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Go ★ Circuits No.130 (04/22/02発行)

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【 130号の目次 】

◎ YRSウェブサイト更新

■ YRS No.2 参加申込み受付中

● 筑波サーキット公式ドライビングスクール その2

○ TDW参加申込み受け付け中

▲ YRS感謝デー、吉田塾参加申込み受付中

□ TDO専任スタッフ募集

☆ ハウツゥスタート オーバルコースを走る その1

★ コーナーの向こうに 第六話 青春の旗 第11回 トム ヨシダ

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◎ YRSウェブサイト更新

・筑波ドライビングスクールプラスレポート掲載
4月9日に開催されたTDWPの模様をレポート。83枚の画像で参加者の走
りを分析しています。

http://www.avoc.com −> Report −> ワークショップ

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■ YRS No.2 参加申込み受付中

5月11日には筑波エンデューロ、筑波スプリント、筑波タイムトライアルの
第2戦が行われます。参加を予定されている方は早めにお申込み下さい。

筑波エンデューロは日本でもっとも手軽に参加できる2時間耐久レースです。
筑波スプリントは3ヒート制のアメリカンショートトラックレースです。筑波
タイムトライアルは座学を受けた後にラッピングを行うスポーツドライビング
の導入編です。

各規則書はYRSウェブサイトトップページの中央にあるリンクから読むこと
ができます。

http://avoc.com/

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● 筑波サーキット公式ドライビングスクール その2

|========= 筑波ドライビングワークアウト ==========
|========== どなたでも参加できます ===========

TDOは筑波サーキットのジムカーナ場を使って行います。テーマはビークル
ダイナミックス。クルマを正確に操る、つまり安全に速く走らせるための理論
の実践です。

ジムカーナ場で最初に行うのは直進状態でのスレッシュホールドブレーキング
の練習。本来サーキット走行では止まるためのブレーキングは必要ありません
が、スムースなトランジッションを習得するためにはスレッシュホールドブレ
ーキングの練習がうってつけです。また高い減速加速度を発生させるための正
確な制動力のコントロールを練習できます。おそらく参加された方は、制動距
離が踏力よりもクルマの挙動によって左右されるものだというショッキングな
事実に直面するはずです。ビークルダイナミックスの第1歩です。

次ぎにTDWでも使用する2種類の定常円を使った『加速→減速→旋回』の練
習を行います。テーマは2つの形状の異なる定常円を『連続してできるだけ速
いペースで周回』することです。求められるのは正確な操作。ドンッとアクセ
ルを踏み、ギャンッとブレーキをかけ、スパッとステアリングを切っただけで
はクルマは速く走りません。全ての操作はクルマに姿勢変化をもたらします。
連続して変化します。姿勢変化はクルマの特性を変えます。特性が変化し続け
るということです。速く走るためには『どういう操作』が求められるのか。ど
んな操作が○でどんな操作が×が検証します。

質疑応答を行いながらのランチタイムをはさみ(ランチは参加費に含まれてい
ます)、午後は定常円を大きなものひとつにしてより高い速度で『加速→減速
→旋回』の練習を行います。午前中行う定常円より直線でもコーナーでもスピ
ードが出ますから、求められるものも変わります。よりサーキットのコーナー
に近い速度で『ビークルダイナミックスとは何ぞや』というテーマに向かい合
います。

TDOの最後に大きな定常円のラップタイムを測定します。「オーバルコース
のデータ」を蓄積するためです。タイムは参加者別のデータとしてウェブサイ
トに掲載します。

またTDOを何回か消化した時点で、大きな定常円を使ったコンペティっショ
ンを開催します。スケジュールに掲載してあるTDOC(筑波ドライビングワ
ークアウトコンペティっション)がそれです。原則としてTDOを卒業された
方を対象に開催します。具体的にどんな競技か説明します。

2台のクルマが同時に発進し定常円を『連続してできるだけ速いペースで周回
』します。過去の例から見てもパワーのあるクルマが絶対に有利ということは
ありません。間違いなく2台のクルマの間隔は縮まり(開き)ます。相手を意
識しながら、いかに自分の走りができるかの練習です。

競技では定常円のラップタイムを計測すします。おそらく1周13〜15秒の
ラップタイムになると思われますが、それを連続して計測し、ウェブサイトに
掲載する予定です。

詳細は決まり次第お知らせしますが、最大の見ものはノーマルのクルマが足を
固めたクルマを追いまわすシーンになるはずです。性能的に勝るクルマを的確
なカーコントロールのできるドライバーが、またパワーに勝るクルマをフット
ワークのいいクルマが追いまわすシーンもあるでしょう。『アメリカンオーバ
ルレースの原点』がそこにあります。

| TDOに参加された方はTDOCへの参加資格があります。また月末に開催
| されるツーデープログラムに参加された方もTDOCに参加することができ
| ることができます。

・筑波ドライビングワークアウト開催案内
http://www.avoc.com −> SCHOOL −> ワークアウト

・ユイレーシングスクール 2002年スケジュール改訂版:
http://www.avoc.com −> SCHOOL −> スケジュール

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○ TDW参加申込み受け付け中

今年のTDWは毎回定員での開催になっています。平日開催なので予定を立て
にくい面もあると思いますが、できるだけ早く申し込まれることをお勧めしま
す。

・筑波ドライビングワークショップ開催案内
http://www.avoc.com −> SCHOOL −> ワークショップ

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▲ YRS感謝デー、吉田塾参加申込み受付中

5月19日に開催するYRS感謝デーの参加申込みを受付中です。今年はさつ
まいもの苗植えを行います。秋に収穫して『焼き芋』を食べるのが目的です。
バーベキューを食べながらの懇親会もあります。
もちろんどなたでも参加できます。ご家族連れで、あるいはお友達と参加して
下さい。

・YRS感謝デー開催案内
http://www.avoc.com −> SCHOOL −> その他のイベント

4月の吉田塾は参加申込みがなく中止にしました。毎月2回のペースで開催し
ていますので、クルマの運転に疑問をお持ちの方は参加してみて下さい。ご自
分の走りを撮影したビデオをお持ちになれば○と×の理由を解説します。

・筑波ドライビングワークショップ開催案内
http://www.avoc.com −> SCHOOL −> 吉田塾

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□ TDO専任スタッフ募集

5/2(木)からはじまる、筑波ドライビングワークアウト。筑波ドライビン
グワークショップ同様、筑波サーキットの公式ドライビングスクールです。今
年は年間15回の開催を予定しています。この新プログラムの開始にともない
、ユイレーシングスクールでは新規スタッフを募集します。
スタッフの仕事は、筑波サーキットジムカーナ場で行なわれるドライビングワ
ークアウトでの車両誘導、タイム計測などです。経験の有無は問いませんが、
明るく楽しく仕事ができることが条件です。

興味のある方は、「Subject」の欄に「TDOスタッフ」と書いてメー
ルして下さい。

mail@avoc.com

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☆ ハウツゥスタート オーバルコースを走る その1

アメリカの自動車レースの基本はオーバルレースです。1300ヶ所以上ある
レース場の8割がオーバルコースです。MLB以上の視聴率を誇るNASCA
Rストックカーレースもオーバルコースを舞台に行われています。インディカ
ーレースがUSACとCARTに分裂する前までは全てのレースがオーバルコ
ースで行われていました。見るレースだけではなくアマチュアが参加するグラ
スルーツモータースポーツのほとんどがオーバルコースで行われています。

なぜアメリカではロードコースではなくオーバルコースが多いのでしょうか。
なぜアメリカではロードレースよりオーバルレースの人気があるのでしょうか。

ユイレーシングスクールは次のように考えます。

(1)見る側にとって
・コースを一望に見渡せるからレースの進行がひと目でわかる
・同じく展開の全てを把握することができる
・常に全開のレースが見れる
・うまい人と下手な人がハッキリとわかる
・自分が走る時のイメージができる

(2)走る側にとって
・完璧なラップを刻むのが極めて難しい
・性能よりもテクニックで速さが決まる
・同じ所を何回も走るので走り方を組み立てやすい
・頭を使うことで性能差をカバーできる
・緊張感がある

(3)コースオーナーにとって
・ロードコースに比べて狭い土地に建設することができる
・コースの長さに関わらず多種多様なレースが開催できる
・高いエンターテイメント性を創り出しやすい

理由はもっとありますが、大きく分けると以上のようになります。

かって日本のレーシングチームのエンジニアはもとよりモータースポーツの雑
誌編集部までもが「あんなにグルグル廻っていてどこが面白いのかわからない」
と言っていました。しかし日本のトップドライバーが挑戦してもなかなか思う
ような成績を残せないほど、オーバルレースは難しく奥の深いものなのです。

もちろん、ここではロードコースとオーバルコースのどちらが上でどちらが下
かを決めるのが目的ではありません。決める必要もないことです。

しかし、『クルマを速く走らせることに興味のある人』にとっては、『うまく
走れることが少ないオーバルコース』だからこそ面白いのも事実です。

残念ながら日本には自由に使えるオーバルコースがありません。ツインリンク
もてぎのスーパースピードウエイは大きすぎます。最高速が250Kmを越え
るクルマでないと1周2.4Kmのコースは大きすぎます。それなりの工夫を
しないと走っても、見ても面白くはありません。

昨年から運転技術の習得を目的に財団法人日本オートスポーツセンター(筑波
サーキットの運営母体)が開催している筑波ドライビングワークショップのカ
リキュラムに楕円形の定常円走行を加えたのは、オーバルの定常円がクルマの
操作の全てを短時間に練習できるというメリットを生かすことを第1の目的と
していましたが、実のところはオーバルコースを走ることに興味を覚えてもら
い最終的には日本で本来のオーバルレースも開催したいという狙いもあったの
です。

昨年1年間だけでも「小さなオーバルコース」を体験した方は延べ520人を
超えました。もっぱらロードコースを速く走るための練習にオーバルコースを
走ったわけですが、オーバルコースの体験者は確実に増えました。TDW卒業
生のアンケートからもかなりの人数の方が楕円形定常円を使ったいわゆるオー
バルコースの走行が面白かったと答えています。

今回追加した筑波サーキット公式ドライビングスクールの第2弾がTDO。オ
ーバルコースだけを使ったドライビングスクールです。

TDOのカリキュラムはウェブサイトに詳しいので省きますが、『ただ単に速
さを求める』のではなく『クルマをコントロールする』ことに興味がある方に
はうってつけのプログラムです。

なぜオーバルコースを走ることがクルマのコントロールの練習に役立つかと言
うと、オーバルコースを速く走るために求められるものがロードコースのそれ
と異なるからです。どちらも周回路ですから同じだと思われがちですが、実際
はテクニックはもちろん考え方がまるで違います。

前にも書きましたがロードレースがトラクションレース、オーバルレースがモ
メンタムレースと位置付けられるように、前者は加速が速さの全てを決めます。
逆に後者は加速はむしろ2の次でいかにモメンタム(慣性力)を維持するかで
速いか遅いかが決まります。

日本の現状を考えるとロードコースを走ることは、それがレースであれ走行会
であれますますトラクションレース的な色彩を濃くしています。高性能のブレ
ーキを装備しコーナーの奥まで突っ込む。瞬時にクルマの向きを変え、グリッ
プの良いタイヤの特性を生かして直線的に立ちあがる。「コーナリング中に必
要以上に速度を落としてしまっても加速に移る時のクルマの向きさえ間違わな
ければそれが速い」という極めてエキセントリックな走り方さえ求められるの
です。まさにトラクションレースの走り方の極みです。早い話、トラクション
を生かせる走り方を習得するよりトラクションに優れたクルマ(ブレーキング
もマイナス方向のトラクションと考えられます)を用意すれば、それが速さに
つながるのです。おそらく読者の中にもタイムを縮めるのに自分のテクニック
にではなく、外的なトラクションに頼ってい人がいるはずです。

それはそれでかまいません。ロードレースもロードコースもモータースポーツ
の中で確立されたジャンルですから、それらに興味を持つことは間違いではあ
りません。ただ気をつけなければならないのは、『トラクション』という部分
だけが突出すると、どんどん人間が速さに関与できるパートが少なくなること
です。極論すれば運転テクニックより財布の厚さで速さが決まってしまうこと
になりかねないのです。ここ20年のF1GPを見てもそれがわかるというも
のです。

反対に、オーバルコースを速く走るのに必要なのはクルマの性能よりも運転手
の意識とテクニックです。ここにユイレーシングスクールがオーバルコースを
重要視する理由があります。TDOの開催が進みラップタイムのデータが蓄積
できれば明白になると思いますが、オーバルコースでは『性能の高いクルマが
必ずしも速いとは限らない』という「日本のモータースポーツ界にとっては初
めての現象」が起きるはずです。

オーバルコースを速く走るのには、減速や加速よりも「クルマの勢い」をでき
る限り殺さないでクルマを直線運動から円運動に変えるテクニックが必要です。
ブレーキにはより短い距離で止まる性能よりも、運転手の踏力に忠実に反応し
て減速力を加減できる性能が求められます。つまりノーマルのブレーキで十分、
というよりノーマルのブレーキのほうが扱いやすいのです。高いグリップのタ
イヤも必要ありません。大切なのはグリップが過大なタイヤよりもタイヤの状
態(摩擦円の理論)が運転手に的確に伝わるタイヤです。ですからSタイヤは
必要ないのです。ラジアルタイヤで十分です。

もちろん高い性能のクルマでオーバルコースを走る面白さはありますが、ノー
マルのクルマでも十分に面白いし速いということなのです。速く走るためのテ
クニックよりクルマを正確にコントロールするテクニックが重要になりますか
ら、TDOとTDOCについて言えばサーキットを走る予定のない方にも価値
のあるプログラムなのです。

YRSの中にはオーバルレースの虜になりネットゲームを通じて本場アメリカ
のオーバルフリークと対戦しているスタッフもいます。どう面白いかは別の機
会に譲るとして、次回はオーバルコースの走り方に焦点をあてます。

筑波サーキットにはオートレースの選手を育成するための立派なオーバルコー
スがあります。ユイレーシングスクールの夢のひとつは、TDOの卒業生を増
やし将来筑波のオーバルコースでレースを開催することです。

クルマのコントロールに興味がある方はぜひTDOを受講してみて下さい。

・筑波ドライビングワークアウト開催案内
http://www.avoc.com −> SCHOOL −> ワークアウト

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★ コーナーの向こうに 第六話 青春の旗 第11回 トム ヨシダ

雨に濡れた一斉放送用のスピーカーから声が響く。「ただいまスタートしまし
た。各ポストよろしくお願いします。」

鈴鹿サーキットで最も長いレースのスタート。水滴が落ちてくる空を見上げる。
帽子のひさしをつたった雨粒が眼鏡のレンズに落ちて流れる。深呼吸。スター
ト前の自分だけの儀式。アナウンスを聞くと、なぜかいつも神聖な気持ちにな
る。

アナウンスの後に少しの間があって、それから遠くでくぐもった雷鳴のような
音が沸き起こる。「みんな無事にスタートしたのだろうか?ルマン式スタート
から真っ先に飛び出したのは誰だろう?」

最初小さかった音にいろいろな音色の音がが混ざり合い次第に大きくなる。S
字を抜けているのか、ひとつひとつの音に強弱が生まれる。「もうすぐデグナ
ーだな。」

トップがダンロップコーナーを抜けたのだろう。短いストレートに出てレブリ
ミットまで引っ張っているのが聞き取れる。しかし音色は低い。「ツーシータ
ーじゃないな!何だ!」雨雲が垂れ込めているせいでそこだけ異様に暗い立体
交差の下の向こうに見えるデグナーコーナーを凝視する。

「来た!」真っ先に現れたのは長いノースの赤いマシン。「240だ!」間髪
を入れずに次のマシンが現れる。またも赤いマシン。「トップは長谷見か黒澤
かどっちだ?」2台の240Sは高いウォーターカーテンを引きずりながら、
独特のノーズをもたげた姿勢で110Rに向けて加速してくる。デグナーに続
々とマシンが姿を現す。ツーシーター勢はスタートが遅かったのか、ローラT
290ですら10位には届いていない。「6点式のベルトを絞めていたからか
な。これもレースだ。」

ロンソン2000と白の抜き文字でノースを飾った真赤なT290は狂ったよ
うに前を走るマシンを抜く。デグナーを立ちあがりふつうならアウト側をキー
プしたまま110Rまで走るのに、濡れた路面も関係ないとでも言うようにマ
シンを右に振り、左に切り返す。「走り出せば速いに決まっている。」

スタート後の1周はめまぐるしい。通りすぎるマシンを確認する余裕はない。
次から次へと押し寄せるマシンを広く眺め、流れの中で他と違う動きをするマ
シンがいないかだけ探す。それだけに集中する。1台ずつを追ってはだめだ。
「14番はつらいとこだ。2人いればまだしも、ひとりで180度以上首を振
るのはシンドイ。」14番ポストとヘアピンの間に意識のほとんどを注ぎなが
ら、できる限りデグナーからのストレートをうかがう。「昨日の910のこと
もあるからな。」

50台全部が通過したかわからない。数えるのは不可能だ。高回転が得意では
ないOHCの6気筒エンジンを積んだ240Zが立体交差の上を通過。相変わ
らずウォーターカーテンをなびかせている。その立体交差の下には110Rに
向かうマシン。「こりゃ結構早く周回遅れが出るな!」

デグナーからのマシンが途切れる。立体交差の上ではまだ水煙が連続して上が
っている。たった1周なのに、トップと最後尾はずいぶんと長い列にバラけて
いる。そしてもう何周かするとトップが周回遅れを抜きだす。その時、コース
場を走るマシンはいつもうごめく大きなひとつの輪を作る。耐久レースではい
つものことだ。

1周目に備えて手にしていたイエローフラッグをブルーフラッグに持ちかえる。
とたんに赤いマシンがデグナーを抜けてくるのが目に入る。「もう来た!」

今度は余裕がある。左手からこちらに向かってくるマシンの速度に合わせて首
を動かしながらゼッケンを読み取る。「26だ。長谷見。」首を振っている最
中にもう一台赤いマシンがこちらに来るのを視野の片隅で捕らえる。大急ぎで
首を戻し、それがローラT290だと確認する。「もう2位か!」。甲高いエ
キゾーストノートを残しながらヘアピンに消えるマシンを追い、また首を戻す。
もう1台の240Zが来る。3位。続いて現れたセリカが4位。しばらく間を
おいて、なんと1.6リッターのレビンが5位にいる。

次から次へ押し寄せるマシン。ヘアピンでイエローフラッグが出ていないかを
真っ先に気にしながらレースの展開を俯瞰する。プライベートチームのサニー
やスプリンター、ホンダ1300が作る後続グループがデグナーを立ちあがる。
首を回し、上体をひねりながらマシンを追っていた目に鮮やかな赤いマシン。
車高がツーリングカーの半分ほどしかない地に這いつくばるようなマシンが目
に入る。「来た!」

左手でブルーフラッグの端を持ち頭上に広げる。「110Rで重なるかな?」
速いマシンが接近中ならばブルーフラッグを静止で出せば良いが、追い越しに
かかりそうな場合は振動で提示しなければならない。判断が微妙だ。案の定デ
グナーと110Rの中間でローラT290がバックマーカーに追いつく。左手
を離し右手だけで大きくブルーフラッグを振る。雨で濡れた旗が思い。スッと
右に転舵したローラT290は110Rにインからアプローチ。「寄るなヨ!」
バックマーカーがローラのラインを塞がないことを念じながら振る。2台が並
ぶ。「大丈夫!見ていた。」コーナーが連続するS字では難しいかも知れない
が、少しでも直線があればミラーで確認できる。

スタートで出遅れた鮒子田のシェブロンB21と高武のシェブロンB19が糸
でつながれたように遅いマシンをかき分けポジションを上げる。1位のローラ
から数える。何台ものマシンが走っていても流れの中の速さの違いさえわかれ
ば順位は把握できる。「イチ、ニー、サン・・・。」8周目でツーシーター勢
がトップ3を占める。「やっぱりなぁ。」

黄色いB21が2位。オレンジ色のB19が3位。トップのローラからは離れ
ているが、2台は争いながらバックマーカーとのレースを戦う。9週目。2台
の差はほとんどない。鈴鹿サーキットで育ったRSC契約ドライバーの高武に
は雨も苦にならないのだろう。

10周目。右手首がだるい。水を吸った旗は重いだけではなくまとわりついて
振りにくい。振っているうちにまるまって棒のようになる。左手でほどきなが
ら、なお振る。レースの流れは安定してきた。「何かなければ大丈夫だ。」雨
空なのにひときわ輝くボディをまとうローラがミズスマシのように映る。

「イチ・・・・。」レースの流れを追っていると自然と次のマシンが現れるタ
イミングがわかる。「ンッ?」来るはずの黄色マシンとオレンジ色のマシンが
来ない。赤いマシンがこちらに向かってくる。「240だ。4位のはずだ。」
続いてもう1台の240Z。「やっぱり来ない。1台来ないだけならスピンア
ウトかなんかだろうが、2台ともなると・・・。絡んだかな?」

=== 続く ===

※ 文中の登場人物の敬称は略してある場合があります。

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