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Go − Circuits No.60 (11/26/00)
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【 60号の目次 】
○ From My Memory
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○ From My Memory
11月1日に筑波サーキットコース1000(東コースの新しい名前です)が
装いも新たにオープンしました。それに先立つ24日には報道関係者にお披露
目するメディアデーが催され、YRSも参加しました。
コース1000の全長1039mと長くはないですが、幅員11〜17mの本
格的なサーキットです。
ほとんどのクルマが106mのメインストレートでは3速にしか入りませんが
、その後に続く1〜2コーナーは圧巻です。全部で25周ほど走り、最終的に
は9万キロ走ったシティで47秒11のベストタイムを記録するのですが、走
りながら思い出したことがあります。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ロスアンゼルスからクルマで東に1時間。リバーサイド市があります。87
年に閉鎖されるまで、インターステート60号線と215号線が交わるところ
にアメリカのモータースポーツ史上に残る数々の名勝負が繰り広げられたリバ
ーサイドレースウエイがありました。
フルコースを使うと全長5.3Kmの本格的なロードコースには、日本では
見られないようなコーナーがたくさんありました。5速全開で抜けるエッセス
(S字コーナーがふたつ続いていると思って下さい)もそのひとつでした。
最初、ひとつめのコーナーをブレーキングして5速から4速にダウンシフト
して入っていました。いわゆるセオリー通りタイヤをキチンとグリップさせて
走っていたのです。エッセスの最後にあるヘアピンまで4速全開でした。
ところが、ラップタイム(参加していたGT5クラスでは1分48秒前後)
が2秒ほど遅いのです。もちろん他にもタイムアップする可能性のあるコーナ
ーはありましたが、理論的には単位時間あたりの移動量の大きいコーナーを速
く回ることがタイムアップに結びつくので、走り方を変えて見ることにしまし
た。
そうです。エッセスを5速でいってみることにしたのです。
エッセスの手前には1コーナーを抜けたあとのかなり長いストレートがあり
ます。エッセス手前で5速8000回転。もちろんそのままではエッセスのひ
とつめのコーナーをクリアできません。しかもブラインドコーナーです。
アメリカではレースのための練習はしないのがふつうです。それで次のレー
スの時に、エッセスの手前で軽くブレーキングするだけで飛び込む走り方に挑
戦しました。
5速では4速よりトラクションがかかりませんから、マシンは不安定になり
ます。簡単に言えば方向性が定まりにくくなります。ラインも変える必用があ
りました。4速の時より大きな円弧を描かなくてはマシンが安定しないからで
す。が、ひとつめのコーナーを抜けた地点でコースぎりぎりまで出て行ってし
まう、つまりコースアウトの可能性も出てきました。
意を決して5速全開のブレーキングでマシンの向きを変える方法をトライし
ました。
エッセスのひとつめが迫ります。息を大きく吐いて力を抜きます。マシンの
姿勢を乱さないように静かにスロットルを閉じ、ステアリングをわずかに切り
、かすかな横Gが発生したところでブレーキペダルに足を乗せます。踏むので
はなく、「乗せるだけ」という感覚です。
リアがスライドを始めます。そっとスロットルに足を戻します。今度はスラ
イドを止めるタイミングを計ります。ブラインドコーナーの先にエッセスが見
えた時がその時です。
スロットルオンで荷重がリアに移動したマシンに、スライド中に抜けていた
横Gが戻ってきます。少なくともタイヤがグリップを回復した証拠です。ひと
つめをクリアして5速7600。4速8000回転より車速が速いのは言うま
でもありません。
次の周のストレート。イヤフォンからクルーチーフの声が聞こえます。「Y
ou did it!」。タイムアップを果たしたのです。
年間8レースほどリバーサイドのレースには出場しましたが、何戦目かには
クラスのコースレコードも樹立しました。走るたびに高速コーナーでマシンと
の対話が進み、何度か更新もしました。奥さんの出産のために1時レース活動
を中断しましたが、最後に出したタイムはその後4年間破られなかったほどで
す。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
当時、ボクのマシンは9.5インチのグッドイヤースリックを履いていました
。スリックタイヤを履いたマシンが10mも横向きにスライドするのです。
そのスライドをコントロールできた時、心底「レースをやってよかった」と思
ったものです。
メディアデーのことです。走り出しても幅員が広いのでいまひとつ適正なライ
ンが見つかりません。クルマをどの地点でどの方向に向けたら速く走れるかが
わかり難いのです。
ある周。それまでより少ない踏力で長めのブレーキングで1コーナーに入りま
す。ごく普通のタイヤがスライドを始めます。
その時です。リバーサイドレースウエイのエッセスに入る時の感覚がよみがえ
りました。
コース1000の1コーナーには5速ではなく3速で侵入します。速度も速く
はありません。しかし、クルマをコントロールする楽しみは間違いなくそこに
ありました。
もしタイヤのグリップがクルマの性能に勝っていならば、間違いなくスライド
させることが速さにつながります。
> みなさんもコース1000を走ってみませんか?
> もちろん他のコーナーも大切ですが、1コーナーは間違いなく「向こうの世
> 界」を見せてくれるはずです。
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