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Go−CircuitNo.261(10/21/08発行)
---------------------------------------------------- Taste of USA ----
●クルマを走らせるのは楽しい。速く走らせるのはもっと楽しい。●しかしク
ルマを安全に速く走らせることが難しいのも事実。走らせ方を理解していない
と楽しくもないし危険でさえある。●クルマをもっともっと楽しむために「ク
ルマさんとの正しいお付き合いの仕方」を学びませんか。●ユイレーシングス
クールからの提案です。●公道では安全運転を。サーキットではそれなりに。
》》Be Smarter、Drive Safer and Faster《《
【 Yui Racing School Offers Serious Entertainment 】
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|1) YRSサイトアップデート
|2) 同乗体験者募集
|3) ユイレーシングスクールの足跡 1
|4) 参加申し込み受付中
|5)クルマを走らせる その5 トム ヨシダ
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|1) YRSサイトアップデート
YRSエンデューロ最終戦 FSW
参加16台。うち11台がソロエントリ。うち2名がYRSスクールレース
初体験。優勝車の走行距離は188周(191周がYRSレコード)。130
分経過後、1位と2位は同一周回数で35.7秒差。3位と4位は同じく同一
周回数で3.6秒差。10位までが180周を走破した。
・YRSエンデューロ最終戦 FSW 最終結果
http://www.avoc.com/3result/pt/1018yes/
YRSスプリント最終戦 FSW
オープンクラス12台。ロードスタークラス11台が参加。オープンクラス
予選では上位2台が35秒台に突入。12周で争われたヒート1後のファイナ
ルヒート。26周のほとんどを上位2台は34秒台で周回を重ねた。ロードス
タークラスの予選ではローグリップタイヤ(ファイアストーンワイドオーバル)
を履いたNB8が37秒台に突入。ヒート1は予選順のフルインバートグリッ
ドでスタート。26周で争われたファイナルヒートではローグリップタイヤ組
が3位、6位、7位を占めた。
・YRSスプリント最終戦 FSW 最終結果
http://www.avoc.com/3result/pt/1018yss/
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|2) 同乗体験者募集
11月15日。富士スピードウエイジムカーナ場で2008YRSオーバル
レースシリーズ最終戦が行われます。2004年から始まったわが国唯一のシ
ョートトラックレースも5年が経過し、毎回白熱した争いが繰り広げられてい
ます。
今回、最も手軽に本格的なコンペティッションを実現できるショートトラッ
クレースをより多くの方に知っていただくために同乗走行を企画しました。詳
細は以下の通りで参加費は無料(FSW入場料は各自負担)です。興味のある
方はぜひお越し下さい。
|■ YRSオーバルレース体験同乗
日時:11月15日(土)
集合:11時30分(FSWジムカーナ場駐車場)
募集人数;22名(先着順とさせていただきます)
必要装備:長袖、長ズボン、ヘルメット
内容:YRSオーバルレース参加車の助手席に同乗し、予選とヒートレースを
体験していただきます。同乗走行後簡単なアンケートにお答えいただきます。
アンケートに答えられた方にはYRSビデオ、イントロダクションツーミヂェ
ットレーシング(非売品)を贈呈します。
お問い合わせはYRSサイトのトップページにある「Mail to YRS」
からお願いします。
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|3) ユイレーシングスクールの足跡 1
9,775名。これは1999年12月9日に桶川スポーツランドにおいて、
ユイレーシングスクールが日本で初めてのドライビングスクールを開催してか
ら先日のYRSスクールレースまで、ユイレーシングスクールに参加してくれ
た方の総数である。
そう。ユイレーシングスクールは12月に10年目の活動に入る。とにもか
くにもアメリカの名だたるレーシングスクール(ドライビングスクール)と同
じように理論的なアプローチを基本とし、誰でも参加できる「ゆりかごから墓
場まで」のモータースポーツ構築を目指してきた。ジムラッセルレーシングス
クールの50周年には遠く及ばないものの少しは日本のクルマ好きの人々を満
足させることができたのではないかと考えている。
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スレッシュホールドブレーキングの練習は、実は、クルマの挙動、とりわけ
荷重移動を正確に把握できていないときわめて難しい。なのに、なぜ練習する
のか?
もちろんスレッシュホールドブレーキングをマスターしてもらうのが目的だ
が、それ以前にトランジッションの概念を身につけてもらうことに最大の眼目
がある。
言うまでもなく、クルマを速い速度域で動かすのには、それがポルシェであ
ろうとフォーミュラカーであろうと軽トラックであろうとトランジッションが
必要になる。「クルマはすぐには曲がらない」からだ。
しかし日常の速度域ではトランジッションを意識することなくクルマを走ら
せることができるのも事実で、むしろ世の中の傾向としては運転中に余計な意
識や特殊な操作を必要としない方向に動いている。それは悪いことではない。
少なくともクルマが運転者のミスを補完してくれたからこそ危ない場面を回避
できた人もいるはずだ。
しかしユイレーシングスクールは『クルマを操る醍醐味』を知ってほしいか
らスレッシュホールドブレーキングをカリキュラムに取り入れている。
スレッシュホールドブレーキングの練習は、10m間隔で立てた2組のパイ
ロンを使って行う。最初のパイロンの間を抜ける時にブレーキングを開始し2
組目のパイロンの間で静止する。ただそれだけの練習だ。2速でフル加速した
後に減速するのだが、スレッシュホールドブレーキングができればABSを効
かすことなく2組目のパイロンの手前で停まることができる。(ABSが働く
とこの距離では停まれない)
クルマがフル制動をしている時にはほとんどの制動力を前輪に頼っている。
ということは、フロントタイヤのグリップいかんで制動距離が伸びたり縮んだ
りする。簡潔に言えば、スレッシュホールドブレーキングは前輪のグリップを
最大限に利用するブレーキングだ。だからトランジッションが極めて重要にな
る。
最初は受講生なりにブレーキングを行ってもらう。「テーマは1組目で減速
を開始して2組目で停止」という簡単なものだ。ところがこれがなかなかでき
ない。2組目のパイロンを行き過ぎてしまう。
そこでデモランを見せ、必要な操作を説明する。要するに制動力を立ち上げ
る前にトランジッションを意識してもらうわけだ。目的は言うまでもなく、フ
ロントタイヤのグリップが適正になるのを待つためだ。ついでに1組目のパイ
ロンの手前でスロットルを閉じたほうがトランジッションを作りやすいことを
説明する。
受講生のブレーキングを後ろから観察できる位置に移動して見守る。もちろ
んブレーキングに失敗してもエスケープゾーンは十分にとってあるから何か起
きる心配はない。練習を再開。
クルマが加速してくる。クルマを目で追いかける。トランジッションを意識
しているかを確認する。
エキゾーストノートが突如低下しスロットルを閉じたことがわかる。まさに
次の瞬間。ストップランプが点灯し、明らかにクルマの後部が跳ね上がる。ト
ランジッションができていない証拠だ。クルマが過度のピッチングを起こして
しまっている。
トランジッションを意識できない人、あるいはスレッシュホールドブレーキ
ングができない人は運転が下手だと言っているのではないことをお断りしてお
く。理論的に考えた場合にクルマの性能を最も引き出す方法を練習しているの
だから、むしろうまくできないほうが自然なのだ。
しかし、トランジッションの概念はなにもブレーキング時だけに必要なもの
ではない。加速にも旋回にも重要な役割を果たす。だから、しばらくは受講者
が首をかしげながら練習するのを申し訳なく思いながら、トライを続けてもら
う。
結論から言うと、制動力の立ち上げが早すぎるのだ。とにかくフロントタイ
ヤが進行方向にスキール音を発しながらそれこそ地面にめり込むようにクルマ
の速度を落とす過程を体験してほしいから、1組目のパイロンから5mほど
(車種によって変えるが)スロットルを閉じる位置を指差して示すことにする。
クルマが加速してくる。走行ラインから2mと離れていないところで指差し
た位置は、受講者から見ると1組目のパイロンから5m手前。スロットルを閉
じたのがわかる。同時にストップランプが点灯し、またもやクルマの後部がお
おげさに持ち上がる。右足をブレーキペダルに素早く移すのはかまわないが踏
力をかけるまでに間を作るように、と説明したのだが、やはりペダルの踏み変
えと同時に踏力がかかり制動力が立ち上がってしまっている。つまり制動力>
フロントタイヤのグリップの図式を変えられていない。
しかし、スレッシュホールドブレーキングができていないかと言えばそうで
はない。最大制動性能こそ引き出せなかったかもしれないが、ほとんどの受講
者が練習後に「ブレーキがこんなに効くものだとは思わなかった」と言うのだ
から、減速度の違いはあれ4輪が地面に張り付くような感覚のブレーキングに
は成功したことになる。
まさにそれがスレッシュホールドブレーキング練習の目的で、右足ひとつで
クルマを操る快感を覚えてほしいのだ。
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受講生が特定の練習をうまくできなくても、それは受講生が下手だからでは
ありません。むしろうまくできないことのほうが多いはずです。ユイレーシン
グスクールでお教えしているのは理論的に裏付けされた、いわば『クルマを運
転する人が目指すべきもの』なのです。ドライビングスクールに参加した時点
でできてもできなくてもそれはどうでもいいことなのです。
ひとつにはクルマの動きを身をもって感じてもらい、クルマのバランスを崩
さないための操作を覚えてもらえば、あとはその方の工夫次第で運転はうまく
なります。そのきっかけをユイレーシングスクールが提供しているに過ぎない
のです。
日常ではクルマの限界を探る走りはできないでしょう。しないほうが賢明で
もあります。しかしクルマの性能は人間の想像をはるかに超えたところにあり
ますから、限界付近で走ってみてどんな挙動になるのか知ることが極めて大切
です。受講生も最初のうちはクルマがバランスを崩すような『気持ち悪い操作』
を避けるように心がけていますが、操作に慣れてクルマを前に前に進められる
ようになると『気持ちのいい操作』を求めるようになります。それこそがユイ
レーシングスクールが求めているドライビングポテンシャルの向上なのです。
クルマを思い通りに動かしてみたいという方は、ぜひユイレーシングスク
ールを受講してみて下さい。
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|4) 参加申し込み受付中
現在、以下のカリキュラムの参加申し込みを受け付けています。
| ※申し込み期日を過ぎても定員に達しない場合は引き続き受け付けを行いま
| す。枠がある場合は当日受け付けも行いますが電話でご連絡下さい。その場
| 合は受講料を当日の受け付けでお支払い下さい。
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|■ 11月6、7日(木、金)YRSツーデースクールFSW
| ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ 受講料値引き断行
ユイレーシングスクールのプログラムの中で最も充実しているのがYRSツ
ーデースクールFSW。1日目午前中にジムカーナ場でブレーキングとコーナ
リングの練習を行ってクルマの基本操作を学び、午後からはオーバルプラクテ
ィスでクルマの姿勢制御に慣れ、スタッフと同宿する受講者は夕食後に1日目
の反省会を行います。2日目はショートコースで高速からのブレーキングの練
習を行った後でリードフォローによりコースの走り方を習得。同乗走行で操作
のコツをお教えしたあと単独でサーキットを走ります。
サーキットを走ったことのない方も、クルマを速く走らせたことのない方も
この2日間でクルマとの対話が格段に進みます。運転というものは最終的に無
意識公道で行うものなので2日間の流れの中でクルマの動きがわかるようにな
り、クルマを動かすための操作の必要量を会得することができます。クルマの
運転のレベルをあげたいと思っている方はぜひ参加して下さい。
・YRSツーデースクール開催案内
http://www.avoc.com/1school/driving/y2ds.shtml
尚、既にツーデースクールに申し込まれている方は当日差額を返金いたしま
す。また2日目の富士スピードウエイ入場料は必要ありません。
※ スタッフは須走の扇屋旅館に泊まりますが、同旅館に宿泊を希望される方
は予約の都合があるのでお早めにお申し込み下さい。受講料は10月29日ま
でにお振込みいただければかまいません。宿泊を希望される方は申し込みフォ
ームのコメントランに宿泊希望とお書き下さい。宿泊料金は1泊2食付きでシ
ングルが8400円、相部屋が7500円です。尚、シングルルームは7部屋
しかないので優先的に割り振ることをご了承下さい。
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|■ 11月15日(土)YRSオーバルスクールFSW
今年最後のYRSオーバルスクールです。週末の半日コースですがカリキュ
ラムは平日に行う終日のオーバルスクールとなんら変わりはありません。来年
に向けてクルマの挙動と操作の関係を知りたい方はぜひ参加して下さい。もち
ろんYRSオーバルスクールを卒業しレースデビューを計画している方の参加
も大歓迎です。
・YRSオーバルレース映像( 提供:Etchy )
http://jp.youtube.com/watch?v=qaUNf_YQX8Q
・YRSオーバルスクールFSW開催案内
http://www.avoc.com/1school/oval/yosf.shtml
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|■ 11月15(土)YRSオーバルレース最終戦FSW
5シーズン目のYRSオーバルレースも今回が最終戦。オープンクラスとロ
ードスタークラスの2クラスでレースを行います。来年に向けて新しい企画も
考えていますので、過去にオーバルレースに参加したことのある方はぜひ参加
して下さい。
・YRSオーバルレース規則書
http://www.avoc.com/2race/oval/yor.shtml
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|5)クルマを走らせる その5 トム ヨシダ
前回、交通の流れの中にあって『相対速度ゼロ』で走ることの重要さについ
て書いた。別に難しい話をしたわけではない。相対速度ゼロを意識することに
よって流れが円滑になり、その上安全性も高まるという話だった。
時速120キロで高速道路を走っているとしよう。その速度自体が交通違反
であるということはこの際おいておく。もし並走するクルマと相対速度がゼロ
であれば、そのクルマの変位。この場合は車線変更とか極論すれば居眠り運転
による蛇行も間髪をいれずに把握することができる。それは進行方向に同じ速
度で進んでいるわけだから、相手の行動の変化を横方向にだけ注意すればいい
からだ。
根底には、他のクルマの動きや他のクルマとの相対速度を意識することによ
って流れに乗る(あるいは流れをリードする)ことが安全運転につながるとい
う思想がある。
同じ速度で走っている時、お互いの単位時間あたりに進む距離は同じだから、
相手が車線を横断するようなとんでもないステアリング操作をしない限り、相
手の変位量に見合っただけ自分の進路を変えることは簡単なことだ。高速道路
の走り方は別の機会に譲るが、この例だけでも運転中に相対速度ゼロを意識す
ることの重要性が分かると思う。
しかし、大方の運転者は受動的に運転している。前走車がブレーキをかけた
から自分も車速を落とす。相手が加速したから自分もスロットルを開ける。見
ず知らずの第3者を相手に相手の行動に対応することで運転している。しかし
相手がミスをしないとも限らないし、行儀の悪い運転をするかも知れないのだ
から、交通の中で自分の置かれる状況というものをもっと積極的に、何かが起
きても余裕をもって対処できる準備が肝心だという話。そのためにも、手始め
に相対速度ゼロを意識してみてはどうだろうか。
もちろん、できれば横のクルマと並走したくない、といいう意見があるのは
承知している。運転中は前を見て運転するのがふつうだから真横を走っている
クルマの動きを意識するのは難しいことだ。横に並んでいる時にそのクルマが
車線を逸脱してくるかも知れない。だから真横に並ばずに、抜ける時はさっさ
と抜いてしまう。抜けない時は少し下がって隣のクルマを視野に入れながら追
随していく、という考え方はもっともなことだ。
ここでは、あくまでも交通の流れという観点から見れば相対速度を意識する
ことが安全運転につながることを協調したい。
さてこれからは、もし仮にあなたが相対速度ゼロを意識して運転することが
できて前走車との時間的な車間距離を保つことができるようになると、安全性
が高まると同時に省エネ運転も実現できるという話だ。
前を走るクルマが左折しようと減速すると、そのクルマを回避しようとステ
アリングを右に切ってそのクルマを追い越すクルマをしょっちゅう目にする。
片側1車線であれば対向車線にまではみ出して追い越し、片側2車線の道であ
れば中央車線に進路を変えて追い抜く。意図するところが自分の速度を落とさ
ずに走り続けたいからなのは分かるが、これは危険だから止めたほうがいい。
ましてブレーキをかけるのがおっくうだからステアリングで回避しようするの
ならもっての他だ。危険であるばかりか自分の運転だと自ら宣言しているよう
なものだ。
車線を区切る線が実線である場合にはそれを超えることすら道路交通法違反
なのだが、なぜか警察官の前でそれが行われても取り締まられる気配もない。
捕まらないからやってもいいということではなくて、自分の安全を確保するた
めにも止めるべきだ。
言うまでもなく、減速ではなく進路を変えて前のクルマを追い越すという行
為は追い越す側のクルマの速度が落ちていないことを意味する。それがどうい
う結果をもたらすかと言うと、実際に見たケースなのだが、対向車線に出た瞬
間に対向車線側にある駐車場からクルマが左折して出てきた。進路を変えて前
のクルマを追い抜こうとしたクルマは前のクルマに気をとられているから、対
向車線の駐車場から出てきたクルマに対しての反応が遅れる。一番びっくりし
たのは駐車場から出てきたクルマだろう。左右を確認し余裕をもって駐車場か
ら出たはずなのに、その一瞬後目の前に自分を向いて走ってくるクルマを確認
する。本来逆送してくるクルマなどないはずの車線に、あとうことか自分に向
かってくるクルマがいるのだから驚かないほうがおかしい。両方のクルマが急
ブレーキをかけて難を逃れるが、一体、前を走るクルマが減速したからと言っ
てステアリングで回避して何の得があると言うのか。
それよりもなによりも、減速して左折しようとするクルマの速度は左折寸前
に最も低下する。そのクルマをブレーキではなくステアリングでやり過ごそう
というクルマの速度は多少落ちることがあっても、左折しようとするクルマに
比べれば十分速い。相手に近づく速さは思いのほか速いはずだ。左折しようと
するクルマが歩道に人影を確認してさらに速度を落とせば、あっという間に左
折車の背後に近づいてしまう。即ち、『相対速度ゼロ』の視点から考えるとま
ったく逆の危ない状況を自ら作り出しているのだ。
対向車線にでて左折車をやり過ごしたクルマが元の車線に戻ろうとステアリ
ングを左に切った時、左折するクルマが入ろうとしていた駐車場から出てきた
クルマがあって戻るに戻れなかったケースもあった。
空いていて空間があるのだから対向車線に出て減速中のクルマを追い越して
何が悪い、と言う人もいるようだが、そういう人は運転する資格はないと言っ
ていいだろう。運転中の判断が全て自分を中心としていて、自分がとった行動
がどんな事態を引き起こすかということには思いをはせていない。想像力が乏
しいのか、状況判断ができないのかわからないが、おそらく渋滞の原因を作る
のもそんな人達なんだと思う。
交通の流れが一定でそこを走るクルマ全ての相対速度がゼロであるのが理想
ではあるけれど、それを実現するのは不可能に近い。流れを形成するクルマは
それぞれの目的で走っているからだ。だから理想とは裏腹に流れがよどむこと
もあるし、場合によっては停滞することもありうる。それを自分を中心におい
た判断だけで、自分だけは損をしないように運転するのは止めたほうがいい。
危険でもあるし、だいいち『品』がない。バシッとして洋服でいいクルマに乗
っていてもお里がしれると言うものだ。
もしクルマを安全にかつ効率よく走らせたいと考えるならば、自分の置かれ
ている状況を把握し運転している目的に照らし合わせて何をすべきか頭を使う
必要がある。
先の例で言えば、進路を変えて左折するクルマを迂回した運転手はブレーキ
を踏むのがおっくうだったのかも知れないし、先を急いでいたのかも知れない。
しかし交通という流れの中にあってはその対処方法は間違いなのだ。なにかあ
るたびに対処していたのでは安定した安全な運転はできない。
そもそもなぜこの運転者はステアリングを右に切ったのか?
それは前のクルマに近づきすぎたからだ。さもなくば確信犯的に前のクルマ
に近づいたからだ。
だが考えて欲しい。そうすることにより彼は何を得、何を犠牲にしたか?そ
うすることで目的地までの時間が短縮できたか?減速して加速する必要がなく
なったからガソリンを節約できたのか?それとも減速せずに前走車をやり過ご
して優越感に浸れたのか?どれも交通の秩序を壊す理由にはならない。
それなのになぜそうするのか?それは前のクルマが左折のために減速を開始
したのに自分は減速を始めなかったことに最大の原因がある。つまりこの時点
で相対速度ゼロが崩れたのだ。前を走るクルマが減速しているのに後続車は減
速しない。後続車の減速が遅れれば遅れるほど追突を避けるために急なブレ
ーキングが必要になる。
実際に何が起きるかと言うと、左折するクルマが減速を始める。後続車は減
速しない。あるいは同時に減速したとしても前走車を上回る率で減速しなかっ
た。結局のところ前走車に近づくことになり、ステアリングに頼ってやり過ご
そうという心理になる。
しかしこの場合、もしその車線にとどまっていたらどんなことが起きるか?
そうしているクルマも多く見かけるが、ほとんどの場合後続車が減速し終わっ
た時の速度が、左折車が左折のために落とした速度よりも遅くなっている。つ
まり後続車の運転者がストレスを感じるのも分からないではないのだ。
ではなぜ後ろからついていくクルマの速度が落ちすぎてしまうのか?なぜ前
のクルマの減速で翻弄されてしまうのか?それは、やはり相対速度ゼロという
概念が欠如しているからだ。
結論から言うと、左折のために前走車が減速を始めたら後続車は前走車以上
の減速度で車速を落とさなければならない。ここの認識が足りないのだ。何を
目安に後続車は減速すればいいかと言うと、『前走車が減速を終えた瞬間に後
続車も減速を追えなおかつ距離的な車間距離が減速前と変わらない』ことだ。
前走車は減速を終えると左折を開始する。左に変位をしていくことになる。一
方後続車の方向性は変わらずに直進方向だ。両者が同時に減速を終えればそれ
ぞれの目的は難なく達成することができるというわけだ。
おわかりだろう。ステアリングで逃げているクルマは前走車が減速を終えて
いるのにまだ減速を続けているから前走車に近づき好きてしまう。結局のとこ
ろ後続車は前走車以上にスピードを殺さなければならないから心理的にもスト
レスになる。仮に後続車が相対速度ゼロの減速を実行できたなら進路を変える
こともなく、かつ速度を落としすぎることもなく、2車ともひとつの流れの中
でそれぞれの目的を満足できたはずなのである。
路上で様々な人の運転に出会うと、偶然なにごとも起きないから安全に走っ
ているように見える人と、何かあっても運転には破綻をきたさないだろうなと
思える人がいる。それは運転テクニックに負うところも確かにあるが、基本的
なところはその人の運転に対する意識に根ざしている。
クルマの運転を軽んじてはならない。安全にクルマとの付き合いを終えたい
と思うのなら、それだけ運転に頭を使わなければならない。もちろん現状では
運転という概念を体系的に教える場がないから自発的に自分の運転を見直す以
外にはない
のだが、なんとか少しでもあなたが他人の、そして自分のリスクを減らせる方
向で運転してくれることをYRSは願っている。道路交通法にがんじがらめに
なった運転をする必要はない。ただ自分が運転している時は全責任をとらなけ
ればならないと覚悟できるかどうか、当事者意識が十分に養われているかどう
かで運転の上手い、下手は決まる。
・ユイレーシングスクール教科書
http://www.avoc.com/5media/textbook/textbook.php?page=0
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