目のコーナーの脱出でアンダーステアが出て思うように走れ
ない、ということのようです。
結論から言いましょう。クルマさんには問題はありません。原因を作っている
のは運転手です。
4WDであろうと、FFやFRだろうと、はてはミッドシップであろうと、コ
ーナリング時には遠心力が働いています。「コーナーを速く走ろうなんて上等
じゃんか」とばかりにクルマさんとタイヤさんが結託してコーナーのアウト側
にはらみ、運転手にちょっかいをかけているのです。
ですから、コーナーの途中ではもちろん脱出においてもクルマが「外に行こう
とする」のはごく自然のことなのです。ですから、ここで運転手がクルマさん
とタイヤさんに抵抗すると事態は最悪になります。
「オイ、コイツ娑婆の決まりってものを守らず勝手に振る舞っているゼ。その
内コイツはとんでもない事故を起こすゾ。しょうがないから、いっちょそうな
る前に言ってやるか」とばかりに、オットトの状態を作ってくれるのです。
どんなクルマでもどんなタイヤでも、根っからの「悪人」はいません。基本的
には操る人間に忠実で親切なはずです。しかし古いタイプなのでしょう、「こ
れと言ったことはテコでも動かない」種類の性格を持っています。
口下手なクルマさんとタイヤさんが言いたいことを通訳します。
『運転は下手じゃないんだから、もう少しオレッチの事情も考えてヨ。加速に
移るとアンダーが出るのは、それまでのラインが「加速向き」じゃないか、ス
ロットルの「開け方が急すぎる」からか、その両方なだけサ』
つっけんどんなクルマさんとタイヤさんの言い分を補足します。
匿名さんは、「なぜコーナーの出口でスロットルを開けますか?」。「速く走
るため?」。そうですよネ。
となると、ラップタイムがひとつの基準になりますよネ。それでは、「コーナ
ーの出口でクルマの姿勢がもう少しまっすぐを向いてから、つまり横Gが減る
の感じてからスロットルを開けてみてはどうでしょう。それでタイムを計って
下さい。
もうひとつ。クリッピングポイントを過ぎたらスロットルを「ドカン」と踏ん
だタイムを計って下さい。どちらが速いですか?
匿名さんが常に理想的なラインを通っているとしたら、正解は上のふたつの中
間のどこかにあるはずですから、位置をずらせば最適な場所が見つかります。
この検証をしてからでも、クルマをいじるのは遅くないと思います。
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▽ 質問 − ラインが分かりません
ライン取りが分かりません。クリッピングポイントを若干奥に取るのでしょう
が、客観的に外から見る時と、自分で車の中で運転している時では異なるよう
に思えます。また、これで良いかどうかも良く分かりません。従って、スクー
ルが必要なのでしょうね。
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速く安全に走るのにはラインが極めて重要です。
走りながらスロットル、ステアリング、ブレーキの操作をするわけですが、そ
れらを「どう操作するか」は走るラインによって異なります。言い方を変えれ
ば、みっつの操作とラインは常に相関関係にありますから、「操作の仕方」に
よってラインは変わりますし「ラインの取り方」によって操作も変わってきま
す。
運転手が相関関係を理解せずに「操作」と「ライン」がちぐはぐになった時、
スピンやクラッシュが起きるわけです。
確かにラインを見つけることは難しいことです。が、いつもYui Raci
ng Schoolが言っているように「速く走るためには直線での加速を重
視するライン」が重要だということは不変です。となると、ライン取りの鍵に
なるのは、「どこからどのようにして加速できるか」と言う点に絞られます。
あなたがコーナーを立ち上がった時、「スムースにクルマの性能を十分生かす
加速」ができていなければ、そのラインはペケで、そのコーナリングは失敗と
いうことになります。
極端な話をしましょう。「コーナーの脱出」と「直線での加速」が大事なわけ
ですから、こんなラインはどうでしょう。
1)コーナーの一番奥まで入れるように減速する
2)コーナーに続くストレートに平行にクルマを向ける
3)それから加速する
こうすることにより、少なくとも加速に関しては最高の結果が得られるはずで
す。即ち、全開での発進加速のようなものです。違いますか?
でも、サーキット1周のタイムを考えると得策ではありません。1)と2)の
操作が「速く走る理論に反する」からです。
でもでも、こう考えれば良いのです。「上の例が加速にとっては最善のライン
だが、加速開始の速度は最低。ならば、徐々にストレートに平行に向ける位置
を先に持って行ってみよう。どこかにクリッピングポイントからでも徐々に加
速できるラインがあるはずだ」と。
そう、ラインに迷ったら「向こうからこちらに考えてみること」です。ライン
が分からなかったら「コーナーの入り口に立ってラインを想像するのではなく
、出口から振り返ってラインを探す」のです。
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クルマさんを速く走らせるのは人間ですが、人間はクルマさんより速くは走れ
ません。クルマさんは確かに力持ちですが、その能力が生かせる状況にならな
いと持てる性能の全てを発揮することはできません。もし、人間が「クルマさ
んが走りやすいように仕向けてあげる」ことができれば、その時にこそ安全に
速く走ることができるはずです。
そして、それこそがYui Racing Schoolが目指す「人とクル
マの楽しい共存」です。
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◎トム ヨシダからのメッセージ
10月31日、カリフォルニア州フォンタナにあるカリフォルニアスピードウ
エイで行われたCARTチャンプカーレースでいたましい事故がありました。
レース車両の一台が時速200マイル(320Km/h)でコンクリートウォー
ルに激突したのです。コーナーの出口でコントロールを失い、スピンに陥った
のが直接の原因です。
2年前までチャンプカーのダウンフォース(高速で走ることで生まれる下向き
の力)が、時速200マイルで1.8トンありました。つまり750Kgのレ
ースカーが「天井に逆さにはりついて」走れるほど「ぎゅっと」押さえつけら
れていました。
車両規則が変わり、今年のダウンフォースは半分以下でした。つまりバランス
が崩れると「何が起きてもおかしくない」状態で走っていたのです。
車高を落とす。サスペンションを固める。グリップの高いタイヤを履く。確か
に、どれも「ハードウエア」を速く走るための変更として有効な方法です。
しかし、「速く走るためとは言っても、過度の変更をするとクルマさんのバラ
ンスが崩れる」ことを覚えておいて下さい。
サスペンションを固めると、クルマの挙動変化が判り難くなります。Sタイヤ
を履くと限界が判り難くなります。
クルマを速く走るために改良すればするほど、危険な状態になった時、その向
こうにある安全マージンが減っていきます。速いクルマになればなるほど、危
険な状態になった時は、「ホントニキケン」になります。向こう側にある危険
は、プロのレーシングドライバーですら判らない時があるのです。
クルマを速く走らせる楽しみのひとつに「スピードを出す」ことがあるのは事
実です。ですが、それはいろいろある楽しみの一部です。クルマを操る楽しみ
のうち最大のものは、「クルマさんとの共同作業で、クルマさんの限界を見極
める」ことだと思います。
スピードが、あくまでも運転手がコントロールできる範囲でなければ、とても
「楽しみを味わう」どころの話ではありません。「速いクルマにのれば、それ
だけ楽しいしうまくなる」と思うのは、「運転手も速いクルマをコントロール
できるテクニックを持っている」という条件がつかない限り、ハッキシイッテ
、あなたの錯覚です。
最近の市販車は実に良くできています。1000ccクラスのセダンでも、限
界で走らせるのは経験不足の人には難しいことです。
ノーマルカーでサーキットに行ってみましょう。そこから「クルマを操る楽し
み」は始まります。
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○あとがき
Yui Racing Schoolはこれからも「安全に速く走る」ための
情報を提供していきます。その情報をどう使うかはみなさん次第です。ただ、
もし使い方が分からなかったり、使っても効果がなかった場合は、ぜひ日本で
開催するドライビングワークショップなりドライビングクリティークを受講し
て下さい。
諸般の事情から、今後も不定期刊行を続けることになります。ですが、内容や
体裁についてはドシドシ改善を加えていきたいと思いますので、ご意見やご感
想をお寄せ下さい。
その後11月下旬までメールマガジンの発行ができなくなる可能性もあります
。もししばらく配本されなかったとしても、休刊するわけではありませんので
ご了承ください。遅くとも11月末までには第一回ドライビングワークショッ
プの事前情報をお送りする予定です。
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発行人からのお願い
過去オリジナルサイトのフォームで質問を寄せられた方には個別に回答してき
ましたが、メールマガジン上で回答し多くの人と情報を共有できる質問を募集
しています。初歩的質問も大歓迎です。どしどしお送り下さい。
宛先は、mailto:question@avoc.com です。<新しいアドレスです
尚、ご質問の際は名前(ペンネーム可)を記入するか、匿名と書いて下さい。
*************************************************** 奥付け ******
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