Home > YRS Media-Info >

≡≡ Yui Racing School presents ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡

Go − Circuit No.181 (02/11/04発行)

---------------------------------------------------- Taste of USA ----
●クルマを走らせるのは楽しい。速く走らせるのはもっと楽しい。●しかしク
ルマ安全に速く走らせることが難しいのも事実。走らせ方を理解していないと
楽しくもないし危険でさえある。●クルマをもっともっと楽しむために「クル
マさんとの正しいお付き合いの仕方」を学びませんか。●ユイレーシングスク
ールからの提案です。●公道では安全運転を。サーキットではそれなりに。
======================================================================
1)フロム シニアインストラクター
2)2004YRS第1戦スプリント&エンデューロ@筑波
3)しのいサーキット公式ドライビングスクール参加申込み受付け中
4)YRSドライビングスクール筑波参加受付開始 !
5)2004第2回YRSオーバルスクール浅間台参加受付開始 !
6)2004第2回YUSドライビングワークショップ成田参加受付開始 !
7)トム ヨシダのドライビングチップス

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
1)フロム シニアインストラクター

繰り返し「スピンを経験したからといって速く走れるようになるとは限らな
い。」、「スピンしたりコースアウトするのはクルマのバランスを崩した結果
なのだから、速く走るよりことよりもまずどうやったらクルマのバランスを崩
さずに走れるかを考えるのが先決だ。」と言ってきたから、最近ではスクール
で『スピンを経験したいんですけど、、、』という申し出を受けることはなく
なった。それでも卒業生と飲んでいる時など、『一度思いっきり振り回してス
ピンしてみたいよなぁ。』なんて会話になることがある。

どうもスピンはサーキットを走る人全ての憧れのようなものらしい。(笑)
ボクから言わせれば、スピンなんかしたって何も得るものはない。怖い思いを
したりタイヤがチビルのがせきの山、ということになるのだが。

ところで、YRSでは折に触れ走行中のクルマをビデオに録画している。特
にクルマの挙動がわかりやすい定常円走行はずいぶんとストックがたまった。
ある時、参加者が少ないこともあってスタッフが運転して典型的なアンダース
テアとオーバーステアの状態をビデオに収めようということになった。ボクも
乗った。
ところが、「言うなれば悪い見本を撮るのだから極端に、はでにやってやろ
う!」と意気込んで運転するのだが、これがうまくいかない。アンダーステア
で言えば、スクールでよく見られる《ギャー》というアンダーステアを再現す
ることができないのだ。瞬間的にはそうなっているようなのだが、長続きしな
い。タイヤの鳴き方も控えめ。と言うより、フロントタイヤを鳴かせるのが難
しい。フロントが逃げたかと思うと、次の瞬間にはリアもロールを始めている
から4輪ともスキール音を上げる。これでもかと思ってやるのだが、収録した
ビデオを見る限り、やはりなにごともなかったようにクルマは周回している。
オーバーステアの再現は比較的簡単にできるが、速く走ることを前提に操作
していると期待するほどにお尻が出ていない。結局、いまだにスタッフの運転
では“いい絵”が撮れていないのが実情だ。
なぜ故意にクルマのバランスを崩して走れないのか?ボクにしてもスタッフ
にしてもそうだ。タイヤがもったいないわけではない。YRS公認でクルマの
バランスを崩していいというのに、なぜできない?
帰りのクルマの中で考えたものだ。「あまり器用じゃないのかな?それとも
身体に染み付いている走り方を意図的に変えるというのは難しいからか?」結
論が出ないまま、結局は「クルマのバランスを崩さないのが一番。クルマさん
だって望んではないだろう。」てなところでお茶をにごすことになる。

しばらくしてから、先の卒業生、『スピンしたい』卒業生がオーバルスクー
ルに来た時のこと。走りを見ていると一生懸命振り回しているのが見て取れる。
コーナーに飛び込む。スロットルをガバッと開ける。しかしクルマはバランス
を崩すようでいて、次の瞬間には理想的な走りに収束してしまう。クルマが浮
いているのがわかるが、それは速度が高いからだ。自分のことは棚に上げてお
いて、思わず苦笑。「な!思うようにはいかないだろ。行くわけがないよ。ク
ルマの動きがわかっちゃっているんだから自然に身体が反応しちゃうんだよ。」
おそらく、クルマがバランスを崩しかけた時にあきらめてしまえばスピンし
たりアンダーステアを引きずったりできるのだろう。しかしドライビングテク
ニックの上達には『あきらめない気持ち』の成長も含まれる。このことを知る
人は少ない。あきらめないと言っても、やたらカウンターステアを切っておつ
りをもらったりする悪あがき、無駄な抵抗のことではない。クルマのバランス
を保ちつづけようとする、冷静にして沈着なあきらめない気持ちのことだ。
YRSの卒業生の中には同じようにクルマを振り回したい衝動に駆られる人
が少なくない。しかしみんな自分が想像するような派手なシーンを演じること
には失敗している。ボクはそれでいいと思っている。とにもかくにも『クルマ
のバランスを崩さすクルマを前へ前へ進める』という一番大切な軸がブレてい
ない証拠なのだから、みんながっかりするよりむしろ誇りに思うべきだと、自
分にも言い聞かせている。

スピンはいけない、アンダーステアは出すべきじゃないというのは、それが
コントロールを超えたところで起きるからだ。コントロールを失ってはクルマ
は運転手の意図する通りには動かない。そこには必ず『失速』という『速さ』
には逆行する事態が待っている。
速く走るためにはクルマを失速させないことが肝心だ。つまり無駄なことを
しないことが大切だ。
クルマは加速が苦手だ。逆に速度を落とすことは容易にできる。どういうこ
とかと言うと、クルマが速く走るためにはとてつもないエネルギーを使う。高
い速度に到達するには時間がかかる。余談だが、だからみんなエンジンの出力
を上げたくなるのだ。だが、せっかく得た速度を失うのは簡単だ。ヘアピンへ
のアプローチ。ブレーキングで速度が落ちる。ということは、せっかくためた
エネルギーも放出しているのだ。もったいないではないか。でもコーナーを回
るために必要最低限の減速は欠かせない。それが周回路を走るということだ。
だから必要最低限の減速は仕方がないものなのだ。
しかし速さを失う場面は他にもある。オーバースピードでコーナーに突っ込
んでエイヤとステアリングを切ったあまりのアンダーステア。本来なら回転運
動に変化していくはずのエネルギーがまっすぐに逃げてしまう。結果は。失速
だ。コーナーの立ち上がりで不用意にスロットルを開ける。リアタイヤのスリ
ップアングルが過大になりテールスライドが起きる。本来加速のために使われ
るはずのそのクルマが持っているパワーが横に逃げる。トラクションとはなら
ず加速が鈍る。これもまた、失速。
そして結果としてのスピンやコースアウト。どんな状況であろうと、スピン
やコースアウトは最大の失速だ。

スピンやコースアウトをしないようにと言うのは参加者の安全を確保する為
でもあるが、最大の理由は速く走ることを目指してスクールに来た人達に本当
に速く走ってもらいたいからだ。
慣れるまではじれったいかも知れない。しかし頑張ってしまうよりクルマの
動きを感じ取ることを優先して走れば、そのうちに『クルマの挙動の速さに合
わせた操作』ができるようになる。最終的にはバランスを崩そうと思っても、
自然に身体が動いてしまうようになる。それがユイレーシングスクールが目指
すところだ。
ロードスターに乗る『スピンしたい』卒業生達の走りを見ていると、誰にで
もそれができるようになると確信することができる。

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
2)2004YRS第1戦スプリント&エンデューロ@筑波

入稿時での参加申し込み台数はエンデューロが7台、スプリントが44台で
す。初めて参加する方が多いのが今回の特色です。参加を予定されている方は
お早めにお申し込み下さい。エンデューロは参加申し込み金1万円を振り込み、
残額は当日清算でかまわないようになっています。

第1戦に関する公式通知に追加があります。
◎エンデューロ
・ハイパワー車のエントリーがあったのでクラス分けを行います。

200馬力以上の車両が複数参加した場合のクラス分けは以下の通りとします。
Aオーバー200:カタログ馬力が200馬力以上の車両
Bアンダー199:カタログ馬力が199馬力以下の車両
Cストック:サスペンションスプリングを変更していない車両
尚、各クラスの表彰は次の通りとします。

・参加台数が1〜3台の場合は1位のみ
・参加台数が4〜5台の場合は2位まで
・参加台数が6台以上の場合は3位まで

・YRS第1戦公式通知
http://www.avoc.com/2school/2yrs/yrs_bulletin.htm
・YRSエンデューロ規則書
http://www.avoc.com/2school/2yrs/yte_guide.htm
・YRSスプリント規則書
http://www.avoc.com/2school/2yrs/yts_guide.htm

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
3)しのいサーキット公式ドライビングスクール参加申込み受付け中

3月10日にしのいサーキット公式ドライビングスクール第1回を開催しま
す。具体的なカリキュラムは次の通りです。

・ストレート部分を使ったスレッシュホールドブレーキング練習
・山の上のヘアピンを使ったブレーキング練習
・ヒーローコーナーを使ったスロットルコントロールによる姿勢制御の練習
・ダンスシケインの進入と脱出の練習
・ショートカットを使ったラッピング
・フルコースのラッピング
・計測

しのいサーキットのヒーローコーナーは筑波サーキットコース1000の1コー
ナーより速く長いコーナーです。クルマの姿勢制御を練習するためにはうって
つけ。もちろんサーキットを走ったことのない方が練習を始めるのにも有効で
す。

尚、3月10日のスクールでは初めてしのいサーキットで開催するエンデュ
ーロレース、スプリントレースに関する説明を行いますので、YRS第2戦の
参加を考えている方はぜひご参加下さい。
もちろんサーキットを走られたことのない方の参加も大歓迎です。日本のサ
ーキットにしては珍しい『右足で走行ラインを買える』ことのできるサーキッ
トを味わってみてはいかがですか?

・しのいサーキット公式ドライビングスクール開催案内
http://www.avoc.com/2school/2yds/yrs_shinoi.htm
・しのいサーキットワンラップ動画
http://www.avoc.com/3media/3auidio_video/img_audio_video/raceway/lap3_
shinoi.mov
・しのいサーキットショートコースワンラップ動画
http://www.avoc.com/3media/3auidio_video/img_audio_video/raceway/shino
i_short4.mov
・しのいサーキットホームページ
http://www.he-ro.co.jp/

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
4)YRSドライビングスクール筑波参加受付開始 !

アメリカのジムラッセルレーシングスクール(JR)のADC(上級クラス)
はフォーミュラマツダを使った3日間のコースでしたが、カリキュラムの中に
楕円形のコースを周回する定常円走行が組み込まれていました。大きさはYR
Sが筑波で使っている30x60mと同じようなものでしたが、クルマがフォ
ーミュラカーだけにコーナリング速度が速く目が回るほどの忙しさでした。
JRでも入門編とも言えるTDCにはオーバル走行が入っていません。それ
はオーバルコースをキチンと走るのにはある程度クルマの挙動を理解している
ことが必要だからです。逆に多少の経験のある人は同じ形状のコーナーを繰り
返し練習することで、飛躍的にクルマの動きを感知する能力とクルマを前に前
にと進めるコツがわかります。
ユイレーシングスクールではあえて、サーキットが初めての方にもオーバル
定常円を走ってもらっています。それはクルマが乗りなれている参加者自身の
クルマだからです。つまりどう操作するとクルマがどうなるであろうというこ
とがある程度わかっているクルマを走らせるわけで、そこにパイロンに沿って
できるだけ速いペースで周回を続けるという制約を与えるためです。気ままに
運転している時には自分のクルマを自由に操れるものですが、いったんテーマ
が決まると、そしてそれが限界付近で走るというテーマになるとクルマは豹変
します。ふだんできていることができない。こうなるはずがそうはならない。
そこにクルマの動きに対する理解を深めるヒントがあります。
定常円でクルマの動きがわかりかけてきたところでコース1000に移動します。
今年から入門クラスでもコーナリングの練習を行いますが、ジムカーナ場で培
ったクルマの挙動に合わせた操作をアウトインアウトのラインで練習します。
もちろん最後にはその日に習得したクルマを走らせる技術を検証するために
ラッピングを行います。そしてその速さが参加者一人ひとりの『運転の上手さ』
の原点になるというカリキュラムになっています。原点さえわかれば、あとは
どうするとプラスになり、何をするとマイナスになるのかがよくわかります。

1日を通じて無理なくクルマさんとお友達になれるようにプログラムされた
YRS筑波ドライビングスクールにぜひおいで下さい。
ノーマルカーでもかまいません。ワンボックスでもかまいません。乗り慣れ
ているクルマで参加して下さい。また、同じようなクルマがどのくらいの速さ
で走るのか、経験のある人は同じようなクルマでどのくらい速いのかを見るた
めにラップタイムのデータも掲載してあります。

・YRSドライビングスクール筑波開催案内
http://www.avoc.com/2school/2tds/tds_guide.htm
・YRSコース1000ラップタイム騒乱
http://www.avoc.com/4circuit/4circuit_record/t1k/01frame_best.htm

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
5)2004第2回YRSオーバルスクール浅間台参加受付開始 !

初めて会った参加者同士が和気アイアイと1日中、文字通り走り回るのがY
RSオーバルスクール。とにかく筑波サーキットのジムカーナ場では実現でき
ない32x100mのオーバルコースを走ると、いろいろなことが見えてきま
す。過重移動のコツ。ステアリングの切り足しかた。イーブンスロットルにも
っていく方法。FFなのにスロットルオンでのオーバーステア。4輪がアウト
に滑りながら、かつクルマが前に進む感覚。
極めて単純なコースですから、突き詰めて走ると失敗します。学習、練習、
遊びの3つがそれぞれ3分の1を占めるように走り回るのに最適なカリキュラ
ムになっています。
もちろん全員が受信機からのリアルタイムアドバイスを受けながら、次の速
さを目指します。

・YRSオーバルスクール開催案内
http://www.avoc.com/2school/2yos/yosa_guide.htm
・第1回オーバルスクール結果と画像
http://www.avoc.com/2school/2report/report_yosa/0206/0206report.htm

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
6)2004第2回YRSドライビングワークショップ成田参加受付開始 !

名前がレーシングスクールということもあって、いかにも速く走ること専門
に教えるところのように受け取られがちですが、ユイレーシングスクールは速
く走ることよりも上手くクルマを運転することに重点を置いています。それと
同じくらい大事なのが楽しさです。
今年から始めるYRSドライビングワークショップ成田はそんなYRSの基
本中の基本を少人数制でじっくりとお伝えしようというプログラムです。成田
モーターランドは決して速いサーキットではありませんが、逆に多彩なレイア
ウトを取れるのが強みです。1回目は既に定員いっぱいの申し込みがありまし
た。サーキットを走るつもりはないけどクルマに対する理解を深めたいという
方、もう一度基本からやってみたいという方はぜひ参加してみて下さい。ペー
パードライバーの方も大歓迎です。一人ひとりのカルテを作り、個人の経験に
合わせてカリキュラムを進めます・
全員が受信機をつけてリアルタイムアドバイスを聞きながら走ります。

・YRSドライビングワークショップ成田開催案内
http://www.avoc.com/2school/2ydw/ydwn_guide.htm
・成田モーターランドコースレイアウト
http://www.avoc.com/2school/2ydw/layout_narita.htm

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
7)トム ヨシダのドライビングチップス

今年から筑波サーキット以外でもYRSスプリントとエンデューロを開催す
る。そんなこともあって、YRSの卒業生がしのいサーキットにコソ練に行っ
ているようだ。ある日、以下のようなメールが届いた。

* * * * ここから * * * *

しのいにまた(2回目)行ってきました。今回は家族サービスとして小学生の
息子を連れて行きずっと同乗して走りました。なので安全マージンは十分にと
りタイムは期待していませんでしたが、結果的にベストタイムは52.068
秒と前回より更新できました。同乗による安全マージンを十分にとっていたこ
とや重量増を考えるとオーバルスクールの効果が出たようですね(笑)。今回
は前と後のスリップアングルの変化を感じ取り、できればコントロールするこ
とをテーマにして走ってみました。また子供を同乗していたので荷重も穏やか
に変化させなければならない。もし流れ過ぎたりしても絶対にコースアウトし
ない。またなにもなかったかのように立て直してみせるという強い意志を持っ
て走ったのが良かったのかもしれません(笑)。

それからショートコースも走ってきました。例のショートカットコーナーです
が、想像通り一瞬コースが見えなくなるのは面白いですね。

* * * * ここまで * * * *

ボク自身、小学生を同乗走行させていいものだとは知らなかったので驚いた
ものの、それよりもラップタイムが遜色ないばかりかベストを更新したという
点に興味を持った。なぜならば、昨年暮れまでに延べ4千人以上の方の走りを
見てきたが、同じような場面に出会ったことを思い出したからだ。つまり速さ
に逆行する要素を抱えながら走った時に速く走れた例だ。

ある晴れた夏の暑い日。筑波サーキットコース1000.筑波ドライビングスク
ールでのこと。長袖長ズボンで走っていた参加者が具合が悪いと言ってきた。
見れば少しのぼせているようだ。水分をとって休むように言ってスクールを続
けていると、しばらくして「だいぶ良くなりましたがまだ心配なので、今日は
走るのをやめます。」と寄ってきた。
「でももったいないよ。お金払ってんだからゆっくりでもいいからできると
ころまで走ってみれば。按配が悪い時にどうやって走ればいいかなんてなかな
か経験できないし、クルマの運転はベストの状態の時にしかしないものでもな
いしね。外から見ているからやめたほうがいい時は合図するし。」と答えた。
「じゃぁやってみます。」といって走り出したのだが、危なっかしい走り方
をしているわけでもない。結局、それなりにペースをつかんで走れたのだろう。
スクールが終了すると計測結果をまとめてホッチキスで止める。気になって
タイムを見たら、それまでに記録したラップタイムより速かった。結果を手渡
すと、「そんなに頑張らなくても速く走れル者なんですね。」と。「そうです。
走るのはクルマ。人間はクルマに走ってもらっているんですよ。」

季節は忘れたが、とある筑波スプリントの日。「トムさん。ボクのタイヤも
う駄目ですから今日は流して走ります。次はタイヤを替えてきますから。」と
意気消沈した顔の参加者。どれどれと見に行くと、確かにアンダーステアを乱
発してきたのかタイヤのショルダー部分がとんでもなく丸い。トレッドの端も
かなり薄くなっている。とはいうものの、ボクがアメリカのショールームスト
ックレースで使い切ったタイヤよりはずっとまし。
「確かにタイヤは厳しいけど走れないわけじゃない。帰りのこともあるから、
できるだけタイヤをいたわって、そう特にアンダーステアを出さないようにし
て、と言っても遅く走れってんじゃないよ、タイヤをいたわる気持ちで走って
みれば?タイヤが減ってくればケーシングの剛性は上がるわけだから、スムー
スに走れば遅くはないよ。それにこんな状態のタイヤを体験するには、また新
しいタイヤを減らさなきゃできないでしょ。」
ところがどっこい。走り出せば安定していて、とてもタイヤが駄目という状
況ではない。ラップタイムも更新したし、各ヒートではけっこうなつばぜり合
いを演じていた。さすがにファイナルヒートが終わってからタイヤを見るとワ
イヤーが露出していたが、それだってそれなりに走れば走れないわけじゃない。
「タイヤはもうグリップしないもんだと思ってゆっくり帰ってね。」それか
ら彼はどんな時でもコンスタントに走るようになった。

オーバルスクールでのこと。「もっと速く走れると思うんですけど、タイム
が伸びないんですよね。」と悩む参加者の一人。元気はいいのだがターンイン
からクリッピングポイントまでが遅い傾向にあった。
「ならさ。だまされたと思ってストレートの途中で加速を止めてみない?つ
まりコーナーにブレーキングしないで入っていってしまう。だからストレート
の後半でスロットルを戻してイーブンスロットルの状態を作って、ステアリン
グをできるだけゆっくり切って入っていって、もし何も起きなかったら次にも
うほんの少し高い速度でイーブンスロットルにして。アンダーステアを感じた
ら、前に過重がかかるだけの力でトレイルブレーキングを使う。少しずつペー
スをあげて。だけど速く走るという意識はもっていないと駄目だよ。」
そう言って送り出した彼は、それまでとは違ったパターンで周回を続ける。
結果、ターンインのまさにその地点での速度は遅くなった。がターンインから
コーナーの頂点に向かう過程での速度の落ち方が少なくなった。タイムも安定
してきた。そりゃそうだ。ターンインの時の速度は遅くなっても、ずっと長い
時間がかかるアプローチの速度が底上げされたのだから。イーブンスロットル
の区間でクルマが前よりロールしているのが見て取れる。速度も高い。何より
も、脱出体制に入ってからの姿勢が安定している。
1周15秒に満たないコースだから劇的なタイムアップがあったわけではな
い。しかし、少なくとも先は見えたはずだ。なにしろ、必要以上のことをやら
なくなって、どうしても必要なことはキチンとやるようになったのだから。

ここに揚げた例だけではない。とにかくみんないろいろな悩みを抱えながら
走っている。その意味から言えば、ボクの最たる仕事は参加者の『速さに対す
る誤解』を解きほぐすことなのかも知れない。

息子との同乗走行を経験したその親父には、「スプリントには息子さん乗せ
て走りますか?」と聞いてみた。もちろん冗談だが、本人からは「実現できれ
ば、こんなすばらしい英才教育はないでしょう。(笑)」と答えが返ってきた。

速く走る方法はそれほど多くない。どんな人でもどんなクルマでも行き着く
べきところはほとんど同じだ。だから、そこに至る過程を楽しまないともった
いない。過程を楽しめば幅が広がり結果はおのずとついてくる。ドライビング
スクールとは、参加者一人一人の過程を見届ける場であると考えている。少な
くとも、ボクがいたころのJRはそんな思想がプンプンしていた。

さて、小学生の同乗走行ができると聞いて驚いたので、早速しのいサーキッ
トに問い合わせをした。担当者からの回答は、「まず親御さんの責任で無理の
ないペースで走ること。もちろんお子さんもヘルメットとグローブが必要です。
お子さんにもいい経験になると思いますから認めてますが、少しでも危険だな
と感じたら黒旗を提示してそれ以降の走行を遠慮していただきます。」という
ものだ。
自己責任をはっきりうたっているのはいい。「パパはね。君が危なくないよ
うに注意しながら、それでいて君がすばらしい体験をできるように頑張るから
ね。」なんて会話があればもっといい、と思う。
今後は、しのいサーキットが『週末サーキットパパ族』の罪滅ぼしの場にな
るかも知れない。

********************************************************** 奥付け ****
□ メールマガジン " Go − Circuits "
□ 有限会社ユイレーシングスクール発行
□ オリジナルサイト:http://www.avoc.com/
□ Copyright Yui Racing School Co.,Ltd.
□ Copyright 1986-2003 AVOC CORPORATION
本メールマガジン、オリジナルサイトの全部、または一部を複製
もしくは引用されたい方は、事前に発行人までご連絡ください。

宛先:発行人 publisher:mail@avoc.com
----------------------------------------------------------------------
下記のURLで購読中止・配信先変更の手続きが行えます。
◇ まぐまぐ: http://mag2.com
◇ メルマ:http://www.melma.com/
◇ Eマガジン:http://www.emaga.com/
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡ Presented by Yui Racing School≡