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≡≡ Yui Racing School presents ≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
Go − Circuit No.188 (05/17/04発行)
---------------------------------------------------- Taste of USA ----
●クルマを走らせるのは楽しい。速く走らせるのはもっと楽しい。●しかしク
ルマ安全に速く走らせることが難しいのも事実。走らせ方を理解していないと
楽しくもないし危険でさえある。●クルマをもっともっと楽しむために「クル
マさんとの正しいお付き合いの仕方」を学びませんか。●ユイレーシングスク
ールからの提案です。●公道では安全運転を。サーキットではそれなりに。
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1) YRSオーバルレース
2)YRSバラエティオブカリキュラム参加申し込み受付中
3)YRSドライビングスクールFUJI開校
4)YRSオーバルレース「Road&Ster杯」開催決定
5)トム ヨシダのドライビングチップス
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1)YRSオーバルレース
ユイレーシングスクールでは誰でも手軽に参加できるオーバルレースの開催
を始めます。
オーバルレースと言っても、国内にはツインリンクもてぎのスーパースピー
ドウエイとオートレース場のオーバルしか存在せず、どちらも手軽にというわ
けには行きません。そこでジムカーナ場のような広場にタイヤをおいたコース
を作って開催します。
レースは基本的にアメリカのUSACミヂェットレースと同じフォーマット
で進行しますが、ドライビングスクールの一環として開催するためYRSなら
ではの変更を行います。参加台数などの理由で再度変更があるかも知れません
が、以下のフォーマットで開催します。
開催日はウォーミングアップから始まります。クルマの状態を確認し暖気し
ます。予選は1台ずつ2周計測します。どちらか速いほうが予選タイムとなり
ます。クラス毎に予選タイムを元にヒートレースの組み分けを行います。
・ ヒート1:予選順に4台ずつが走ります。クラスに12台の参加があった
場合は3グループでヒート1を行うことになります。予選順(クラス予選1位
が前列イン側)に2列に並んでのローリングスタートです。
・ヒート2:ヒート1のフィニッシュ順をイン側とアウト側を入れ替えて同じ
グループ4台でヒート2を走ります。
・ヒート3:ヒート2のフィニッシュ順に並び同じグループ4台でヒート3を
走ります。
・ヒート4:ヒート3のフィニッシュ順をイン側とアウト側を入れ替えて同じ
グループ4台でヒート4を走ります。
・コンソレーション:各グループのヒート4での下位2台がグループを作って
6台でコンソレーションを走ります。
・セミファイナル:各グループのヒート4での上位2台がグループを作って6
台でセミファイナルを走ります。
※コンソレーション、セミファイナルのグリッドには4回のヒートレースの結
果の平均の上位から並びます。
・ファイナルヒート:セミファイナルの上位5台とコンソレーションの上位1
台がファイナルヒートに進みます。ファイナルヒートのフィニッシュ順を最終
結果とします。
・フォローアップ:ファイナルヒートに出走しなかったドライバーのみでレー
スを行います。
スーパースピードウエイのレースは速度域が高いだけに迫力はあります。し
かし、それだけに危険度も高く車両の安全装備も必要になります。ショートオ
ーバルは速度こそ遅いものの、1周に要する時間が短いだけ求められるテクニ
ックと駆け引きはスーパースピードウエイのそれを上回ります。アメリカでは
ショートオーバルレースが盛んな理由です。ショートオーバルをちゃんと走る
ことができれば、スーパースピードウエイも安全に速く走れます。
ユイレーシングスクールでは、「クルマを道具としてだれかと競争してみた
い」と考えている方、「走らせれば絶対に俺が速い」と思っている方にYRS
オーバルレースに参加してほしいと思っています。
ただオーバルレースで勝つためには速く走ることよりもクルマを正確に操る
ことが求められます。ぶっつけ本番でオーバルレースに参加しても面白くない
だけではなく危険も伴います。YRSオーバルレースの参加資格をYRSオー
バルスクール卒業生に限らせていただく理由です。
YRSオーバルを走られたことのある方ならおわかりでしょう。速く走ろう
と思ってもクルマが速く走れる状態になければ速くは走れない。オーバルレー
スになれば一発の速さよりライバルとの相対的な速さが必要になる。ライバル
より先に行くのには、自分が速ければいいのではなく自分がミスを犯さないこ
と。まさに、オーバルコースでは人間とクルマの融合が求められます。だから
オーバルレースは真のモータースポーツであり、究極のコンペティッションな
のです。
好きなクルマで競争してみたいと思っている方。YRSオーバルレースはう
ってつけの舞台です。ぜいオーバルスクールを受講してレースへの第一歩を踏
み出して下さい。そしていつの日かツインリンクもてぎのマイルアンドハーフ
で、みなさん自身が走るレースを実現させてみませんか?
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2)YRSバラエティオブカリキュラム参加申し込み受付中
>> 以下のYRSドライビングスクールの参加申し込みを受け付けています。
■5月21日YRSオーバルレースFUJIプラクティスデー
| まだ間に合います。
YRSオーバルレースプラクティスデーは6月から開催するオーバルレース
のコースを使い、オーバルコースの走り方とレースの走り方を練習するもので
す。参加者はリアルタイムアドバイスを聞きながら効率よくステップアップを
図ります。レースに参加する予定のない方も申し込むことができますが、原則
としてYRSオーバルの走行経験者に限ります。ドライバーの意識とテクニッ
クがバランスして初めて速く走れるオーバルコース。FUJIのコースはアウトイ
ンアウトのラインで究極のターンインを練習することができます。
・YRSオーバルレース富士開催案内
http://www.avoc.com/2school/2yos/yorf_guide.htm
・YRSオーバルレースビデオ
http://www.avoc.com/7info/7img/oval_demo2.mov
※19日以降に申し込まれる方は参加費を当日お支払い下さい。申込に際して
は、参加費振込み日を21日としておいて下さい。
■5月22日YRSオーバルスクール富士
今回は定員いっぱいの申込となり受付を終了しています。次回は7月3日の
開催です。
・YRSオーバルスクール富士開催案内
http://www.avoc.com/2school/2yos/yosf_guide.htm
・オーバルコースの走り方ビデオ
http://www.avoc.com/3media/3auidio_video/top_video.htm
■5月25日YRSオーバルスクール浅間台
運転の上達に欠かせないトランジッションを習得するのにうってつけなのが
YRSオーバルスクールです。サーキットを走ったことのない方でも参加する
ことができます。楽しみながらクルマとの一体感が体験でき、クルマの限界を
引き出すコツを習得できます。リアルタイムのアドバイスを受けることにより
ブレーキングからターンイン、ターンインからコーナリングへの理想的なトラ
ンジッションを体験することができます。
・YRSオーバルスクール浅間台開催案内
http://www.avoc.com/2school/2yos/yosa_guide.htm
・YRSオーバル浅間台歴代ラップタイム
http://www.avoc.com/4circuit/4circuit_record/oval_yosa/frame_yosa.htm
■6月10日筑波サーキットドライビングスクール中級クラス
| 中級クラスに変更になりました
4月22日に開催して好評だった中級クラスを開催します。カリキュラムは
入門クラスと変わりませんが、午前中の定常円は32x70mの大きなものを
1個だけ使います。ウォーミングアップが終わったら同じような速さのクルマ
と追いかけっこを行います。コース1000では走行時間の全てをラッピングにあ
てます。前回は参加した方のほとんどが「もうお腹いっぱい」といっていまし
たが、それでもかなりの方が自己ベストを更新しました。テーマを持って周回
を重ねた成果です。中級クラスへの参加は原則的に過去に筑波ドライビングス
クールに参加された方(2001〜2004年のどの筑波ドライビングスクー
ルでもかまいません)とします。クラス分けはYRSのデータに基づいて行い
ますので同程度のラップタイムのクルマと走ることができます。
・筑波サーキットドライビングスクール案内
http://www.avoc.com/2school/2tds/tds_guide.htm
・筑波サーキットコース1000歴代ラップタイム
http://www.avoc.com/4circuit/4circuit_record/t1k/01frame_best.htm
■6月16日YRSドライビングワークショップ成田
クルマの運転を総合的に理解してみたいというかたに最適のプログラムです。
真剣にクルマの運転と向き合ってみたいという方にお勧めします。シニアイン
ストラクターの40年の運転経験に基づく知識と運転のコツを、ペダルの踏み
方からドライビングポジションの取り方、ステアリングホイールの回し方、ト
ランジッションの作り方にいたるまで余すところなくお伝えします。
通常のドライビングスクールでは時間の制約から個人個人の疑問に十分お答
えできません。YDWNはユイレーシングスクールの原点です。受講された方
に『運転の達人』になっていただくことを目的に開催しています。
少人数制なのでインストラクターとの会話の時間も豊富にあり、またコース
では1台ずつ走行しますのでご自分のペースで走ることができます。全員が受
信機をつけての走行になりますから、リアルタイムアドバイスを聞きながらご
自分の走りを理想に近づけるための補正を行うことができます。
・YRSドライビングワークショップ成田開催案内
http://www.avoc.com/2school/2ydw/ydwn_guide.htm
・YRSドライビングワークショップ成田レポート
http://www.avoc.com/2school/2report/report_ydwn/ydwn_frame.htm
・YRS成田モーターランド歴代ラップタイム
http://www.avoc.com/4circuit/4circuit_record/yrs_narita/frame_narita.h
tm
・成田モーターランドコースレイアウト
http://www.avoc.com/2school/2ydw/layout_narita.htm
■6月18日FUJIスピードウエイショートコース練習会
| みんなで走りましょう > 走りましょう > 走りましょう
4月22日にオープンしたFUJIスピードウエイショートコース。全長は短い
もののコース幅は広く、しかもアップダウンや縦のブラインドコーナーがある
ドライバーズコースです。YRSではどんなクルマでもどんなコースでも限界
近くで走れるようになることをカリキュラムの骨子にしてきました。今回は簡
単な座学を行いますが、基本的に参加者自身が未知のコースを自分なりに攻略
することをテーマとします。1日中走りっぱなしの練習です。原則として過去
にYRSのいずれかのドライビングスクールを受講された方を対象とします。
またYRSのデータベースにある筑波サーキットコース1000の個人別ベストラ
ップを元にクラス分けを行いますので、経験とクルマの性能に即したグループ
での走行が可能です。
・YRSオープンプラクティスFUJI開催亜案内
http://www.avoc.com/2school/2yds/yrs_fisco_lap.htm
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3)YRSドライビングスクールFUJI開校
いよいよ多摩川以西でのユイレーシングスクールが始まります。舞台は全長
は短めですがアップダウンありブラインドコーナーありのFUJIスピードウエイ
ショートコース。カリキュラムは筑波ドライビングスクールと同様に午前中を
ジムカーナ場での定常円練習に使い、午後からのショートコースでは高速から
のブレーキングが要求されるコースに合わせてブレーキング練習。逆バンク気
味のコーナーを攻略するためのリードフォローを行い、最後にラッピングを行
います。ご期待下さい。
8月 2日(月) YRSドライビングスクールFUJI
9月15日(水) YRSドライビングスクールFUJI
10月18日(月) YRSドライビングスクールFUJI
・YRSドライビングスクールFUJI開催案内
http://www.avoc.com/2school/2yds/yrs_fisco.htm
またドライビングスクールFUJI開催日の午前中にはYRS卒業生を対象
とした走行練習を行います。午後にはジムカーナ場の44x104mオーバル
を使った、YRSオーバルレース参加を視野に入れたオーバルスクールを開催
します。こちらはどなたでも参加することができます。
・FUJIスピードウエイショートコース練習走行会案内
http://www.avoc.com/2school/2yds/yrs_fisco_lap.htm
・YRSオーバルスクールFISCO開催案内
http://www.avoc.com/2school/2yos/yosi_guide.htm
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4)YRSオーバルレース「Road&Ster杯」開催決定
YRSでは下記の日程でYRSオーバルレースFUJIを開催しますが、予
定しているロードスタークラスにタイトルがつくことが決定しました。雑誌
『Road&Ster杯』オーバルレースです。オーバルレースの単独クラス
として『Road&Ster杯』を賭けて戦います。YRSオーバルスクール
卒業生でロードスター乗りの方はふるってご参加下さい。まだオーバルスクー
ルを受講されていない方は、この機会に浅間台、富士のYRSオーバルスクー
ルを受講しレースに参加して下さい。8月からはFUJIでもオーバルスクー
ルを開催する予定です。
6月13日(日) Oval Race 01
8月 7日(土) Oval Race 02
10月 3日(日) Oval Race 03
12月12日(日) Oval Race 04
・YRSオーバルレース規則書
http://www.avoc.com/2school/2yos/yorf_guide.htm
尚、5月21日にはレースに向けたYRSオーバルレースプラクティスデー
を開催。安全にオーバルレースを走る方法の説明の他、変則ラインでの走り方
とローリングスタートの練習を行います。またプラクティスデーとYRSオー
バルレース第1戦の模様も6月26日発売の『Road&Ster』誌に掲載
されます。
YRSでは他の車両も台数がそろえばワンメイクレースとして開催したい意
向を持っています。来年にはいくつかの車種別オーバルレースが開催されるこ
とを願っています。もちろん参加されるにあたってはどんな車両でもかまいま
せんが、今年から来年の予定を立てるためにYRSオーバルスクール卒業生の
ご意見を聞かせて下さい。オーバルレースに参加してみようという方は下記の
アドレス宛てに、件名に「オーバルレース」と書き、本文に参加予定車種を記
入の上で送信して下さい。よろしくお願いします。
・メールアドレス
mail@avoc.com
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5)トム ヨシダのドライビングチップス
>>> 前回からの続き
つまるところ、レベル4で走っていてもレベル2で走っていても速さ自体
は同じようなものになった。そう、いつの日か、自分の意識は明確であるのに
も関わらず、操作の結果である速さに差がなくなった。それがいつのことだっ
たかは明確な記憶はないが。
しかし、その昔は違った。レベル4では自分の思いとは裏腹に客観的に見
て遅い時期があった。レベル3では、メリハリの意味を勘違いし余裕を持ちす
ぎたことが速く走ることを妨げた。レベル2では自分がより高い次元の走りを
目指していないことを、クルマをいたわっているからだと自分自身に言い逃れ
をした。同じ意識下のそれぞれのレベルにしても、日によって速さとその速さ
から受けるストレスは違った。乗るクルマによっては期待(意識)通りの結果
(速さ)を引っ張り出せない時もあった。
それが、クルマのバランスを絶対に崩さないで走るという大前提に立って、
運転というあやふやな概念と、絶対に危ないことはしてはならないというボト
ムラインと、とにかく『粋』に走りたいという走り方に対する思想のようなも
のに長い時間相対することで、自分の中の様々な意識が結果的に収束したのだ、
と今になれば思う。
振り替えれば、そこに至る過程で自分の意識を収束に向かわせるような様々
な体験をしたことを思い出す。実にいろいろなことがあった。それこそ文才が
あれば何冊かの本が書けるほどだ。
体験した出来事の中にはクルマの運転の、そしてモータースポーツの、楽し
くて、わくわくして、一人にんまりしたようなポジティブなものが多かった。
「ユーキャンフォローミー(ラインを教えてあげるからついてきていいヨ)」
とのたまう鼻持ちならないドライバーをブラインドコーナーへのブレーキング
で抜く。明らかに身体能力の優る相手を、人間能力拡大器であるクルマの『運
転』で打ち負かす。全開では進入できなかった5速のコーナーにスロットルを
戻さずに入れるようになった。
反面、クルマの速さと人間の能力を超えた世界で競うことから生じた数々の
暗い体験もした。レース中の事故で、さっきまで「夜は何を食べに行こうか?」
と話していた友が焼死する。本来、人間の幸せのために生まれてきたはずのク
ルマが人間にしうちをするネガティブな側面。
アメリカのモータースポーツ統括団体や主催者からは一般社会におけるモー
タースポーツのあるべき姿を教え込まれた。厳しさがなければ楽しくないスポ
ーツであることを教わった。
クルマ以外のことは忘れていることが多いのに、クルマにまつわる体験は、
それがポジティブであろうとネガティブであろうと鮮明に記憶している。その
中で、いつも最も自分の運転に影響を与えたものはどれなのかを考えている。
導き出される結果は日によって異なるが、どれも現在の安全と速さという相反
するものに折り合いをつけるきっかけになった貴重な経験ではある。
アメリカにストックカーレースというモータースポーツがある。ごく一部の
例外を除いて楕円形のオーバルコースで速さを競うものだ。代表的な統括団体
にNASCARがある。日本にもエキジビジョンレースが来たことがあるから
名前を聞かれた方もいるだろう。そのNASCARの階層的構造は世界一優れ
ている。底辺にぶつけあいのレースがあるかと思えば、頂点にはメジャーリー
グの視聴率をもしのぐNEXTELカップ(旧ウィンストンカップ)というレ
ースがある。シリーズチャンピオンの年間獲得賞金5億円をゆうに超えるメジ
ャースポーツだ。
まだ日本に住んでいてアメリカに取材に通っていた1978年。今はなきオ
ンタリオモータースピードウエイ。ロサンゼルスのダウンタウンから東へ小1
時間。インディアナポリスモータースピードウエイを模した、コーナーのRは
やや大きいが1周4Kmの明確な4つのターンがあるレキュタンギュラーオー
バル。アメリカのモータースポーツと言えば、間瀬明さんとジュー本田さんの
写真でインディ500やカンナムの雰囲気が雑誌の紙面を飾るだけの時代。
日本から取材申請をしていったにも関わらずクレデンシャルカード(取材許
可証)がおりない。申請書のコピーを見せてスッタモンダ。なんとか手にして
プレスルームに。今度はセキュリティに「ユーアーノットサポーズドツービヒ
ヤー(君はここに入ってはいけない)」と言われてまたひと悶着。アメリカの
レースにあっても参加するのは白人ばかりの時代。東洋人はモータースポーツ
のインフィールドには入れないヨ、ということかと憮然としながらも食い下が
る。取材以前に疲れることが多いが、レースそのものは見るべき、学ぶべきこ
とが実に多い。この日はアメリカンオーバルレースの面白さを知っただけでは
なく、ドライバーとして目指すべき方向を垣間見ることができた。
年間31戦。12月と1月がオフシーズンだから、10ヶ月でシリーズを戦
う。月に3レース。しかもレース距離がどれも長い。デイトナ500のことは
雑誌に取り上げられることもあったから知られているが、オンタリオモーター
スピードウエイで行われたLAタイムズ500も500マイル、800Kmレ
ース。コースサイドでの表彰式が終わりドライバーがプレスルームにやってく
る。優勝はボビー・アリソン。3時間40分にわたるレースを見ていただけに、
さぞかしドライバーは疲労困憊していると想像していた。しかし、ドライバー
はゲータレードのボトルを手にはしているものの、額にうっすらと汗をにじま
せている程度。淡々と、飄々としてインタビューに応える。何かイメージと違
う。800Kmを限界で走り続けることさえ大変なのに、一歩間違えばコンク
リートウォールの餌食になるが勝つためにはそれでもスロットルを開けなけれ
ばならないという重圧を3時間以上も耐えてきたのに、その上40台ものライ
バルと精神的な駆け引きを続けてきたというのに、だ。もっと疲れきった顔で
登場してくれなければそれまでの期待と食い違ってしまう。いったいどんな肉
体をしているのか?どんな精神構造なのか?あれこれ考えるがイメージできな
い。日本とヨーロッパのレースは十分にみてきているのに、残念ながら当時の
自分の中にはNASCARストックカーの頂点を制したドライバーを人間とし
て表現する語彙がなかった。
サイドバイサイドのレースはすごかった。一触即発。あんな状態が延々と続
く中で平静を保つことができるのが信じられなかった。ドラフトからはじき出
されたクルマがあっという間に後方におき去られる理由がわからなかった。心
のどこかで「まだOHVエンジンなんだ。」と思っていたのに、7000回転
回るそのエキゾーストノートは紛れもなくレーシングエンジンのそれだった。
寡黙でありながら毅然としているNASCARのオフィシャル。フラッグの降
り方もかっこいい。ウエスタンブーツを履いてストックカーを走らせるドライ
バー。パドックだというのに葉巻をくゆらすドライバー。はては煙草をくわえ
ながら胸までしかないバケットシートに座りグローブをつけているドライバー。
予選の間に30分でエンジンを載せ変えてしまうメカニック。インカムをつけ
てメカニックに指示を出すクルーチーフ。フロント内側のタイヤがポジティブ
でアウト側がネガティブキャンバーのオーバルコースを速く走るために作られ
た1.6トンのマシン。
始めてみるストックカーレースの印象は強烈だった。率直に、これは大変な
世界だと思った。ストックカーレースという社会の大きさと躍動感を感じた。
その中心にいて、平然と800Kmの競争をこなすドライバー。興奮するわけ
でもなく運転手としても役割をとんでもなく高い次元でやってのけるドライバ
ー。すぐ横を走るライバルのこと尊敬しながらも自分の強さを追いかけるドラ
イバー。そんなドライバーが40人も集まって頂点を目指す。
『職人』。モーテルに帰りバドワイザーを飲みながら思った。おそらく、い
や間違いなくウィンストンカップのドライバーは運転の職人なのだと。それが
最も適した表現のように思えた。全てにおいて特殊性のあるモータースポーツ
が日常の中にある。酔うほどに、自分もかくなりたいという思いが強くなって
いった。
・トムヨシダのスクラップブック目次
http://www.avoc.com/3media/3scrapbook/frame_scrapbook.htm
********************************************************** 奥付け ****
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