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Go ★ Circuits No.128 (04/03/02発行)

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【 128号の目次 】

◎ 2002年筑波サーキット公式ドライビングスクールに追加プログラム

● 吉田塾 参加申込み受付中

△ 書籍紹介 「灼熱の走路」菅谷 充 著

○ アンケート回答抜粋

☆ ハウツゥスタート 操作と挙動 その2

★ コーナーの向こうに 第六話 青春の旗 第9回 トム ヨシダ

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◎ 2002年筑波サーキット公式ドライビングスクールに追加プログラム

2000年から筑波サーキット公式ドライビングスクールの運営を委託されている
ユイレーシングスクール。少しずつですがカリキュラムを増やしいろいろなデ
マンドに応えられる体制を作ってきました。

しかし今年の筑波ドライビングワークショップは毎回定員での開催になってい
るため、参加したくても申し込み締め切りに間に合わなかったというメールを
多数いただいています。またTDW卒業生のアンケートの回答には定常円の走
行に興味を持たれた方が大勢いらっしゃることがわかりました。

そこで筑波サーキットとユイレーシングスクールではビークルダイナミックス
に主眼をおいたドライビングスクールを今年の追加プログラムとして開催する
方向で検討しています。入稿時では詳細が決まっていませんが、できるだけ早
く概要をお知らせする予定です。

=== ご期待下さい ===

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● 吉田塾 参加申込み受付中

吉田塾の参加申込みを受付中です。

http://www.avoc.com > SCHOOL > 吉田塾

また3名以上参加者が集まれば臨時に吉田塾を開校します。サーキットなどへ
出張しての開校も可能です。詳細はお問い合わせ下さい。

mailto:mail@avoc.com

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△ 書籍紹介 「灼熱の走路」菅谷 充 著

自身でレーシングチームを持つなど積極的にモータースポーツに関わっている
菅谷 充氏の小説。2部構成。主人公である片桐優作の起伏の激しい生き様が
レース場を舞台に書かれている。日本では馴染みの薄いアメリカのレース場も
登場する。モータースポーツに対するアメリカと日本の意識の違いもうまく表
現されている。

既に絶版になっていますが次のサイトでオンライン版を読むことがでます。

http://motorsports.nifty.com/novel/index.htm

すがやみつるホームページ:
http://homepage1.nifty.com/msugaya/

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○ アンケート回答抜粋

前回に引き続きアンケートの回答を掲載します。

【設問】筑波サーキットドライビングワークショップを受講した理由を書いて
下さい。
・以前から公道での安全につながる運転技術に興味があり、友人からTDWを紹介
され参加しました。
・過去にスリップをして車を壊したことがあります。そのときに、Vehic
le Dynamicsをもっと理解していたらスリップは起こっていなかった
かもしれないし、スリップをしていても、対処法が分かって事故を回避出来た
かもしれないと思いました。もう二度とこんな思いはしたくないと思いました
ので、運転がうまくなりたいと思い、参加させて頂きました。
・運転技術向上。
・今回は、去年4月に受けてから2回目で前回感じた事を約1年で会得出来た
か確認するために受講しました。
・早い走らせ方を、教えていただこうと思いまして申し込みました。
・車をスムースに動かせるようになるため。また、サーキット走行を楽しみた
いため。
・安全に速く走れるようになるため。
・運転の仕方をきちんと教えてくれる人がいなかったため。
・車を速く安全に走らせたいため。
・運転技術の向上。
・以前受講して良かったことと、より運転が上手くなりたいためです。
・以前よりスポーツドライビングに興味があった。BMWを購入して少しでも
車の性能とドライバーの性能のギャップを埋めたかった。
・これからサーキット走行を趣味としたいので、まずその手ほどきをうけてみ
ようと思いました。TDWは非常に理論的な側面を大切にされているので、自
分には向いていると判断して、参加させていただきました。
・荷重移動によるブレーキング特性を学びたかったから。
・最近サーキットを走り始めたのですが、ただ漠然と走っていても向上しない
と思ったため。
・今まで何も考えないで走っていたので、”走る理論”を学んで、少しでも考
えて走れるようになれれば、と思って。
・自分のクルマの性能をもっと引き出してやりたかったから。
・譲ってもらった車を乗りこなせるようになりたいから。
・はじめてのFR車なのでその特性を知りたかった。
・テクニックを身につけたかったからです。
・自分の運転技術or車の限界が知りたかったので受講しました。
・愛車の挙動をより理解したかった。(私の場合は、あくまでもサーキット走
行が目的ではありませんでした。) 
・普段の一般道走行で、安全マージンをとるために必要な学習がしたかった。
・自分の車の限界を知りたい。
・運転テクニックの向上。
・サーキット走行に興味。
・サーキットに興味があったから。(友人の紹介)
・車をきれいに運転したいから。
・自己流で今まで練習してきたがいきづまりつつあった。そのときこのW/S
を知り、ここで専門家から基本を学ぶきっかけがほしかった。
・筑波1000を走りたかったのが最初のきっかけで。車の挙動の座学を聞き
たかった。
・自分の自動車運転能力に疑問を感じつつも、教えてくれる人は身近にいなか
った。愛車に限界能力を出させてあげたかった。
・スポーツ走行が趣味という事もあってどんな速度域でも的確な車の操作を覚
えたいから。

【設問】「良かった」と答えた方はどんなところが良かったですか?
・特にスタッフによる同乗走行。
・運転がうまくなること以外に、サーキットを走る楽しさを教えてもらいまし
た。
・参加者一人一人への的確なアドバイス。
・以前ブレーキングを大石さんに思いっきり踏むようにと注意されたが、今回
は「ブレーキングは良く出来ている」と言われ少しは技術が向上していること
が確認できたことと新しくラインを意識するようにと課題を教えていただいた
こと。定常円の最後の方でコーナリング中のロールがなんとなく感じられたよ
うな気がしたこと。コース1000の同乗走行のとき、自分の車がこんなに速
く走れるということを体感できたこと。コース1000でスピンをしてしまっ
たが、今回はスピンする前の車の動きを以前と比べて比較的冷静に感じられた
ような気がしたこと。最後の計測のときにスムーズな運転を心がけタイムが出
ていないと思ったが、結果としてはベストタイムであったことから、自分の運
転技量ではスムーズな運転の方が早いこと。
・圧倒的なコストパフォーマンスの高さ。BMWのスクールだと10倍。
・理に沿った教え方。同乗走行などプログラムが充実していた。
・同乗走行をしていただき実際の操作をGを体感しながら見せていただけたこ
と。
・「ビギナーも」と書いてあったのに何も教えてくれなかった挙げ句クラッシ
ュしてしまった(板金で済みましたが、、、)が、こちらは理論からキッチリ
教えてくれた。
・オーバルコースでの車の挙動が、解説と実技で体験でき、体得できた。
・サーキットを走ってる時、クラス分けがしてあったので、自分のペースでい
ろいろためせたこと。
・午前中の意味がよく分かりませんでしたが、午後、サーキット1000を走
行してみて午前中に話していたことが理解できました。自分の悪いところも、
同乗走行でよくわかりました。
受講理由で、私の場合サーキット走行が目的ではなかったはずだったのですが
、この1日の受講で、実はサーキット 病みつきになってしまうかも…。
・トムさんが真剣になって生徒に教えていた態度が、とても好感的でした。
・もちろん、インストラクターの方々からも親切に教わり、大変参考になりま
した。
・料金の設定も、内容にしたら とても安いと思う。が、お金には代えられない
←(字がこれでいいのでしょうか?)ものを学びました。
・同乗走行、筑波1000での走行が思ったより長かった。
・いつも丁寧に操作しているつもりだったけど、いつもやっている丁寧さでは
足りないことがわかったから。
・まず座学を教えてもらってから実際の練習に入ったため特に考えながら運転
できました。
・思ったよりたくさん走れた。助手席から運転を拝見できたのはよい経験とな
った。

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☆ ハウツゥスタート 操作と挙動 その2

『駐車場から加速したクルマが対抗車線に飛び出しそうになるがステアリング
を切り足してなんとか難を逃れた』

決して人事ではない。クルマを運転している人ならば程度の差こそあれ何度か
は経験しているはず。これがクルマの挙動に起因する操縦性の変化だ。特にサ
ーキットを走る人、走りたいと思っている人にはこの操作と挙動の関係は絶対
に避けて通れない大切なテーマだ。

クルマは機械。操作して初めて動く(挙動する)。街中なら安全に、サーキッ
トでは速く走るためには操作と挙動の因果関係を理解することが必要だ。

* * * * * * * * *

クルマの挙動変化の基本を理解するのに必ずしもサーキットを走る必要はあり
ません。25m四方ほどの誰もいないスペースがあれば自分の操作が『何を』
クルマにもたらすか理解することはできます。ただし、あくまでも安全に配慮
し他人も迷惑にならないように試してみることを忘れないで下さい。

まず基準となる線を探します。駐車場に引かれた白線でもかまいませんし、路
面の継ぎ目でもかまいません。次に基準線の上に目標物を1点定めます。

右ハンドルのクルマなら右側の2輪を基準線と平行にし、右前輪が目標物に乗
るように止めます。ギアを1速に入れます。周囲に人やクルマがいないことを
確認して下さい。最初にステアリングを左に切りながら同時にスロットルを開
けていきます。左旋回をするのは視界を確保するためです。左ハンドルのクル
マの場合は左2輪を基準線に平行に止めて右にステアリングを切ります。

クルマにもよりますがステアリングを切る角度は90度程度で十分です。ステ
アリングを切り始めるのと同時にスロットルペダルを踏み込んでいくのがコツ
です。スロットルペダルは一瞬にして大きく開けるのではなくステアリングを
回すように漸進的に踏み込んでいきます。クルマが基準線から90度前後まで
向きを変えた所で止まります。その時の右前輪(左ハンドルの場合は左前輪)
の位置を覚えておきます。

次に最初に止めた所からずっと後ろにクルマを止めます。距離にして15mも
あれば十分なはずです。右2輪を基準線に平行に止めるのは同じです。1速に
ギアを入れ基準線に沿って加速します。時速15Km前後のスピードまで一気
に加速したらスロットルを一定にします。クルマは目標物に近づきます。正確
に同じ所で操作するのは難しいので大体でかまいません。右前輪が目標物に乗
った時に、今度はステアリングをさきほどと同じように左に同じ速さで切りな
がらスロットルを閉じます。クルマが基準線から90度前後まで向きを変えた
所で止まります。その時の右前輪(左ハンドルの場合は左前輪)の位置を覚え
ておきます。

どうでしょう?最初に加速した後に止まった時に前輪のあった位置と減速しな
がら旋回して止まった時の前輪の位置は同じでしたか?

もちろんステアリングを切る速さとスロットルを踏み込む速さ、同じくステア
リングを切りこむ速さとスロットルを抜く速さで変わってきますが、2回の試
行では右前輪のあった位置が異なるのが当然です。理論的には前者の位置は後
者の位置よりも旋回半径の中心から見ると外側にあるはずです。

つまりクルマにピッチ方向の姿勢変化を与えながら旋回することで操縦性の変
化を試したわけです。加速した場合は過重がリアに移動しますから操縦性はア
ンダーステアになったはずです。減速した場合は過重がフロントに移動します
からオーバーステアになったはずです。

スーパーの駐車場から加速したクルマが対抗車線に飛び出しそうになったクル
マはまさにアンダーステアを発生させていたのです。それもクルマの特性とし
てのアンダーステアではなくドライバーの操作に起因するアンダーステアです。

逆にステアリングを切り足したドライバーがスロットルを閉じたためにクルマ
が巻き込み、慌ててステアリングを戻さなければならなかった理由が、後者の
オーバーステアの発生によるものです。ここで重要なのは、どちらの場合にも
言えますが『クルマの特性としての操縦性』を『挙動変化による操縦性の変化
』が上回る場合があるという事実です。

いすれの場合も運転手が『ここに行きたい』とステアリングを切った方向とク
ルマが『実際に進んだ』方向にずれがあるのが問題なのです。ここにユイレー
シングスクールが「漫然と運転しては×」、「スムースに操作しないとクルマ
のバランスを崩す」と言う理由があります。

念のため、加速した後にスロットル一定のままクルマを走らせ、目標物から同
じようにステアリングを切りこんでみて下さい。最もステアリングを切った方
向に切った角度だけクルマが素直に向きを変えたはずです。90度旋回した地
点での右前輪(左ハンドルの場合は左前輪)の位置を確認すれば、それが前者
と後者の間にあることがわかるはずです。

時間があれば静止状態からステアリングを切りながらの加速、一定の速度で走
行中にステアリングを切りながらの減速を、いくつかのバリエーションで試し
て見て下さい。加速の場合はスロットルの開け方を急にする。あるいは逆にゆ
っくりにする。さらにステアリングの舵角を大きくしてみる。あるいは少なく
する。

客観的な判断ができませんが、クルマがどんな軌跡を通ったか(挙動を示した
か)を想像することはできるはずです。しかもステアリングとスロットルの操
作をわずかに変えただけでクルマの姿勢が大きく変化したり、逆に急な操作を
したのにクルマのバランスはそれほど崩れなかった、という『結果』を体験で
きるはずです。

タイヤには固有の限界があります。しかしその限界は常に一定のものではなく
、高くなったり低くなったりする性質のものなのです。覚えておいて下さい。
そして、たったひとつタイヤに関する公式があります。進行方向と横方向の加
速度が同時に加わった時、それぞれに振り分けられるグリップの総和がその瞬
間のタイヤのグリップ限界を越えるとクルマがバランスを崩すということです。

動いているクルマは常に姿勢を変えています。道路の状況による変化もあるで
しょうが、操作による変化もあります。旋回性能の変化に直接大きく関係する
のが前後輪のスリップアングルの差です。クルマをキチンと走らせるというこ
とは、またクルマを速く走らせるということは、実は4輪のスリップアングル
をコントロールすることに他ならないのです。

コントロールできれば非力なクルマでも速く走ることはできます。コントロー
ルできなければパワーがあっても宝の持ち腐れです。クルマを動かすのは運転
手です。ユイレーシングスクールが『クルマの都合を無視しては安全に速く走
ることはできない』、『理屈に合った操作をしなければクルマは安全にも速く
も走らない』というのはそのためです。

ユイレーシングスクール教科書
http://www.avoc.com > YUI RACING SCHOOL > YRS教科書

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★ コーナーの向こうに 第六話 青春の旗 第9回 トム ヨシダ

「そうなんだ。いつも何があっても何とかしてやろう!って身構えながらオフ
ィシャルをやってきたんだ。」

オフィシャルという影の存在ではあるが、自分にとってサーキットはいつも生
命感の高揚をもたらしてくれる場だった。一瞬のうちに何かが起きるレース。
練習から始まってチェッカーフラッグが振られるまで、その週末だけで完結す
る人間が織り成すドラマ。そこには傍観者でいることのほうが難しい誘惑<緊
張と弛緩>がある。

弁当の折箱に元のように輪ゴムをかけポストの隅に置く。雨が小ぶりになって
きたようだ。「午後のほうがタイムが出るな。セミウエットでもツーシーター
が速いに違いない。でも明日も雨が残りそうだからどこまで『箱』がレーシン
グカーに食らいつくかが見ものだ。」

午後の第2回予選が始まる。路面から光っている部分がほとんどなくなった。
雨が小ぶりになったので水はけが進む。路面はウエットだが午前中より明らか
にグリップは改善している。ひょっとするとレインタイヤは必要ないかも知れ
ない。

真っ先にコースインしたセリカRを先頭に続々とカラフルなマシンがデグナー
を立ちあがってくる。午前中より明かに排気音が澄んでいる。「ンッ。踏んで
いるんだな。」

2周目。ペースをあげたマシンがヘアピンへと消えていく。永松邦臣とT.K
.ヤングなんていうふざけた名前で競技ライセンスを登録した田中健二郎のロ
ーラT290。鮒子田寛とウィルバー・ショウのシェブロンB21。田中弘と
高武富久美のシェブロンB19。浅岡重輝と米村太刀夫のいすゝスパイダーR
6などのグループ7。セリカをベースにしながらTS(特殊ツーリングカー)
の改造範囲を越えた高橋晴邦と竹下憲一のセリカRはグループ8のリブレで参
加。

GTS(特殊グランドツーリングカー)クラスには日産ワークスのフェアレデ
ィ240Zで都平健二と長谷見昌弘組、高橋国光と黒澤元治組。

国内自動車メーカーの主戦場であるTSクラスにでは日産ワークスが送りこん
だサニー1200に歳森康師と星野一義組が乗る。セミワークスともいうべき
片山マツダからは片山義美が従野孝司と組んでサバンナRX3を走らせる。事
実上のトヨタワークスともいうべきTMSCからはカローラでベテランの細谷
四方洋/蟹江光正組と舘信秀/藤田直弘組が、カローラレビンで久木留博之/
見崎清志組が出走する。

とにかく、7回目を迎えた鈴鹿1000Kmレースは参加マシンにしても参加
ドライバーにしても日本で行われているモータースポーツの縮図ともいえるほ
どの充実を見せる。

ワイパーを激しく振りながら快走していたセリカRが姿を見せない!セリカR
の後ろを走っていた240Zが現れたのにセリカrが来ない。「まさか!!!」

予選やレースの進行中はポストに必要な情報だけがもたらされる。万が一の時
に備え会話の時間を極力短くするためだ。だから視界が利く範囲で起きたこと
以外をオフィシャルが知る由もない。もちろん重大な事故が起きた場合は一斉
連絡で対応が指示されるとこはあるが。

「まさか! まだ予選が始まって5周もしていないのに!」

午前中より低くはなったがそれでも車高の10倍ほどは上がる水のカーテンを
引きずりながら、次から次へとマシンがデグナーから110Rまでの短い直線
を加速してくる。雨の強かった午前中。なみいるグループ7を押しのけて2分
46秒2のベストラップをマークしたセリカR。どこにいるのか。

路面がウエットであれば車重の重い箱が有利になる。滑る路面が馬力あたり重
量が小さく運動性能は高いグループ7のポテンシャルを殺ぐからだ。クルマが
重たければハイドロプレーニングだって起き難い。事実、午前中の予選でセリ
カRに続いたのは240Z、カローラレビン、サニー1200と全て箱だった。

そのセリカRが来ない。ところが、毎周その差に変動はあるものの同じような
オーダーで走っていたレーシングクラスのマシンも1台、2台と歯が抜けたよ
うに姿を消す。

「ゥンッ?そうか。ピットインか!」そんなことを考えていると緑色をしたセ
リカRがデグナーを立ちあがるのが見える。「やっぱり!」

レインタイヤを何に替えたのか知る由もないが、その周のセリカRはそれまで
より生き生きと110Rにアプローチ。

続いて現れた箱の群れの中にはタイヤトレッドを光らせながら走ってくるマシ
ンもいる。「スリックだ!もう変えたんだ!ラインが乾くほうに賭けたんだ!」

∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

濡れたまま席に座るのがいやで、立ったままマイクロバスでパドックに向かう。
着たままでは服を絞るわけにはいかない。ズ〜ンッと重い感じがする。しかし
確かめたいことがある。ホテルに向かう前にTMSCのピットに寄る。ピット
裏に積まれた無数のタイヤの中に、地べたに並べられた4本のタイヤがある。
「ダンロップのCR88だ!インターミデイトだ!ということは最後はやっぱ
りスリックだったのか。」

レーシングタイヤとしては異例にグルーブとサイピングの多いCR88。確か
にある時間帯には強烈な性能を発揮したに違いない。「しかし・・・。レース
に出るにはこんな物量が必要なんだもんなぁ。」

ポストで目を皿のようにしているうちは良いが、いったんエキゾーストノート
が途切れると自分自身に向き合わなければならない時間が来る。その憂鬱な気
分とレースへの欲がせめぎ合う。

「トレッドが濡れていてもスリックがグリップするなんて知らなかった。要は
暖まればいいんだ。ひとつ勉強になった。」

=== 続く ===

※ 文中の登場人物の敬称は略してある場合があります。

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