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         Go−Circuit   No.277(08/14/09発行)

---------------------------------------------------- Taste of USA ----
●クルマを走らせるのは楽しい。思い通りに走らせるのはもっと楽しい●しか
しクルマがなかなか思うように動かない時がある●クルマの運転は簡単そうで
難しい●が、難しいことに感謝しなければならいない●難しいからこそうまく
できた時の喜びは大きい●うまくなろうとする過程がまた楽しい●うまくなろ
うとするから工夫する●今の時代、クルマを使い倒さなければもったいない。
||    Proud of Our Tenth Anniversary     ||
》》》Be Smarter, Drive Sater, and Drive Faster! You can do it!!《《《
         【  Yui Racing School Offers Serious Entertainment  】
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|1) YRSメールマガジンバックナンバーの扱いについて
|2) YRSサイトアップデート
|3) タイヤの回る音を聞きながら  その7
|4) 参加申し込み受付中 & YRSスケジュール
|5) コーナーの向こうに ‐ 今は昔 1960(完)           トム ヨシダ

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|1) YRSメールマガジンバックナンバーの扱いについて
メールマガジンバックナンバーの扱いについて
 ユイレーシングスクールではメールマガジン発行10周年を迎え、バックナ
ンバーの掲載をいかのように改めます。
・メールマガジン配信サービスのまぐまぐを利用しています。今まで創刊号か
ら全てのバックナンバーを公開してきましたが、9月1日以降は創刊号のみの
掲載となります。
・バックナンバーはYRSサイトのメールマガジンの頁に発行年の終わりにま
とめて掲載します。
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・YRSメールマガジン「Go Circuit」購読申込みフォーム
http://www.mag2.com/m/0000016855.html
・YRSメールマガジンバックナンバー
http://www.avoc.com/5media/mm/mailmagazine.php?num=015&year=1999

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いては、メールマガジンの発行人に対してもいっさい公開されていません。
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わせいただけるようお願いします。 

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|2) YRSサイトアップデート

・YRS流ブレーキング
http://www.avoc.com/3result/pt09/page.php?p=howto_brake
・YRSフォトギャラリー(YRSエンデューロ第3戦、表彰式)
http://www.avoc.com/9misc/info/page.php?p=photogallery

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|3) タイヤの回る音を聞きながら  その7

 ユイレーシングスクールは日本で唯一、モータースポーツ競技としてのショ
ートオーバルレースを開催している。YRSオーバルスクールを卒業した人た
ちのステップアッププログラムとしての位置づけだ。
 初開催から6年が経ち、今年20Rx140mのYRSオーバルFSWロン
グで開催するようになるとレース内容はますます充実。サイドバイサイドはも
ちろんのこと、ドアツードア、テールツーノーズは当たり前、スリーワイドや
時にはフォーワイドの接戦が繰り広げられている。
 オーバルレース常連の中にはYRSエンデューロやスプリント、あるいはJ
AFのレースに参加している人もいるが、YRSオーバルレースが競り合いと
しては一番おもしろい、と言う人もいるくらいだ。
 せっかくの見ておもしろい、走って楽しいレースなのでメディアに取り上げ
てくれるよう依頼はしているのだが、いつも読者にとって価値があるかないか、
読者が興味を示すかどうかなんて不毛の議論に終始し、未だに実現していない。
 「んなもん。やってみなけりゃわからないではないか。」

 それはともかく、YRSオーバルレースがここまで来るのにはいろいろと紆
余曲折があった。
 YRS発足当初からロードレースの次にはオーバルレースをやろうという構
想はあったものの、日本にはショートオーバルがない。筑波サーキットでドラ
イビングスクールの実績を積み、隣接するオートレース選手を育成するための
500mオーバルの借用を打診してみたものの、公益性がないという理由で実
現しなかった。何を持ってして公益性と言うのかわからないが。
 少しでもバンクのついたコースでやるのが理想であったけれども、妥協しな
がら実現する以外に手の打ちようがなかった。

 もともとユイレーシングスクールがスクールレースを開催するのは、レース
に出ることなど想像もしていない運転が好きな人に、レースという自分と自分
の運転テクニックを見つめ直す絶好の機会を味わってほしいからだ。レースと
言ってもユイレーシングスクールのスクールレースで終わりなのではなく、J
AFのレースであったり海外のレースも含めてという意味だ。YRSスクール
レースは、だから、運転が好きな人と本格的なレースをつなぐインターフェイ
スとしての価値を高めることもYRSの目標の一つだ。
  
  まずYRSスクールレースに参加することによってレースという環境に慣れ
てもらう。同時にスクールレースに参加している人にできる限りのアドバイス
を行う。レースに対する考え方や上位を狙うための秘策といったものだ。初の
YRSエンデューロに参加したロードスターが137周でガス欠になったのに、
今や同じロードスターが165周を消化する。どうしたら速さを損なわずに遠
くまで走れるかをアドバイスした結果だ。
  これはひとつの例にすぎないが、そうこうしているうちにスクールレースの
レベルが上がる。YRSのスクールレースはライセンスも必要ない垣根の低い
レースではあるが、競争という面からとらえた場合に決して本格的なレースと
比べて見劣りするものではない。それでなければ開催する意味がないし、ドラ
イビングスクールを頂点とした活動に専念すべきだろう。
  具体的な『競り合い』の方法は異なるが、エンデューロ、スプリントともそ
こで洗礼を受けた人は他のレースに参加しても強いことは事実が証明している。
  オーバルレースでも同じような流れを作ることを目指しているのだが、オー
バルレースに関しては国内にアマチュアレベルの比較対照がない。レースを主
催している人に、オーバルレースをやりませんか?お手伝いしますよ、と声を
かけても反応は皆無。YRS一押しのモータースポーツではあるが、今までの
ところ独自の道を行くしかなかった。

 もてぎにあるダートトラックでスクールを開催したこともあるが、これは土
質が悪く本来のオーバルテクニックを学ぶには適していなかった。単なるお遊
びでしかなかった。
 もてぎのスーパースピードウエイでのレースができないか。その可能性を探
るために南コースを使ってYRSオーバルレースのデモンストレーションレー
スを何回かやったが、最終的にアマチュアがスーパースピードウエイを全開で
走るのは危ないという理由で実現することはなかった。
 余談になるが、もてぎのオープン前にストックカーエクスペリエンスの担当
者にオーバルコースの走り方を教えた立場からすると、もてぎのスーパースピ
ードウエイで量産車のレースをやるのは全く危なくはないと断言できる。問題
があるとすればやり方だけだろう。実際、もてぎの業務用に使っている全くノ
ーマルのホンダロゴで何度も全開で走ったことがあるが、なんの問題もなくフ
ラットアウトでターン1に進入することもできた。
 結局、日本にアメリカ流の垣根の低いモータースポーツを根付かせたいとい
う初代社長小林修さんの熱意は費えた。スーパースピードウエイを使ったアメ
リカンモータースポーツの導入に協力してほしいと依頼された時にダートトラ
ックの建設を条件に引き受けたのだが、今やどちらも本来の使われ方をされて
いない。

 結局、最初にオーバルレースを始めたFSWでのレースを進化させていく以
外にYRSオーバルレースを成長させる方法は見つからなかった。
  本当ならば、周囲の土手が観客席になりそうな浅間台スポーツランドでやり
たかったのだが、いかんせん敷地の幅が狭すぎた。レースができるほどのコー
ス幅をとるとコーナーの直径が22mぐらいになってしまう。必然的にパワー
のあるクルマとそうでないクルマの差が出やすくレースには不向きで、諦める
しかなかった。

 FSWが改修されて初めてジムカーナ場を見た時、ここならオーバルレース
ができると確信した。それは、周囲4方向がガードレールで囲まれていたから
だ。
 オーバルレースを安全かつ円滑に開催するために重要なことは、レース中に
走行ラインが交錯しないような環境をコースデザインとドライバーの走り方の
両面で用意することだ。
 ドライバーにはオーバルスクールを通じて同じ方向にコーナリングするオー
バルコースの特性を学んでもらう。レースに勝つためには瞬間の速さよりも流
れの中の速さが大切なことだと意識を変えてもらうことで対処した。今や強引
な走り方をするドライバーは常連にはいない。その時にがんばってもあとのこ
とを無視していれば必ずつけが回ってくる。頑張っても、頑張っても置いてい
かれることを経験しながらオーバルレースの走り方に馴染んでいった。
 FSWジムカーナ場が適していたのは、アウト側にガードレールがあるので
それ以上外に膨らむことができないからだ。仮に規制がないとすると、アウト
側のクルマは大きな回転半径のコーナリングをすることができる。速く走りた
いドライバーは当然大きな曲率のコーナリングをする。結果、コーナリング速
度も上がる。しかしこれはオーバルレースにとっては危険な状況になる。
 イン側を走るクルマは楕円形のラインを通る。アウト側のクルマははらむほ
どに真円に近いラインを通ることになる。楕円形のラインを2列縦隊で走って
いる分にはイン側のクルマもアウト側のクルマもそのエネルギーの方向がほぼ
同じであるが、走るラインが異なればエネルギーの方向も変わる。つまりライ
ンが交錯することになるし、接戦の中で慣性力の方向が異なるクルマ同士が走
ることになる。万が一の時に避け切れなくなる可能性がある。こういう状況を
そのままにしてオーバルレースは開催しないほうがいい。
 FSWジムカーナ場のYRSオーバルは、22Rx104m。直径44mの
半円を60mの直線で結んだものだ。ジムカーナ場自体が80x120mの長
方形だったので、安全を見越したコース幅18mを確保した結果の数字だ。
 最終的には、当初8周のレースでフラフラになっていたドライバーが50周
のレースを鼻歌まじりで走り切るまでになった。内容もジムカーナ場で量産車
を使って行うオーバルレースとしてはほぼ完成形と見ることができる。
 しかしオーバルレース本来の視点から見ると、先に述べたようにイン側とア
ウト側のラインが交錯しがちだった。もう少し直線が長いと、さらにエネルギ
ーの方向を同じにすることができるのだが、ジムカーナ場の形状からしていた
しかたないことだった。半径を小さくして直線を長くとると、直線部分のコー
ス幅が広くなるからますますアウト側のクルマのラインが真円に近づいてしま
うからだ。
 最終的にP7を使えることになり、ようやく本来のオーバルコースらしいレ
イアウトを実現することができた。半径をジムカーナ場より2m小さくし、さ
らにコース幅も2m狭くした。結果、ジムカーナ場のそれより加速区間が長い
オーバルコースを設定することがでえきた。
 コーナリング後半に加速することは、タイヤのグリップをコーナリングフォ
ースとトラクションに振り分ける練習にはうってつけだ。減速をしながらター
ンインするのも同様に練習になる。スクールレースとしての価値がここにある。

 最も単純で最もドライバーの優劣がはっきりするいかにもアメリカらしい自
動車競争の形態をもてぎでは実現することができなかったが、YRSオーバル
FSWロングではそれが可能になった。もちろん、これからもその内容は進化
するはずだ。
 YRSオーバルレースの常連でもまだ走りに波がある。いい時はいいのだが、
リズムが崩れるとヘロヘロになることがある。もし、レース開催日中いい時の
走りを続けることができれば、本場アメリカのハーフマイルオーバルに挑戦し
てもすぐにいい結果が出せるレベルにはある。17度バンクのメサマリンだろ
うが、6度バンクのアーウィンデールであろうと難しいことではない。

 国内にそのような環境を用意することこそ、小林修さんが望んでいたことな
のだが。

【参考】
・ショートトラックレーシングのすすめ(1999年5月)
http://www.avoc.com/5media/scrap/scrapbook.php?ca=opinion&article=9905

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|4)  参加申し込み受付中 & YRSスケジュール
     現在、以下のカリキュラムの参加申し込みを受け付けています。
|   ◆ ◇ ◆  クルマの運転の楽しさを味わってみませんか?  ◆ ◇ ◆
| ※申し込み期日を過ぎても定員に達しない場合は引き続き受け付けを行いま
| す。枠がある場合は当日受け付けも行いますが電話でご連絡下さい。開催日
| 前3日を過ぎてからの申し込みは受講料を当日の受け付けでお支払い下さい。
| 振り込まれた方は振り込んだことを証明するものを受付で提示して下さい。
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|■ 8月29日(土) YRSエンジョイドライビング
  10周年を記念して始めたYRSエンジョイドライビングも今回で3回目。
4つのコースを設定し1日で全てを体験しながらクルマの運転に慣れることが
できるプログラムです。過去2回、参加者が1日で走った距離は50キロ以上。
4種類のコースをかなりの距離テーマを持って走ることにより「自分がやりた
いこと」を実行する時に「クルマが求める操作」がどういうものであるか身体
で覚えることができます。
  免許を取り立ての方からレースに参加しているベテランまでクルマの運転に
興味のある方はぜひ参加してみて下さい。16歳以上であれば運転免許がなく
ても保護者と同乗することを条件に参加を受け付けます。
  YRSエンジョイドライビングで使用するコースは以下の通りです。
・半径22mの真円定常円コース
・時速100キロからの急制動が可能なブレーキングコース
・20m間隔6本のスラロームコース
・44x104mのオーバル定常円コース

  YRSエンジョイドライビングへの参加を考えられている方は、真円コース、
ブレーキングの走行データを掲載した次の頁をごらん下さい。

・YRS真円コースを走る
http://www.avoc.com/3result/pt09/page.php?p=howto_circle
・YRS流ブレーキング
http://www.avoc.com/3result/pt09/page.php?p=howto_brake

  ふだんお乗りのクルマなら、ワンボックスカーでも軽自動車でもSUVでも
参加することができます。ヘルメット、グローブの着用は必要ありませんが、
走行時には長袖長ズボンを着て下さい。  

・YRSエンジョイドライビング開催案内&申込みフォーム
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=yed#0

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|■ 9月5日(土) YRSオーバルスクールFSWロング
 今回のYRSオーバルスクールFSWロングは、一部カリキュラムを変更し
て行います。詳しくは当日の座学で説明しますが、概要は以下の通りです。
(使うコースは全て40x140のYRSオーバルFSWです)。
1)イーブンスロットル練習 インベタ
2)トレイルブレーキング練習インベタ
3)ベンチマークセット
4)トレイルブレーキング計測 インベタ
5)イーブンスロットル練習 リードフォロー
6)イーブンスロットル計測
7)トレイルブレーキング リードフォロー
8)トレイルブレーキング計測
※路面の状況によってはカリキュラムを変更する場合があります。

  3)のベンチマークセットは受講者のクルマをインストラクターが運転して
そのクルマの目標タイムを設定するものです。
 5)〜8)はYRSオーバルFSWロングをアウトインアウトのラインで走
行します。

  YRSオーバルスクールFSWロングへの参加を考えられている方は、参考
のために以下の頁をごらん下さい。

・YRSオーバルFSWロングを走る
http://www.avoc.com/3result/pt09/howto_yof.shtml

  むずむずするようなコーナリングを味わってみたい方。本当に速いコーナリ
ングがどのようなものか体験してみたい方はぜひ参加してみて下さい。

・YRSオーバルスクールFSWロング開催案内&申込みフォーム
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=os&p=osf#0

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|■ 9月10日(木) YRSドライビングスクールFSW
| サーキットを安全に速く走ってみませんか?
| コース1000のラップタイムは安定していますか?
| クルマの性能を100%引き出してみませんか?

  ユイレーシングスクールでは、富士スピードウエイショートコースを走るた
めの「あんちょこ」を用意しました。受講される方に受付けでお渡しします。
座学では「あんちょこ」を元に車を動かす原理とショートコースの走り方を説
明します。座学終了後は走行時間までドライビングポジションの確認、質疑応
答の時間とします。昼食が終わったらコースを歩き走行ラインとクルマの姿勢
の作り方を説明します。
  午後からの走行ではリードフォロー、同情走行を行い、最後に単独で走りま
すから自然な流れでFSWショートコースの走り方を吸収することができます。
  サーキットを走る時、速く走ることが目的でも楽しみに走ることが目的でも、
やっていいこととやってはいけないことがあります。ユイレーシングスクール
ではクルマを走らせる時に必要な考え方を富士スピードウエイショートコース
をテーマにお教えします。

・YRSドライビングスクールFSW開催案内&申込みフォーム
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=fds

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|■ 9月19日(土) YRSオーバルレースFSW
・YRSオーバルレース第4戦
http://www.avoc.com/2race/guide.php?c=sr&p=yor

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|■ 9月20日(日) YRSエンジョイドライビング
・YRSエンジョイドライビング開催案内&申込みフォーム
http://www.avoc.com/1school/guide.php?c=ds&p=yed#0

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|■ 9月25日(金) エンジンドライビングレッスン
  エンジンドライビングレッスンの運営はユイレーシングスクールが行ってい
ますが、参加申込みはエンジン編集部が担当しますのでそちらにお問い合わせ
下さい。
  エンジン編集部:03−3267−9681

・エンジン 公式ホームページ
http://engine-online.jp/top.html

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|■ 9月30日(水) YRSドライビングワークショップ筑波
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|■ 10月3日(土) YRSエンデューロ ファイナル
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|■ 10月3日(土) YRSスプリント ファイナル

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|5) コーナーの向こうに ‐ 今は昔 1960(完)           トム ヨシダ

 そこかしこに色とりどりの機体が並んでいた。大きなものから小さなものま
で。スタント機もあった。きれいに塗られたいろいろな色の塗装が緑の芝生に
映えていた。
「こんなにたくさんの飛行機がる」少年にとってはまぶしい光景だった。
 遠くに芝生がままあるく切り取られたようなところがあった。「何?」と聞
くと「模型飛行機の飛行場だよ」と圭ちゃんが答えてくれた。圭ちゃんは何で
も知っていた。頼もしかった。
 「ふうん」と答えながらも少年は妙な気持ちになっていた。
 ライトプレーンのころは良かった。音もしない機体を飛ばすことにためらい
はなかった。ほんの少しの広ささえあれば、ゴムを巻かずに滑空させるだけで
も楽しかった。Uコンを始めてから事情が変わった。うかつなことに、否、そ
れだけ夢中になっていたからなのか、Uコンは一人で飛ばすことができないこ
とを忘れていた。ライトプレーンのように自分で作って自分で飛ばすことがで
きなかった。飛ばすのには誰かの手助けが必要だった。
 その上、飛ばすところを探すのも大変だった。伊藤中学校は飛ばしに行くと、
学校が休みの日なのに用務員さんが走ってきて追い出されるようになった。高
校に通う解良さんはバイクに機体を積んで多摩川まで飛ばしに行っていたよう
だが、移動の手段を持たない少年にはできないことだった。
 もっと自由に羽ばたきたい。そんな気持ちで始めたUコンなのに、かえって
思い通りにいかなくなってしまった。
 なのに、目の前には模型飛行機用の飛行場がある。少年はそこがアメリカ軍
の基地の中であることも忘れ、ただただうらやましかった。
 
 飛行場の真ん中にはてっぺんにU字型をした腕を支える台がついている棒が
立っていた。みんなそこに手首をかけてUコンを飛ばしていた。少年はあの台
さえあれば、自分にもうまくUコンを飛ばせるかも知れないと思った。スピー
ド機で競技を行う時は台に腕をかけて飛ばさないと記録が無効になる、という
ことを知ったのはずっと後のことだった。
 スピード機がピーィーンという音を立てながら飛んでいた。少年が持ってい
たフジ09エンジンや解良さんが使っていたエンヤ15のエンジンとは明らか
に違う音色だった。きれいな澄んだ音だった。少年のそれまでの世界にはなか
った胸がドキドキするような音だった。
  ピーィーィ、プッ。エンジンが止まりスピード機が着陸してくる。スピード
機に脚はついていなかった。細長いお鍋の底のようなものが機体と一体になっ
ていて、そこをこするながら着陸する。いわば胴体着陸。
  そう言えば離陸も少年が初めて目にするものだった。圭ちゃんや解良さんの
飛行機にはちゃんと主脚と尾輪がついていて、エンジンをかけた後で手を離す
とよたよたと滑走しながら空中に浮いていくのが常だった。しかし一切の車輪
のないスピード機は少年が想像もできないような仕組みで飛び立っていった。
  模型飛行機用の大き目の中空タイヤがついた台車があった。スピード機のエ
ンジンをかける時もこの台車に乗せていた。エンジンがかかると機体を持って
いた人が手を離し機体が離陸するまでは同じだったのだが、まず離陸の速度が
全然違った。手を離れた機体はとんでもない速度で離陸を始めたのだ。そして、
すごく浅い角度で離陸した機体からその台車が外れた。機体は元の鉛筆のよう
なかっこうに戻ってすごい速度で回り始めた。初めて見る離陸の方法に少年は
興奮した。「すごい、すごい」。
  目が回るほど速い速度で円軌道を飛ぶ飛行機を目で追いかけていると、何か
アナウンスがあった。人々がどよめく。「スピード記録が出たらしい」と圭ち
ゃんが言った。少年には信じがたいスピードだった。
  実際。実物の飛行機も、大きな格納庫も、ハイカラなコーラ売りも、どこま
でも続くような広い芝生も少年は初めて目の当たりにした。それはもう、ワク
ワクドキドキの連続だった。そんな中でも少年の目を釘付けにしたのがスピー
ド機と呼ばれるUコン飛行機だった。
  速さを追求した結果なのだが、その流線型の形に少年の胸は高鳴った。しか
も、胴体の片側だけにしか主翼がついてない機体があった。エンジンが横向き
に搭載されている機体もあった。少年が知っているUコンとは全く別の世界が
そこにあった。
  「アメリカってすごいんだ」。少年の興味はもはや、飛行機や模型でなく景
色でも飲み物でもなく、少年の知らないものがたくさんある『アメリカ』に向
いていた。

  少年はめまいを覚えていた。ゲートをくぐってからどれだけの経験をしたの
だろう。少年が受け止めるには多すぎるほど未知のものとの出会いがあった。
圭ちゃんも解良さんも疲れているようだった。ゆっくりと住宅地のほうに歩い
ていくと、再びエンジンの音が聞こえてきた。今度は模型飛行機のそれよりも
かなり低い、バ、バ、バ、バッっというような音だった。
  その音の原因が少年の目に入ってくる。

  「え〜っ、何? え、何で?」

  少年は自分の目を疑った。それもそのはず、運動会の時に使われるような楕
円形のコースで子供たちがクルマを運転している。しかも、そのクルマは絵本
で見たことのあるレースカーのようだった。自分と同じぐらいの歳の子供がク
ルマを運転している。楽しそうにクルマを走らせている。そばでは両親が見守
っていた。それはそれは衝撃的な光景だった。
  まだ第1回日本GPも開かれていない時代。それが少年が初めて目にしたモ
ータースポーツだった。
  少年はモータースポーツを知っていたわけではなかった。その時、少年が自
由にできるクルマば隣の八百屋さんにもらったりんご箱の底に自分で戸車をつ
け、家の前の道をことがり降りることしかできないクルマだった。まっずぐに
走ることに飽きた少年は独立した板に2個の戸車をつけて1本の釘でリング箱
に固定した。ステアリング装置にしたつもりだった。しかし少年の思うように
は走ってくれなかった。とても自動車と呼べる代物ではなかった。それに比べ
たら・・・。
  少年はアメリカの子供が、子供用に作られた本物のレースカーを運転してい
ることに猛烈な嫉妬心を感じていた。しかし、それ以上に子供用のレースカー
があるアメリカに強烈な興味を抱いていた。

  航空記念日から帰ると、少年の中で何かが変わっていた。少年が初めて自発
的に行動したおかげで住む世界を広げてくれた模型飛行機はもはや色あせ、代
わりにまだ見ぬものへの興味がふつふつとわいていった。それが何か、少年は
自覚できていなかったのだが。

  少年は三澤模型に足を運び、圭ちゃんが航空記念日でもらったあのレースカ
ーのパンフレットを見せてもらった。そこにはレースカーの写真と一緒に日本
の代理店として横浜のミゼッティ工業の名前があった。どうしてもそのレース
カーがほしい少年は、圭ちゃんに頼んで資料を送ってもらう手配をしてもらっ
た。
  日本人にも買えそうなことがわかり何日かの間うきうきしていた少年は、し
かし、資料が届くと暗い憂鬱な気持ちになった。そこにはパンフレットよりき
れいな色つきの写真とレースカーの値段がかいてあった。それを両親に見せて
「これがほしい」とねだると、たちどころに両親の顔が険しくなった。なにし
ろ、その額が父親の月給の4倍もすると説明されては、いかに貨幣価値がわか
らない子供だとは言え、それ以上レースカーのことを口にすべきでないことを
悟った。
  少年はいとこに頼んで模型飛行機を処分してもらった。自分の机の上にあっ
た模型飛行機を作るための道具も片付けた。少年の生活は、ライトプレーンを
始める前の静かなものに戻っていた。ただ以前と違うのは、毎月決められた小
遣いをためて買った自動車の本が少しずつ机の上に積み上げられていくことだ
った。

  四半世紀が過ぎ、その時の少年はポモナにあるクォーターミヂェットのレー
ストラックにいた。目の前では子供のころに見た光景が広がっていた。違うの
はレースカーの形だけで、それ以外は何も変わっていなかった。

                                 <完>

・クォーターミヂェット 今は昔
http://content.cdlib.org/ark:/13030/kt8g5023qs/


   * * * * * * * * * クォーターミヂェット余話 * * * * * * * * * * 

  ツインリンクもてぎにダートトラックがある。外周のクォーターマイルダー
トはカリフォルニアのベンチュラレースウエイをフルコピーしたものだ。企画
の段階ではここでアメリカから輸入したミヂェットのレースを開催する予定だ
った。日本で腕を磨き、ベンチュラレースウエイで行われる本場アメリカのミ
ヂェットレースに挑戦するドライバーを育てるはずだった。
  そのダートトラックの中心に舗装した部分がある。そこは、アメリカのQM
A(アメリカンクォーターミヂェットアソシエーション)の規格で作ったクォ
ーターミヂェット専用のコースだ。1996年に1台のクォーターミヂェット
が海を渡り鈴鹿サーキットで試走した。企画の段階では1998年の正式オー
プンを機に、ツインリンクもてぎで少年が幼い日に見たあのクォーターミヂェ
ットレースの真似事が始まる予定だった。

********************************************************** 奥付け ****
□メールマガジン"Go−Circuits"
□有限会社ユイレーシングスクール発行
□編集/文責:トム ヨシダ
■問い合わせ:090−6539−4939(朝8時〜夜9時)
□オリジナルサイト:http://www.avoc.com/
□Copyright:Yui Racing SchoolCo.,Ltd.
□Copyright:1986-2008  AVOC CORPORATION
本メールマガジン、オリジナルサイトの全部、または一部を複製もしくは引用
されたい方は、事前に発行人までご連絡ください。
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡  Presented by Yui Racing School≡