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Go − Circuits No.118 (01/09/02)

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【 118号の目次 】

◎ 02年筑波ドライビングワークショップ参加受付開始

● クルマの運転

☆ ハウツゥスタート

★ コーナーの向こうに 第六話 青春の旗 第1回 トム ヨシダ

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◎ 02年筑波ドライビングワークショップ参加受付開始

>>> どなたでも参加できます <<<

ユイレーシングスクール今年最初のイベントが1月29日に開催される筑波ドラ
イビングワークショップ。その参加申し込み受付を開始しました。

詳しくはTDW開催案内のページを参照していただきたいのですが、ここでは
今年から新たに筑波ドライビングワークショップに加わったメニューを紹介し
ます。

ご存知の通りTDWは、ジムカーナ場を使った定常円旋回とコース1Kを使っ
たラッピングを通してクルマを安全に速く走らせるコツを覚えていただくこと
を目的にしています。いわゆる『理にかなった運転』がどういうものであるか
体験してもらおうというわけです。

昨年は19回(うち1回は筑波ドライビングワークショッププラス)の開催で実
に延べ525人の方が参加して下さいました。いろいろな感想を聞かせていた
だくと同時に様々な意見をいただきました。限られた時間の中で何を提供すれ
ばTDWを受講してくれる方々のためになるかスタッフで考えました。

その結果、追加されたメニューがビデオ撮影です。ビデオカメラを固定し定常
円のコーナリングとラッピングのコーナリングを複数回同じアングルから撮影
するものです。

その目的は、操作とクルマの挙動の因果関係についての例をたくさん創ること
です。

ベテランのドライバーでも毎周全く同じコーナリングができるわけではありま
せん。安定した速さを実現できるのはクルマの状況を把握する能力に長けてい
て、『速く走る』という目的からクルマの挙動が外れた場合にそれを修正する
ことができるからです。

自分の走りを第三者的に見ることによって、クルマの挙動を検証しどんな操作
が適当でどんな操作が不適当かを判断する能力が高まります。

定常円では180度コーナーの頂点から引いた接線上にビデオカメラを置く予
定です。画角はこれから決めますが、進入から脱出まで一連のクルマの動きが
わかるように撮影したいと考えています。

ユイレーシングスクールではそのビデオを個人単位で編集し販売します。詳細
は追って告知しますが、TDWに新しく導入するプログラムは自分の走りを検
証することも出来ますし、クルマの形式による走行性能の違いも見て取れるは
ずです。使い方によっては無数の効果を引き出すことができます。

もちろん、そのビデオを持参で吉田塾に参加することも可能です。

ぜひ今年1回目の筑波ドライビングワークショップにご参加下さい。

・02年筑波ドライビングワークショップ開催案内
http://www.avoc.com/school/program/tdw02/tdw_rule02.htm

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● クルマの運転

その昔、クルマを運転するにはある程度の技術が必要でした。加えてパワーア
シストも付いてないので、クルマをキチンと動かすには腕力、脚力とも重要な
時期がありました。クルマが世の中に誕生してから100年。そのうちの4分
の3はそんな時代だったのです。

技術が目覚しく進歩した20世紀後半。誰にでも手軽にクルマの運転ができるよ
うになりました。フルシンクロメッシュ式トランスミッションはアップシフト
の際はもちろん、ダウンシフトでもダブルクラッチの煩雑さから左足を開放し
ました。パワーステアリングは片手で運転することを、サーボ付きブレーキは
ハイヒールでさえ運転することを可能にしたのです。

今、クルマに速さを求める技術が四輪駆動になり加給器付きエンジンになりま
した。ドライバーのテクニックを補うためにハイグリップタイヤやABSが生
まれ、さらにはドライバーの意志を先取りするために作られたのではないかと
思わせるトラクションコントロールやヨーコントロールの技術も確立しました。

今、クルマの性能が向上する一方で市街地におけるクルマの移動速度の低下が
問題になっています。言うまでもなくクルマの利便性が増した結果、クルマの
総量が絶対的に増えてしまったからです。速く走れるクルマが、実は速くは走
れないという矛盾した環境を技術の進歩ががもたらしたのです。ある意味では
クルマの存在価値が問われているのです。

同様に、手軽に簡単に乗れるクルマは本来の使い手である人間にも少なからぬ
影響を与えています。エンジンをかけてスロットルを踏み込めば人間の意識と
テクニックではとうてい及ばない速度にまで加速できるようになりました。不
用意に操作しても人間のミスをかばってくれて見かけ上の安全は確保されるよ
うになりました。

ところがこの日常がサーキットに持ち込まれると、往々にして破綻を招くこと
になります。それはいかなるクルマでも日常の使い方を前提に作られているか
らです。極限状態。つまり限界付近をいったりきたりする使い方は考えられて
いないのです。

サーキットを走るドライバーの意識も日常のまま。確かに運転自体は日常の延
長です。しかしそこで起こりうることは、決して日常の範囲ではありません。
それはクルマにとってはもちろん、人間にとっても同様です。

クルマを速く走らせるためにサーキットに行く。サーキットでクルマを思いっ
きり走らせる。実は日常のようであって、日常ではない世界なのです。

そして日常と非日常を分けているのは、まさに人間の意識そのものなのです。

木田 元中央大学名誉教授(哲学)が日常について書かれています。一部を抜
粋して紹介します。

* * * * * * * *

日常とは、毎日繰り返される連続した安定状態のことである。その連続的な
日常を切断する一回性の出来事が非日常的な異常事ということになる。しかし
、無意識に繰り返され、当然だとされている日常が日常として意識されるのは
、むしろそうした異常事の起こったときであろう。異常事は、日常とは何か、
日常的に生きている自分はいったい何者なのかを反省させ、それを変革するき
っかけにもなりうるのだ。
そこで、意識的に日常世界を離脱し、非日常的な生き方を目指すことにもな
る。芸術や宗教がそうだ。芸術や宗教は、原理的には、日常世界を超越し、日
常世界やそこで生きることの意味を照らし出そうとする企てである。

* * * * * * * *

クルマの操作とサーキット走行。極めて日常的でありながら、見方ひとつで非
日常への扉となりえます。技術がもたらした現代の福音のひとつです。

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☆ ハウツゥスタート

ここではクルマの速さを安全に引き出すためのヒントを掲載していきます。

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今のクルマは運転する人間に対して非常に許容度が高い。クルマを普遍させる
ためメーカーが惜しげもなく技術を投入したからだ。特別なテクニックがなく
ても、とりあえずはクルマを速く走らせることができるようになった。

許容度が高くなったという事実を人間側から見てみるといくつかのことに気付
く。ここではサーキットを走る上で最も重要な点を指摘する。それは、例えて
言うならば『過程が省かれた』ことだ。言葉を変えれば、『0から10まで一足
飛びに操作できる』ことだ。手続きを踏まなくても目的が達成できるようにな
った、ということだ。

そして、やっかいなことにクルマを自由にコントロールしたいと願う人間にと
って、『過程を省くこ』に慣れることが上達への大きな障壁となって立ちはだ
かる。そう、本来人間のために生まれた技術が人間本来の能力を阻害すること
につながっている。

ブレーキを踏む。踏力が強すぎてタイヤがロックする。慌てることはない。A
BSが働いて<とりあえず必要な減速度>は確保してくれる。面倒くさかった
らそのまま踏んでいればいい。ステアリングを急激に一度に切る。一昔のクル
マならとっくのとうにコースアウトしていた速度なのに、クルマはいとも簡単
に、何事もなかったようにコーナリングを始める。

それはそれでいい。そのための技術なのだから。しかしクルマを正確に動かす
ためには『0』か『10』の操作では足りない。サーキットを走るクルマはテレ
ビゲームとは違う。実際に操作する人間が中に乗って移動しながら、また操作
を繰り返す。それも速い速度でだ。もはや優れた機械であろうと、『ON』と
『OFF』だけの操作ではスムースに動かない。過程を意識した操作が行われ
ないと、速く走るクルマは正確には動かない。

走り方としては単純なスレッシュホールドブレーキングや定常円旋回が重要な
のは、『過程の重要さ』を再認識するためだ。

理由は、クルマは常に漸進的に姿勢を変えるから。

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★ コーナーの向こうに 第六話 青春の旗 第1回 トム ヨシダ

絶え間なく雨が降り続く。雨粒が大きいわけではないが全てを十分に濡らすだ
け降り続く。かぶった帽子のひさしから雫が落ちる。目を寄せてその雫を見る。

つかの間の静寂を破り、極限までチューニングされた2リッターレーシングエ
ンジンの咆哮がこだまする。

「あれはコスワースBDDだな。永松かな?」

音のする方に目をやると、まさにローラT290が立体交差の下をくぐりヘヤ
ピン手前の110Rに向けて加速してくる。路面が光る。リアタイヤから真上
に上る水煙がつくる白いカーテンがマシンと一緒に移動する。

「やっぱり速いな。」

前回の鈴鹿500Kmレースの時に2分6秒5というコースレコードをたたき
出した。永松邦臣とローラT290。ドライコンディションとは言え、2リッ
ターのクルマが1周6004mのコースで記録した驚異的なタイム。

朝8時半にはこの日の持ち場、ヘヤピン手前の14番ポストにいた。コース上に
何か落ちていないか確認し、備え付けの旗とオイルを処理するためのおが屑を
点検。途中『箱』の中に入ることはあったが、ほとんど外にいる。上下のレイ
ンウエアを着ているものの、すでに中のシャツまですっかり湿っている。

1972年5月13日。第7回鈴鹿1000Kmレース予選。コースオフィシャ
ルの役務につくため昨夜遅く鈴鹿サーキットに到着。大食堂で他のオフィシャ
ル仲間と朝食をとり、その後マイクロバスに乗ってコースにある各ポストに散
る。

「もう何レース目になるのだろうか、鈴鹿で旗を振るのは。いろいろなことが
あったなぁ。」

『シシャー』エンジン音に負けないぐらい大きな水音を引きずりながら240
Zが左手から右手へ。「あのカラリングは黒沢だな。」日産ワークスチームか
ら参加している2台の240Z。ゼッケン25番に高橋国光と黒沢元治。もう一
台のゼッケン26番に都平健二と長谷見昌弘が乗る。

14番ポストからヘヤピンの進入は見えない。右手に張り出した崖が視界をじゃ
まする。かろうじてヘヤピンインフィールドのポスト員は確認できる。だから
、黒沢がどんなラインを通ってヘヤピンに進入していくかはわからない。

逆に、デグナーカーブ出口にある13番ポストは離れているが見ることはできる
。コースをさかのぼれば、110Rから5速まで入るストレートをたどり立体
交差のトンネルの向こう、右側に小さな箱が見える。

午前中ほど雨量は多くないものの、まだ雨は降り続いている。タイヤが間に合
わなかったチーム。デフロスターが壊れたチーム。1300cc上下で分けら
れたそれぞれ45分間の一回目予選を全てのチームが走ったわけではない。し
かし雨が小降りになり、雨体策の整ったチームが50台の予選通過枠を目指して
いっせいに午後の2回目の予選を走る。

「それにしても今回のエントリーは多いなぁ。TSからグループ7までだろ。
速度差もあるし結構大変なレースになるかな。」

ポスト長はふつう、『箱』の中で電話連絡を担当する。しかし今回14番ポスト
を担当するのは一人。走行の進行を確認し、必要な場合は旗を振り電話でコー
ス委員長がいるセンターに連絡する全てをこなさなくてはならない。

昨夜、コース副委員長の鈴木隆史さんから「ヨシダ君なら14番ひとりでいいよ
な!」と言われ、即座にうなずいた経緯もある。「そう。何があるかわからな
い。まして今日は雨。でも何でもこなしてみせる。」自分に言い聞かせる。

エキゾーストノートが空気を震わせ、音よりも速くマシンが現れるのを見てい
ると、濡れそぼったシャツなどどうでもよく思える。それよりも、自分がコー
ス際で旗を手に立っていることのほうがいつもと変わらず、ずっと新鮮だ。

遠くで乾いた音がする。ポルシェ910だ。レーシングカーには珍しく空冷の
フラットシックスをミッドシップに搭載する。オーナーの川口吉正は鈴鹿育ち
の木倉義文と組む。

高橋晴邦が駆るセリカRをヘヤピンの方向に追っていた顔をデグナーカーブの
方に向ける。

「?!」

ちょうど立体交差の下をスピンしながら飛び出してくるポルシェ910が目に
入る。頭では起きていることを理解していない。大きく開いた目だけがそのこ
とを凝視するだけ。

「スピンが止まらない!!!」路面は鏡のように光っている。「立ち上がりで
スピンか。それともストレートに出てからか?」

どこへ向おうとしているのかわからないポルシェ910は駒のように回りなが
らゆっくりとアウト側に奇跡を変える。そしてグリーンに出た瞬間。その姿が
視界から消えた!

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コスワースやハートといった純粋なレーシングエンジンでさえ再高回転は9千。
量産エンジンを改造しても7000回転がやっとという時代。ひときわ異色の
エキゾーストノートというより騒音が聞こえる。「RX−3だな。片山がのっ
ているのかな。」音からして何かが往復運動しているとはとても思えないロー
タリーエンジン。
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=== 続く ===

※文中のドライバーの敬称は略してあります。

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